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【空き家相談事例】隣県に所有する「実家」処分に悩むO様の場合/前編

空き家の処分について実際に寄せられた相談事例

今回は、隣県に住むご両親が亡くなられ、空き家となったご実家の処分に悩むO様ご夫妻

の場合。

海からも近く、徒歩数分に市役所もあるという立地のO様邸ですが、実際に行われたやり取りをご紹介したいと思います。

遠方に通う負担から片付けの進んでいない状態

—まず、ご実家が空き家となってしまった経緯について教えていただけますか?

奥様:私の実家なのですが、5年ほど前、父が体調を崩して検査入院中に母が唐突に亡くなってしまいました。その後、父も私たちの方へ呼び寄せて同居になったので、そこから空き家になっています。

—現在ご実家はどのような状態でしょうか? 家財の片付けなどは済んでいますか?

奥様:荷物は片付けきれていないままになっています。当初は主人と一緒に、大きな車をレンタルして荷物を片付けに行ったり、家の風通しや細かい物の整理のため、定期的に電車で通ったりしていたんですが…。

ご主人私は脳梗塞をやっていて、左半身に麻痺の後遺症があるんです。そういった体力的な問題だとか、隣県で100kmぐらいの距離があるので車で行くにも時間がかかるし、電車で行く時の交通費も負担になって、次第に足が遠のいてしまいました。

ただ年々、体の自由も効かなくなってきているから、妻ひとりに面倒ごとを背負わせることになるのは偲びないし、いまのうちになんとかしたいという思いがあるんです。

賃貸に出した場合に家主が負う責任が懸念…

—ありがとうございます、よくわかりました。

—空き家をどうにかしたいという場合は一般的に、貸しに出すか売却するか、ということになりますが、いまの時点でお考えはありますか?

奥様:賃貸に出す、というといろんな責任を負わなくてはいけないのかな、というのがあって尻込みしていまいます。しがらみみたいなのは避けたいな、と思って。

—そうですね、おっしゃる通り賃貸に出した場合、建物の維持管理の責任は家主にあるので修繕費用の負担もありますし、店子(=入居者)さんとのやり取りも発生してきます。

—そうしたわずらわしさを避けたければ、管理会社を間に入れることで、店子さん(=入居者)とのやりとりは管理会社に任せることができます。

—ただその場合も、修繕費用の負担はありますし、管理会社に払う管理費用も発生します。

ご主人なるほど。

—もうひとつ、サブリースとか転貸契約と言われる形もあって、これはいわゆる又貸しですね。

—家を転貸会社に貸して、その会社がさらに他の店子さんに貸す、その店子さんに対して家主さんは関知しませんよ、という形ですね。

ご主人その場合の家主と入居者の方との間の契約というのは、どうなるんですか?

—あくまでも家主さんは転貸業者との間での契約だけで、転貸業者が店子さんと別途、契約を交わすという形なので、家主さんと店子さんとの間のやりとりや責任というのはありません。

—もちろん、そのぶん手元に入る家賃収入は相場よりもだいぶ割安になりますが、わずらわしいことは避けたい、という方にはうってつけの形かと思います。

意思決定能力のない親族がいる場合

—では、売却の場合のお話をさせていただきます。売却する場合には不動産の登記の手続きが必要になるのですが、そうした手続きはまだ取られていない状態でしょうか?

ご主人そうですね、相続手続きなどはなにもしていません。

奥様:実家のことは両親に任せきりだったので、火災保険がどうなってるかとかもわからなくて…。なにも知らない状態でご相談させてもらってるので、申し訳ありません。

—いえいえ、大丈夫ですよ! では、ごきょうだいはいらっしゃいますか?

奥様:姉がひとりいますが、7年ほど前から障害者施設に入っていて、実家のことをどうするかという話し合いは難しい状態です。

ご主人実家をこのままにしておけないので、いずれ処分してもいいか、という話は以前に一度しているんですが、それを理解できているかどうかはなんとも言えないんです。

—なるほど、意思確認が難しいという状態ですね。意思決定能力がないと思われる方には、成年後見人(法務省:成年後見制度~成年後見登記制度~)というのがついて、本人の代わりに財産の管理をしたり、遺産分割協議を行うことになっています。

—今回は、一番近い親族ということで、妹さんである奥様が後見人となるのが自然な流れかと思います。

奥様:その場合、具体的にはどうなるんですか?

—そうですね、本来は相続者間での遺産分割協議を経ないと決められないです。

—ですが、奥様がお姉さまの成年後見人ということになれば、ご実家をどう処分されるかは奥様おひとりの判断で進められることになるかと思います。

—ただもちろん、お姉さまにも遺産相続の持分がありますので、たとえば賃貸に出すのであれば家賃収入の半分をお姉さまに渡されるとか、売却処分で入ったお金の半分を渡されるとか、といったことを決める必要があります。

ご主人:なるほど。入るお金については当然、義姉と折半で、と考えています。登記の手続きに関してもお金がかかりますよね?

—はい、賃貸契約に関しては物件の名義というのはあまり関係ないのですが、売却に関しては登記の変更をしておく必要があって、手続きには一般的に数十万円単位のお金がかかります。

—司法書士の方への手数料が高いようなイメージがあるかもしれませんが、実際は国に納める「登録免許税」というが費用の内訳の大半を占めているんです。土地・建物の評価額に税率をかけて算出されるので、その地域の地価などによって変わります。

家財処分などの諸費用を売却成立時に支払う形を提案

—賃貸に出すにしろ売却するにしろ、いまある荷物を片付けなければいけない、という課題があるかと思います。

—ご自分たちだけで片付けるのが難しければ、たとえば整理・収納アドバイザーの方などに手伝ってもらう、という形もあります。

奥様:そういうことも考えたんですが、なかなかその費用を捻出できなくて…。

—なるほど。であれば、売却の話がまとまってからそういった手配をして、支払いも売却代金が入った時にさせてもらう、というような形がいいかもしれません。

—もしくは、解体時に家財の処分も一緒にしてもらうことを条件に売却する、という方法もありますね。いずれにしろ、先に支払う費用を考えると賃貸ではなく売却の形の方が、負担を減らすことができるかと思います。

ご主人:問題は土地が売れたとして、そういう費用で足が出ないかどうかだな。

奥様:多少、足が出てもしょうがないんじゃないかしら。いっぺんに片付けてもらえるなら、その方が面倒もなくてすっきりするような気がします。

売却だけでなくサブリースも視野に検討したい

ご主人:話を伺う前は、面倒を残したくないから売却、という方向で気持ちがほとんど固まっていましたが…。

やっぱり家を建て壊すのは惜しいという気持ちも実はあったので、色々な選択肢を教えていただいているうちに、サブリースというのも有りなのかな、という考えも出てきました。

どちらが良いのかじっくり検討してみたいので、見積もりなど出していただいて、また相談に乗っていただきたいと思います。ありがとうございました。

(後編に続く)

Leo
この記事を書いた人
元月刊誌編集者・元プロキックボクサーのフリーライター。コロナ禍を機に飼い始めた猫に夢中です。