左から空き家活用(株)、代表取締役和田貴充、朝川晋住吉区長、NPO法人リトルワンズ代表小山訓久
10月20日。大阪市住吉区役所にて、住吉区と空き家活用(株)の共催による「空き家活用セミナー」が開催された。
住吉区役所は、空き家や特定空き家の増加に対する対策として、今年の7月に空き家対策に協力する民間事業者の募集を実施。第一号に空き家活用(株)のモデルが採用され、キックオフも兼ねセミナーが開催されたかたちだ。
夫婦で来られた方、高齢者の方が中心に、空き家に悩みを抱える19名(男性8名、女性11名)のオーナーが集まり、セミナーの内容に熱心に耳を傾けられた。
朝川晋住吉区長の挨拶で始まり「全国の空き家率が13.6%に対し、大阪府下は15.2%となっている。平成30年度に起きた大阪北部地震や、台風による影響で、通報件数が800件と激増した。
空き家が特定空き家にならないよう、オーナー様にはしっかりと管理、活用してほしい」と訴えかけた。
国土交通省や東京都など、行政と連携しながらひとり親家庭の住宅支援等を行うNPO法人・リトルワンズの小山訓久氏が登壇。
今までに300件以上の規模で“シングルマザー”の支援を行ってきた。
「空き家を持った時、一番大事なのは、活用するのかしないのか。活用するのならば、人に貸すのか、売るのか、貸すならば誰に貸すのか決めるべき」と述べ、つづけて
「シングルマザーなどのひとり親に家を貸して、トラブルは殆どない。家賃の滞納もゼロです。シングルマザーの悩みは、家計が一番多く5割、住居は1割もある。理由は、保証人が必要とか、不動産屋の理解も進まない。しかし行政もバックアップしてくれる。子育て支援の背景から、空き家を貸すことは、社会貢献の側面も十分にある」と空き家の活用方法について述べた。
「誰に貸すか」は、支援も行政によって違いはあると言う。
小山氏は「行政によっては、住宅支援は高齢者やひとり親だけでなく、外国人や障害者への支援もある」と述べ、空き家をシングルマザーへ提供したオーナーの事例も説明。
「80過ぎのオーナー様。妻は他界、子供たちも独立し古い家となった今では、そう寄り付かない。我々リトルワンズを経由して、シングルマザーとの同居を受け入れた。今では“じいじ”と呼ばれるほど。自分の孫のように可愛がっている」と。
そのオーナーも「未来の世代に我が家を託す、こういった社会貢献もあることを知った」と、新聞に投書をしてくれたほど喜んでいたという。
「家賃収入が入ればよい、というケースもある。外国人に貸して、グローバルなコミュニケーションに発展するかもしれない」と、貸した後、どう関わっていくことの重要性も説いた。
「不動産は物件をマッチングするところ。生活支援はできない。そこは役割分担。我々は、ひとり親に仕事を紹介したり、子供たちの学問もサポートしている。不動産屋に対しては、“仕事もしっかりされている方で大丈夫ですよ”といった保証もしたり、1年以上空いている物件にひとり親を紹介している。このモデルは、ひとり親だけではなく、障害者や外国人向けの団体にも展開が始まっている(小山氏)」と述べた。
空き家の活用には、オーナーにとってメリットが大きいという。
「行政のバックアップがあること。助成金もある。分からないことがあれば地元の役所へ相談すると良い。貸したいと決めたら、我々のような団体に声をかけていただけたら。安心できる居住希望者を手配できるのが特徴。特にシングルマザーならば、子供もまだ小さく定住者が多いので、安定した家賃収入も見込めるのもオーナーにとってもメリットが大きい」と述べた。
続けて、空き家の活用(株)の代表、和田貴充氏がファシリテーターとなって、住吉区役所、辻井善寛氏(政策推進課長代理)と小山氏にて、パネルディスカッションを開いた。
冒頭で辻井氏は「住吉区の空き家は、約1万8八千戸。空き家率は約20%。5戸に1戸は空き家と言えます(ともに平成25年のデータ)」と、住吉区における現状を述べ、「大阪市全体も全国平均に比べて空き家率が高いが、住吉区は古い家が多いこともあって、大阪市平均よりも空家率が高くなっている。空き家問題は喫緊の課題(辻井氏)」と言う。
「そういう状況ですので、空き家対策には積極的に取り組みされていますよね?(和田氏)」の問いに辻井氏は「区役所にて相談窓口を設置しており、昨年度は電話や区役所にて約90件の相談を受けた」と、自治体の中でも珍しいほど、空き家相談を積極的に受付ている模様。
「大阪市では、空き家利活用改修補助事業を行っており、今日お越しの皆様には住宅再生型が該当すると思われ、バリヤフリー、省エネ、耐震に対する補助を行っている。要件は3か月以上空き家であること。そして、売るのではなく、活用をすることが条件」と述べ、ひとり親等に貸し出すなど“空き家の活用”を大きく推奨している。