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空き家の利活用を考える菊やすこさんの想い 新たな生命はぐくんだ家 「丁寧に使ってくれたら嬉しい」

大切な記憶が残る実家の利活用について考えたことはありますか?

今回生活を担ってきた思い出残る我が家が「空き家」に至るまでのお話を取材させて頂き、その思いを語っていただいた。

晩年の親と過ごした実家

 菊さんは子供の頃にこの家(宮城県登米市)に引っ越してきた。生家が手狭になったから、というのが理由だったという。

 家は国道沿いにある。

 「学校の先生だった父が、道路に飛び出すといけないからといって玄関を改修したのが思い出されます」

(菊さんとご主人)

 そんな菊さんは三姉妹の末っ子で、平成元年に寿司職人のご主人と結婚。この家から15分程度離れたとなり街に転居し、寿司店「美津乃寿司」を営んできた。

 ただ、その後も年老いた親の介護でこの家に通うなど、ながらく生活の“舞台”となった。菊さんにとっては、子供時代から結婚するまで暮らしたさまざま記憶、一家団欒や晩年の親と過ごした思い出のつまった大切な“実家”なのだ。

 その後、お父さんが亡くなると、この家はつい最近まで18年間にわたって賃貸住宅として貸し出された。

 「その間に、お住まいになったご夫婦にお子さんが生まれました。その子も今はもう高校生ですが、この家が新しい命をはぐくんだことを嬉しく思います」

今後の利活用を慎重に検討

 菊さんはすでに、家業である寿司店の近くに住居を構えている。

 「東京に出ていた27歳になる息子も帰ってきた」というが、この家に住むといった考えはないという。そこで“空き家”となったこの家の利活用を考えている。

 「借りていただける方がいればそうしたいと思います。難しいようであれば、売却も視野に検討したい」

 国道沿いで、もともとは東北電力の関連施設があったこともあり、立地は悪くない。家屋の裏には田畑が広がるなど、のどかさも兼ね備えている。菊さん自身も含め、子育てを支えた“実績”もある。

 一方で、18年間入居してきた家族は、親の介護の関係で転居していった。

少子高齢化が進む日本社会、特に地方ではこうした傾向がより強い。そんな中で、菊さんは「高齢者住宅などに活用できるなら、それもいいですね」という。

 むしろ、願いはひとつ。「ていねいに使ってもらいたい」ということだ。

 住居は生活の最大の舞台であり、家族の思い出も背景である。そして生活は年齢や時代とともに変化していく。

 結婚や子供、転勤や転職、介護…

 一方生活者は、生活の変化とともに住居を変えていく。菊さんが利活用を検討している家もまた、菊さんや入居者の“生活の一時期”を担ってきた。菊さんの「ていねいに…」という言葉は、そこでつぐまれた大切な思い出、生活の記憶から発せられているように思えた。

(了)

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青山博美
この記事を書いた人
フジサンケイビジネスアイ編集委員。1990年に日本工業新聞社(フジサンケイビジネスアイ)入社。以来、日本工業新聞や産経新聞、フジサンケイビジネスアイなどで経済、産業報道に携わってきた。 コーポレート・ガバナンス(企業統治)など企業経営関連、エネルギーや食料問題などの危機管理などが得意分野。