空き家などを活用し、民泊事業を行う為には「特区民泊」・「旅館業法」・「民泊新法」のいずれかに基づいて進める必要があります。しかし、適応要件も細かく設定されており、どのような方針を取るのか決めきれない方も多いのではないでしょうか?
事業収益確保の観点でみれば、結論としては「特区民泊」が最も効率的で有利な方法といえます。
今回は民泊の事業収益を効率的に得る為の、「特区民泊」の基礎知識とメリット・デメリットを分かりやすくご紹介します。
特区民泊の概要と施行された背景を知ることで、特性や今後の社会の流れを把握でき、民泊運用の方針を決めやすくなるメリットがあります。まずは、特区民泊について理解しておきましょう。
ひとくちに「特区民泊」と呼びますが、正式には「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」という名称となっています。具体的には、2013年に施行された「旅館業法」規制を緩和し、空き家などの民泊活用を促進する為に作られた政令のことです。この「特区民泊」が活用できる地域では、事業者の負担も比較的少なく、収益の得やすい民泊事業が可能となりました。
しかし「特区民泊」の活用は、全国のどの地域でもできる訳ではありません。この政令が活用できるのは、「国家戦略特区」に定められたエリアにおいて、「特区民泊」の条例を定めている自治体に対象物件がある場合のみになります。つまり、民泊運用を考えている物件のある自治体で、「特区民泊」の条例を定めているかどうかが活用の可否における、1つ目の判断基準となります。
「特区民泊」施行の目的としては、都心や観光地を中心とした地域で多くなった、無許可民泊の抑制が代表的なものです。施行以前は、民泊運営の為には「旅館業法」の建築基準など、高い基準をクリアしたうえで申請しなければならず、基準に従えば民泊事業を行なうのが難しい状況にありました。
例えば「旅館業法」で民泊運用を始める場合は、”客室の延べ床面積は一律33平方メートルとすること”など、物件によっては大幅なリノベーションが必要になるほどの、非常に高い基準が設けられていました。その為、費用をできるだけ抑えて事業展開を考える一部の事業者により、無許可での民泊運用が横行していたのです。これを抑制する為に定めた法令が「特区民泊」となります。
そして、2つ目の背景としては外国人観光客の取り込みです。増加傾向にある観光客の宿泊施設不足をうけ、地域の民泊施設を増やすことで集客を向上させ、地域経済の活性化を促すことを目的としています。海外観光客増加の流れは、政府の方針に沿った様々な施策も行なわれており、今後も上昇する流れにあるでしょう。
「特区民泊」が活用できる地域は、例外なく「国家戦略特区」内にあります。周辺環境で事業の流れも大きく変わる民泊事業において、「国家戦略特区」の特性や注意点についても確認しておくことが大切です。事業活用のヒントにもなる為、「国家戦略特区」の概要と注意点についても、しっかりと整理しておきましょう。
国家戦略特区の目的は、政府が掲げる「アベノミクス」の一環として、地域経済の活性化を促すことにあります。「世界で一番ビジネスをしやすい環境づくり」をテーマとして掲げ、指定地域に置いて幅広い分野で規制緩和などを行なっている施策です。具体的には、都市再生や雇用、医療など幅広い分野で全国一律となっていた法令や税制を特別に緩和・優遇しており、民泊事業に関してもこの政策の一環として規制が緩和されました。
このような流もあり、自治体の判断で地域毎に「特区民泊」の条例を定めることで、活用できる内容になっています。国家戦略特区は、幅広い分野で経済の活性化が期待される地域ともいえますので、民泊事業を行う際も他のエリアに比べ、有利に事業を進めることができるでしょう。
平成29年度までに定められている地域は、東京圏(東京都、神奈川県、千葉市、成田氏)、関西圏(大阪府、兵庫県、京都府)のほか、新潟市、養父市、福岡市、北九州市、沖縄県、仙北市、仙台市、愛知県、広島県、今治市の地域です。
「国家戦略特区」であれば必ず「特区民泊」がある訳ではないので注意が必要です。
「国家戦略特区」に指定されたエリアの自治体が「特区民泊」の条例を定めた場合は、申請が可能となります。もちろん活用する為には、定められたいくつかの要件を満たすことが必要です。そして、自治体へ確認を依頼し、要件を満たしていると認定を受けた後に、民泊運営が可能となります。