暮らしにも多様性の波が広がってきた最近では、中古マンションをリノベーションして住む方も増えています。
共働きや核家族化といった背景から、新築一戸建てにこだわらず利便性や自分たちに合った暮らしを求める方が多くなったためといえるでしょう。
そのため、中古マンションを購入してリノベーションする方のための情報は非常に多くなっています。しかし、空き家の中古マンションを所有する側は売却・賃貸にあたってリノベーションを行なった方が良いのかどうかという情報はほとんどありません。
そこで今回は、中古マンションをお持ちの方に向けて、リノベーションのメリット・デメリットを詳しくご紹介し、活用方法に合わせて必要なリノベーションを解説します。
中古マンションの使い方に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
「高齢の両親から中古マンションを相続した」
「昔マンションを購入したものの転勤でずっと住んでいない」
こうした理由から、空き家の中古マンションを所有しているものの、住まずにただ所有しているだけとなっている方は多いようです。
物件を所有し続けることで固定資産税や都市計画税は毎年かかりますし、管理の手間も発生します。
これらは空き家となっている期間が短ければ大きな負担ではないかもしれませんが、長くなるにつれて頭の痛い問題となってくるでしょう。
新築マンションであれば駅チカでなくても、一定のニーズが見込めます。しかし20年以上の古い物件であればニーズは少なく、そのままの状態では買い手・借り手がつきにくいのが現状です。
そこで選択肢のひとつとして「古いマンションをリノベーションする」という手段について考えてみましょう。築年数が経っていても、現代のライフスタイルやニーズに合わせてリノベーションを行うことで物件の資産価値を上げることができます。
中古マンションを所有する人が、売却・賃貸を前にリノベーションするのにはどんなメリットがあるのでしょうか。意外にもそのメリットは非常に大きいといえます。
中古マンションをリノベーションし、美しく、住みやすい状態にすることで物件の価値を上げることができます。
古いマンションは、ただ古いから人気がないわけではありません。間取りや設備が現代の生活に合っていないことが多く、売却・賃貸のどちらでも人気が集まりにくいのです。
マンションが普及し始めた1960年代後半~70年代ころ、マンションは一戸建てを購入するまでの仮住まいといったイメージが強かったため、終の住処として付き合うために必要な「暮らしやすさ」はさほど意識されていなかったのかもしれません。
80年代以降に建てられたマンションでは間取りや設備が大きく変化したものが多く見られるものの、キッチンが独立した部屋になっている、一つ一つの部屋が小さい、シャンプードレッサーがないなどのマンションは現代では暮らしにくいといえます。
現代では人気のない特徴を持つ物件は、リノベーションを行ない住み心地の良い部屋にすることで物件のニーズを高められるでしょう。
築年数の古いマンションでも、リノベーションを行なって内装や設備を新しくすることで「住みたい」と思ってもらえる物件にすることが可能です。新築一戸建てにこだわる人がいる一方で、「中古物件でも手を加えて住めばいい」と考える人も少なくありません。
2016年、オウチーノ総研が20歳~69歳の男女1,113名を対象に行なった「『住宅購入』に関するアンケート調査」では、家を購入する際に「新築(新築マンション・新築一戸建て)にこだわる」と回答した人の数は26.6%、「新築(注文住宅)にこだわる」が26.2%でした。
一方で「中古+リフォーム」を選択肢として考える人の割合は「積極的に考える(18.5%)」「選択肢の1つとして考える(55.3%)」と合計7割以上の人が中古物件に対して前向きな意見をもっていることがわかりました。
また、中古物件のメリットとして、「同じ条件の新築物件と比較して、リノベーション費用を含めても安く住める」ことがあります。
マンションの築年数や状態にもよるものの、リノベーションを行なうことで同価格帯の新築物件より住み心地をよくすることも可能といえます。
中古マンションをリノベーションする際にはデメリットもあります。
特に、リノベーションをしなくても充分にニーズがある場合には、リノベーションの必要性が問われるため注意しましょう。
一般的に「リノベーション」とは「住み心地を向上させるための(大規模な)改修」のことを指します。もともとはリフォームと同義で使われていた言葉ですが、近年では経年劣化による不具合や不便を補修して元の状態に戻すことを「リフォーム」、より良い状態とすることを「リノベーション」とすることが多くなっています。
「大規模な改修」となるリノベーションでは、リフォームよりも費用がかさみます。たとえば、リビングをLDKに変更した場合には100万〜300万円の費用がかかるでしょう。 キッチン場所移動はおよそ100万~200万円、浴室を広げる・移動する場合には150万~250万円前後の費用がかかります。
「フルリノベーションを行なったのに希望の価格で売れない」「住民が集まらない」といったケースを防ぐためには、マンションの位置や築年数、周辺の物件ニーズなどから「どこまで費用をかけてリノベーションする必要性があるのか」を明確にすることが大切です。
リノベーションをしなくてもニーズのある物件であれば、そもそもリノベーションの必要性が低くなります。
「駅から近い」「近くに大型の商業施設がある」「学校がある」「子育てのしやすい環境」「耐震補強済」などの条件であれば、リノベーションを行わなくても買いたい・借りたい人が出る可能性があります。
近隣の売却・家賃相場などを参考に資産価値を明確にしましょう。より詳しく知りたい場合には複数の業者に査定を依頼してみるのもおすすめです。
ここで、中古マンションのリノベーションでできることとできないことを確認してみましょう。
できること・できないことは所有するマンションの構造や管理規約によって異なるため、あくまでも一般的な例となりますが、参考としていただければ幸いです。
例)
間取りの変更はリノベーションの代表的な工事です。近年は部屋と部屋をつなげて広々とした空間をとる構造が流行しています。少子化や独身世帯の増加、核家族化などの影響から、将来的にもニーズの高いリノベーションといえるでしょう。
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面積の多い床を一新すると、部屋は見違えるように美しくなります。ベッドやソファなどを置く欧米型の生活様式をする人が増えたことから、和室の需要は減り、フローリングが人気です。フローリングでは材質にこだわる人も多く、天然のぬくもりを感じさせる無垢材が人気です。
床材は部屋のイメージを大きく左右するため、リノベーションを行うなら優先的に手を入れたい場所となります。
例)
壁や天井も床と同様、室内に入ったときに視界の多くを占める部分です。壁紙は手垢や日焼けなどで汚れが目立ちやすいため、張り替えは必須といえます。
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広く機能性の高いキッチンが備えられたマンションは、中古市場でも人気が高くなっています。料理は別室で女性が作るものという時代は終わり、現代の生活ではキッチンは家庭の中心となっているためです。
家族の様子を見ながら料理ができるカウンターキッチンや複数人で料理ができるアイランドキッチンの人気が高まっています。また、キッチン設備を充実させることも資産価値を高める方法の一つです。
例)
古いマンションではデッドスペースの多くなりやすい脱衣所。デッドスペースを造り付け収納にすることで、無駄なく広々とした脱衣所にすることができます。
また、壁紙や床材を機能性の高い素材に変更すれば、見た目が美しくなるだけでなくカビの発生や汚れの付着を軽減し、物件を長持ちさせることができます。
例)
室内ドアの変更は比較的安価で、施工費用を含めても一箇所5万円程度から変更可能です。
付け外しはさほど難しい作業ではないためDIYでも変更が可能ですが、取り付けだけではなく古いドアの処分方法も考慮する必要があります。
例)
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玄関ドアや窓のサッシはマンションの共有部分となるため、リノベーションを行うことができません。専用庭はその名称から専有部分と思ってしまいやすいのですが、実際には専用使用権が認められた共用部分にあたるため、リフォーム・リノベーションを行うのは管理組合となるので注意しましょう。
また、一般的なマンションに多いRC造では、ラーメン構造であれば間仕切り壁を撤去して間取りの変更が可能ですが、壁式構造の場合には間取り変更ができない場合が多くなっています。
中古マンションをリノベーションするべきか否かは、所有するマンションを最終的にどうしたいかによって異なります。選択肢としては主に次の5つがあります。
不動産会社の仲介のもと、所有する中古マンションを一般向けに売却する場合には、前述したとおりそのままの状態で買い手がつくようであればリノベーションを行う必要はありません。
しかし、「駅から遠い」「近隣にめぼしい商業・学校施設がない」など立地的に恵まれていない物件であれば、物件自体の魅力を高めるためにリノベーションするのは有効です。
この場合、壁・床・古くなった設備を新しいものに交換するなどは必須といえます。また、住んで欲しい人(ターゲット層)のニーズに合わせて間取り変更やバリアフリー化などを行うのも良いでしょう。
不動産売却と買取は似た言葉ですが、買主が一般客か不動産会社かが異なります。不動産売却は買主が一般客、買取は買主が不動産会社です。
買取は売却よりやや低めの査定となるのが一般的ではあるものの、手続き完了までの期間が短く済む、内覧客の受け入れが不要、近隣に知られずに手放すことができるなど、メリットは多くあります。
買取では、物件はそのままの状態で引き渡しとなるためリノベーションは必要ありません。
賃貸物件にする場合、リノベーション費用を家賃に上乗せして回収する、リノベーションを行わず、地域の相場よりも家賃を安く設定して経営する、修繕が必要な箇所のみリフォームして住民を募集、集まりが悪ければリノベーションを検討するなどの経営方法が考えられます。
この選択肢によってリノベーションが必要な範囲は大きく異なりますが、どの場合でも住民が快適に暮らせるよう、壁・床・古くなった設備の交換などは最低限行う必要があります。
サロンや教室などのジャンルであれば、中古マンションでも店舗として活用することが可能です。使用方法によっては小範囲のリノベーションだけでも充分な場合があります。
たとえば美容サロンの場合には部屋数の多さを利用して個室サロンにし、トイレと壁・床のみリノベーションする、料理教室の場合間取りをつなげてアイランドキッチンを設置するなど、目的に合わせて必要なリノベーションを行いましょう。
この場合、リノベーションは必要ありませんが、何もせず所有し続けるのは税や管理の負担が大きくおすすめできません。
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