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中古マンションの空き家が増加!都内の中古マンションを放置することの問題点と対処法

空き家といえば雑草が生い茂る中にポツンと立っている木造の戸建て。多くの人がもつ空き家へのイメージはこんな感じではないでしょうか。

ところが、都内では「親の住んでいた分譲マンションの空き家」が年々増加しています。

先に触れたような空き家が無くなっているわけではありませんが、「東京都」という特殊な地域ならではの「空き家=分譲マンション」が抱える問題点と対策を、具体的な事例を交えてご紹介していきます。

中古マンションの相続に関わる問題点

都内で両親とは別々に暮らされている方にとって、親の住む分譲マンションを相続するのか手放すのかは大きな関心事ではないでしょうか。ここでは相続することのメリットとデメリットを具体的に解説していきます。

親のマンションを相続するメリット

実ははっきりとメリットと言えることは1つしかありません。それは「資産になる」ということです。

資産価値が高いうちに売却することもできますし、お子様がいらっしゃるご家族の場合は、お子様が独立される時のために維持しておくというのも1つの選択肢になります。

親のマンションを相続するリスクとデメリット

デメリットの方が多い中古マンションの相続。具体的にどのようなリスクがあるのか見てみましょう。

①税金と維持費

相続してもその後の費用が一切かからないわけではありません。主にかかるのは税金と維持費です。税金は「相続税もしくは贈与税」と「固定資産税」で、相続税・贈与税は相続のタイミングによって生前か死後かで名称が変わります。いずれも、相続した段階で支払う税金(1回)になりますが、固定資産税は毎年かかってきます。

税金の課税率は土地の評価額に基づいて算出されるので、相続する可能性がある場合は事前に調べておくことが重要です。

維持費は「共益費・管理費」と「修繕費」が主なものになります。共益費と管理費は明確な区別はありません。共用部分の清掃や維持等にかかるものを共益費、事務にかかる費用を管理費としているところもあれば、共用部分の清掃に使われる水道代なども共益費に含めているところもあります。

いずれにしても名称の違いはあれど、相続をした場合は住んでいなくても支払わなければならない費用です。修繕費はその名の通り、積み立てておき共有部分に関わる修繕が必要になった時に、そこから捻出するための費用を指します。この維持費が後に大きな問題になる部分なので、相続する予定がある方は事前に金額を確認しておきましょう。

②管理組合や住民との関係

分譲マンションと賃貸マンションの最大の違いは、管理者が「管理組合」か「一個人・一法人」かという点です。分譲マンションはいわば運命共同体、住民同士で共有部分の使用方法や管理方法などを話し合い、大規模なマンションでは理事会を発足して代表者で決定をしています。

後で詳しく触れますが、資産価値を下げない為の工夫や運動をマンションの住民全体で取り組む動きが活発になっています。仮に税金や維持費を支払っていても、掃除や会合、祭りや活動に参加をしないと住民や管理組合とのコミュニケーションが取れないので、些細なことから苦情や大きな問題に発展するケースがあります。

③資産価値の低下

最大のデメリットはこの部分です。建物は人が住まないと老朽化が進み、唯一のメリットである資産すら覆してしまいます。特に都内では郊外のニュータウン計画等により、20年後には築30年を超える物件が600万戸を超える見込みです。築年数が経過するほど資産価値は下がる一方です。

中古マンションの資産価値はどう決まる?!

ここまで解説してきたメリット・デメリットを踏まえた上で、親の住んでいたマンションを相続するにしても売却するとしても、重要になってくるのがその「資産価値」です。個々の物件によって変動する条件もありますのですべてをご紹介することはできませんが、大きなウェイトを占める条件を解説します。

築年数

買い手の心理から考えれば当然のことではありますが、より新しい物件の方が需要が高いことはいうまでもありません。具体的には築10年目までの物件であれば、購入時の70~80%の価格で売却できる事が多いです。

これはローンと密接な関係があり、金融機関はローンの審査を築年数で算出するため、買い手が35年のフルローンを組むには、築12年目までの物件である必要があるからです。ここから築年数とともに資産価値は下がり続け、およそ31年目で横ばいになります。

立地条件

①主要駅が近い

これは非常に重要なポイントになります。実は私も両親とともに分譲マンションを購入し、一時的に同居をしましたが、私の職場が異動になったことにより通勤時間が負担で別居しております。買い手にとってはこの条件以外が素晴らしくても諦めるに足るほど重要な条件です。

②コンビニ・スーパーへのアクセスがよい

小さいお子様がいるご家庭も、高齢のご両親がいるご家庭も一番気になる所だと思います。車社会であればある程度の距離は買い物に行けても、都心の場合は車が必要ではない場合が多いので、普段の買い物は外せない条件です。

③学校

これは近いことは言うまでもありませんが、中学校までは居住地によって通う学校が決まってしまうので、お子様がいるご家庭ではどのような子が通っているかも気になるところです。

管理状態

管理状態を見るポイントは色々ありますが、内見の段階でよく見られるのが、ゴミ置き場と駐車場・駐輪場です。ゴミ置き場のルールが守られていない、駐輪場や駐車場が荒れていると管理状態が良くないとして、買い手が中々つきません。

治安

治安が良いか、軽犯罪が多発していないかは、特にお子様がいるご家庭では気になる条件になります。そうはいっても犯罪が起きたかは分からないでしょう?と思われる方もいるかもしれませんが、警視庁では「犯罪情報マップ」としてどこでどのような犯罪が起きたかを公開しています。

興味のある方は以下リンクから参照できます↓
参考:http://www2.wagmap.jp/jouhomap/Portal

相続した中古マンションの資産価値を下げないために

中古マンションを相続する唯一のメリットが「資産」であること、そしてその「資産価値」は経年とともに下がる一方であることを解説してきましたが、資産価値を下げない努力をすることで資産価値を実際にあげている管理組合があります。

資産価値を下げないための取り組みをしている管理組合の事例紹介

①屋上庭園を農園にして地域住民との交流

管理組合がしっかりとしているとは、ただ単に清掃が行き届いている、マナー違反がない、といったことだけではありません。

都内のあるマンションでは、新築時の構想では屋上が共用の庭園だったところを農園に改良し、持ち回りで野菜のお世話をして、収穫時には近隣住民を招いて大規模なお祭りを開催。資産価値を高めることに成功した事例があります。

②自動販売機で収益化

別のマンションでは管理組合で様々な話し合いをした結果、道路に面しているマンションの共用部分に自動販売機を設置。どんな自動販売機を設置するか、管理費用、商品ラインナップまで住民で話し合って決定したメーカーのものを導入しました。

 結果的に住民だけではなく、近隣の方からも利便性が高いということで好評になり、自販機の種類を増やして収益化に成功した事例もあります。

空き家を活用するという方法

相続放棄は3ヶ月という短い期間で判断をしなければなりませんが、選択肢は「相続放棄」と「相続したうえでの売却・居住」だけではありません。空き家として活用するという第3の手段があります。

ですが、空き家を専門とする事業者はほぼなく、不動産会社に相談すれば売却を勧められてしまいます。詳細は最後に触れていますが、「空き家活用株式会社」は空き家を専門としている頼れる企業です。

空き家となった分譲マンションへの東京都の取り組み

東京都は2018年3月から2019年3月の1年間「マンションの適正管理促進に関する検討会」を設置、学識経験者やマンション関係団体代表者等を10名集めて議論を進め、2018年12月20日に「東京におけるマンションの適正な管理に関する条例」を公表しています。

具体的な内容は以下のリンクを参照して頂ければ、19条の条文すべてを確認することができます。

参考:http://www.mansion-tokyo.jp/shisaku/01tekiseikanri-jourei.html

この条例は大きく3つの柱から成ります。

都や管理組合、事業者等の責任の明確化

要約すると、都内では建物と人(管理者や所有者、居住者)の2つの老いが進行しており、管理不全に陥れば衛生・防災・防犯等の面において周辺環境に深刻な影響を及ぼすため、マンション管理状況を把握するために責任を明確化しようということです。

管理組合による管理状況の届出

2020年4月から「昭和58年以前に新築された6居室以上のマンション」を「要届出マンション」とし、要届出マンションの管理組合は管理状況の届出が義務化されます。

管理状況に応じた助言・支援等の実施

「都は、区市町村や関係事業者等と連携して、届出によって把握した管理状況に応じ、管理組合等に対する助言・支援、指導等を行います(第18条~第19条)」

つまり、都が管理状況の良くないマンションに対し、立ち入り調査・改善指導が行えるようになるということです。

都内のマンションを放置することで実際に起こった事例

中古マンションを放置することは資産価値の低下を招き、さらに東京都が条例の整備に乗り出していることは分かっていても、どこに相談すればいいか、何を相談すればいいか分からず放置している方も多いです。

ここでは実際に放置して問題が起こった2つの事例をご紹介します。

所有者の住所が特定できないケース

驚くべき数値ですが、マンション全体の戸数のうち約13%が所有者の住所を特定できない空き部屋になっているマンションがありました。13%とはいかないまでも所有者の住所が特定できない空き家を抱えているマンションは多くあります。

管理組合は、不在者財産管理人を専任決議した上で家庭裁判所に申し立てを行い、その後管理人が売却をしましたが、滞納した管理費との相殺には至りませんでした。

相続放棄したケース

2つ目が相続放棄したケースです。相続放棄には期限があり「自己のために相続があったと知ってから3カ月以内」という短い期間で決めなければなりません。相続はいい部分だけというわけにはいかないので、負債と合わせて算出した上でそれでも相続するか否か結論を出すことになります。

このケースでは相続人である息子さんが、ご両親が亡くなってから住まわれていたマンションの相続を放棄していましたが、マンションの管理組合へはその旨を伝えていませんでした。息子さんはご両親との関係が良くなかったので、連絡もほとんど取ってはいなかったため亡くなる前の6年ほど管理費を滞納していることを知りませんでした。

管理組合は物件を競売にかけましたが、滞納した管理費との相殺には至りませんでした。

ここまで、都内ならではの空き家として中古マンションが多いこと、唯一のメリットである資産価値は経年とともに下がってはいくものの、管理組合の取り組み次第で価値の維持・向上は可能であることを解説してきました。

いつかはこの問題に直面するという方の中には「何とかしないといけない」と思いつつも、具体的な対策を打つ時間がない、どこに相談すればいいか分からないという方もいるとおもいます。

相続、売却だけではない!「活用」という第3の選択肢についても検討してみて下さい。

sakuya
この記事を書いた人
リラクセーションサロン・大手コンビニ・福祉業界と異色の経歴を持っています。今は田舎に戸建てを借りて都内と二拠点生活するフリーライターです。 次世代が活躍できる舞台づくりをフィールドワークにしています。