現在、空き家は増え続け社会問題となっています。
ですが、そもそも「空き家」とはどんな家を指すのか、ご存じの方は意外と少ないのではないでしょうか。
蔦が這う家?
朽ち果てる建物?
国土交通省は明確に「空き家」を定義していますが、空き家を所有している方の感覚とはかなりの開きがあります。
国土交通省による空き家の定義と、現実に「空き家」とみなすことができる建物に大きな乖離があります。ここでは、その違いを解説していきます。
国土交通省は、「空き家対策の推進に関する特別措置法(以下空き家法)」において空き家を「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地をいう。」と定義(*1)しています。
ここでいう「常態」とは、概ね1年間を通じて、居住やその他の使用、また電気・ガス・水道の使用実績がないことを指すので、以下に挙げる例のうち、ア・イ・エは国交省の定義では「空き家」と考えられます。
ウについても、数年間放置しているのであれば、それは「居住その他の使用」に当たらない可能性も十分にあります。
*1「空き家対策の推進に関する特別措置法(2015.2.26施行)」の原文をご覧になりたい方は以下を参照ください。
https://www.mlit.go.jp/common/001080536.pdf 国土交通省HP
アパートなどの集合住宅や長屋などの共同住宅は、戸建てとは定義が異なります。
というのが現状です。
※ただし、建築基準法に基づく行政指導は可能です。
ここまで触れてきた通り、国交省の空き家の定義はあくまで「増加する空き家から生まれるリスクへの対策」に重点を置いた最低限の基準であり、「活用できる資産」としての空き家を把握できていないのが現状です。
弊社は空き家を専門とする企業で、独自の基準に基づいて空き家を調査しており、ポータルサイト「AKIDAS」を運営しており、収益を産むことのできる空き家情報を多く保有しています。
国交省の定義による空き家であっても、広義の空き家であっても、放置することで生まれるリスクは同じです。具体的にどのようなリスクを空き家は抱えているのでしょうか。
適切な管理をされていない空き家は蔦がはい、汚れや落書きなど周囲の景観を損なう恐れ があります。
先にも触れましたが、1年以内の「居住やその他の使用」が認められる場合、老朽化によ る倒壊の危険性があっても、空き家法では対応することができません。倒壊すれば、建物 自体には住人がいなくても、周囲の建物に危険が及ぶことは十分に考えられます。
空き家となった原因にもよりますが、ごみの処理などが適切に行えていなかった建物は、 においが内装などにしみついてしまいます。これらのにおいを取り除くには、においの元 を処分するだけでは難しいです。また、周囲にもにおいが広がると近隣住民への賠償が必 要になってくる場合があります。
空き家となっても人が管理をしていれば少しは軽減しますが、シロアリなどの害虫・ネズミなどの害獣、田舎などの場合は猪などの被害も起こります。特にシロアリによる被害は深刻で、借り手や買い手が決まっても、建物の基礎部分からの補修工事や場合によっては倒壊の危険性にも繋がります。
空き家に対する犯罪で一番多いものが「放火」になります。延焼した場合は近隣への賠償責任も生じるので、火災保険に加入しておくなどリスクヘッジが重要です。他にも住居への不法侵入や空き家を使用した犯罪、落書きなどによる治安そのものの低下も大きなリスクとなります。
空き家の抱えるリスクについて触れてきましたが、2015年2月に施行された「空き家対策の推進に関する特別措置法」では、一定条件下の空き家を「特定空家」として、行政が立入調査を始めとする措置を講ずることができるようになりました。
では、「特定空家」と認定される条件と認定された時の具体的リスクについて、詳しく見ていきましょう。
現在、宅地上の建物は特例によって、以下の優遇を受けることができます。
しかし、特定空家に認定されてしまうとこの特例から除外されてしまい、固定資産税では最大6倍になる可能性があります。
「特定空家」と認定する権限は、市町村にあります。市町村が特定空き家に対して、具体的にどのようなことができるようになったかを見ていきましょう。
市町村は具体的な措置を検討するため、特定空家に立入調査することができます。
立入調査の結果、必要な助言・指導・勧告・命令を、空き家の所有者にすることができます。
命令等に応じない場合は、市町村の権限により強制撤去することができます。