「空き家を解体して除去したいがお金がかかる。補助は出ないの?」といった思いからか、「国土交通省から空き家解体・除却のための補助金が出る」いう噂が出ています。
しかし実際にこうした事実はなく、個人が利用できるのは各自治体が独自に行う補助金です。
空き家所有者の中で空き家の解体・除却を検討されている方の中には「費用をかけずに空き家をなんとかしたい」と悩んでいる方も多いでしょう。
そこで今回は、
といった点についてわかりやすくお話しします。
結果からお話すると、国土交通省から個人に向けた「空き家の解体・除去費に対する補助金」はありません。
以前、国土交通省は空き家再生等推進事業【除却事業タイプ】 として自治体に補助を行なっていました。補助対象となっていたのは「不良住宅・空き家の除却等に要する費用」「不良住宅・空き家の所有者の特定に要する経費」です。
こちらは主に過疎地域・人口減少の多い地域の自治体を対象とした補助であり、個人が利用することはできないものです。しかし「古くなった空き家をどうにかしたい」といった思いから、情報を誤って認識してしまった方が多かったのかもしれませんね。
住宅の解体費用は個人には負担の大きい額ですから「補助を受けられるのなら受けたい」と考えるのは自然なことです。空き家の解体や除却を考えてはいるものの費用の負担が大きいことが障壁となり、なかなか踏み出せない方にとっては共感できるのではないでしょうか。
では、空き家の解体・除却は実際にどれくらいの費用がかかるのかをご紹介します。
空き家を解体・除去した場合の具体的な費用は、住宅の広さや請け負う業者によって異なりますが、およそ以下のような相場感となっています。
上記の相場をもとにして単純に計算すると、30坪(約100平米)の空き家では木造住宅で120万円、鉄骨造で180万円、鉄筋コンクリート造で210万円の解体・除却費用がかかることになります。
また、「路地に囲まれている」「道路との高低差が大きい」などの理由で、重機が入れずに人の手で解体せざるを得ない空き家では、追加費用が発生する可能性も視野に入れておかなければなりません。
基本的な解体・除却費用だけでも100万円以上の金額がかかるのは、個人にとっては負担が大きいでしょう。しかし、そもそもなぜ空き家は解体・除却する必要があるのでしょうか。
固定資産税・都市計画税には住宅用地の特例措置があり、土地に住宅が建っていれば固定資産税・都市計画税が減免されます。
しかし平成27年度から「特定空家等」に指定されると減免が適用されないことになったのです。特定空家等に指定されれば、空き家を残しておく意味がなくなってしまいます。特定空家に指定され税制上の優遇が受けられなくなると固定資産税は最大6倍となり、支払い額が大幅に増してしまうからです。
※固定資産税の優遇については「都内駅前の空き家の不動産的価値は?売却の前に知るべき活用方法」をご覧ください。
特定空家に指定されると、自治体から空き家の状態を改善するよう「助言・指導」があります。その後「勧告」があり、この時点で改善しない場合に住宅用地特例の対象外となります。「勧告」に応じずにいると次は自治体から「命令」が下され、命令違反をすると最大50万円以下の過料が科せられる場合があります。
特定空家等に指定されるのは、そのまま放置すれば下記のような問題が起こると見なされた場合です。
噛み砕くと、地域社会に迷惑をかける恐れのある空き家が特定空家等に指定される可能性があるということ。
人が住まなくなった家は、住んでいるときと比べて傷みが早くなります。雨風で塀や壁が崩れて家の前を歩いていた人に怪我をさせてしまう、外れた庇が隣家に入り込んでしまうなど危険な状態になる場合もあるでしょう。また、不審者が住み着く、犯罪者の隠れ家となるなどの恐れもあります。
空き家の近くに住んでいる場合には、定期的な管理はさほど負担ではないかもしれません。しかし遠ければ遠いほど定期的に管理を行うのは負担が大きくなります。
空き家の解体・除去にも費用がかかるのに、最悪の場合罰金が発生し、しかし取り壊せば増税となるなんて、所有者にとっては頭の痛い問題ですね。
では、特定空家等に指定されないためにはどうしたらよいのでしょう。