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相続における贈与とは?生前贈与と遺贈の違いを分かりやすく解説

贈与とは?生前贈与と死因贈与の違いと特徴

贈与と聞くと「生前贈与」と同義と思われがちですが、実際には生前贈与と死因贈与という2種類があります。それぞれがどのような位置づけなのか、またどのようなケースで使われるのかを見ていきましょう。

生前贈与と死因贈与

「生前贈与」は被相続人が存命中に相続人に対して財産を贈与することで、「死因贈与」は聞きなれない方も多いと思いますが、被相続人が死亡することによって効力を発揮する贈与契約のことです。

具体例をあげると、生前贈与は複数人いる子供のうち1人が家を建てた時に資金を援助する等の場合をさし、死因贈与は「私が死んだら家を譲る」等の死亡によって効力を発揮する契約を行うことを言います。

いずれの場合も、被相続人と贈与契約を交わした人=財産を受け取る人を「受贈者(じゅぞうしゃ)」と言います。

生前贈与の種類

①単純贈与

贈与者から受贈者へ無償で財産を贈与すること。

②期限付贈与

特定の日付に財産を贈与すること。

例)子が成人する日に財産を贈与する等

③条件付贈与

贈与をする上で一定の条件を付加すること。

例)子が結婚した場合に自宅不動産を贈与する等

④負担付贈与

贈与をする上で、一定の義務を付加すること。

※詳しくは後ほど解説します。

死因贈与の位置づけ

死因贈与は、遺贈と同じで被相続人の死亡によって効力を発揮するため、「贈与」という名前がついていますが、法的には遺贈の規定が準用されています。

ただし、あとで詳しく解説しますが、贈与と遺贈には違いがあります。そのため、死因贈与の性質が変化してしまう場合は、遺贈の規定ではなく贈与として扱われる場合もあります。

いずれにしても相続には様々なケースがあり、専門的な解釈が必要な場合もあるので、疑問があるケースは弁護士等の専門機関に相談されることをおすすめします。

遺贈とは?包括遺贈と特定遺贈、遺言執行者の役割

贈与と混同されやすい「遺贈」。その性質も具体的な内容も実は大きな違いがあります。ここでは、遺贈について細かく解説をしていきます。

遺贈とは?

相続人や相続分は前述の通り法律で定められてはいますが、被相続人の意志を尊重することも重要です。そこで、15歳以上の人に認められている「遺言制度(いごんせいど)」があります。

遺贈とは、遺言によって被相続人が渡したい人に財産を渡すことができる制度です。

受遺者と遺言執行者

遺言によって財産を受け取る人のことを「受遺者(じゅいしゃ)」といい、相続を開始した後、遺贈を履行する義務を相続人が負います。ただし、遺言執行者(いごんしっこうしゃ)が選任されている場合は、遺言執行者が遺贈の履行を行います。

遺言執行者について詳しく触れてしまうと、内容が煩雑になりすぎるため、遺言執行者について詳しく知りたい方は以下を参照ください↓

空き活Lab過去記事「親の残した空き家を手放したい!不動産売却の鍵を握る相続財産管理人とは?」

被相続人は遺言によって、相続人のうち限定した人に遺贈をすることもできますし、相続人以外に遺贈することもできます。なお、法人も受遺者になることができます。

包括遺贈と特定遺贈

遺贈には相続財産の全部または一定の割合を遺贈する「包括遺贈」と、相続財産のうち特定の財産を遺贈する「特定遺贈」があります。

包括受遺者は、プラスの財産(積極財産)とマイナスの負債(相続債務)の両方を引き継ぐことになり、遺産分割が必要な場合は、遺産分割協議にも参加しなければなりません。

このため包括受遺者は、法定相続人と同様に相続放棄をすることができます。ただし、相続が分かった日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てを行わなければなりません。

特定受遺者は、資産分割協議を経ずに特定の遺産だけを受け取ることができます。特定受遺者も遺贈を放棄することができますが、その際は期間の定めは無く、また遺贈義務者か遺言執行者への意思表示によって行うことができます。

包括受遺者や法定相続人とは異なり家庭裁判所への申し立ては必要ありません。

贈与と遺贈は具体的にどう違う?その共通点と違い

贈与と遺贈は全く異なるわけではありません。相続という点での共通点もあるので、具体的にどのような共通点と違いがあるのかをまとめてみました。

共通点

①財産を自由に処分できる。

渡したいと思う人に、財産を渡すことができます。ただし、贈与の場合は受け取る側の同意が必要になります。

②「負担」をつけることができる。

※法的には「負担」という表現ですが、条件と言い換えてもいいでしょう。

 例えば、配偶者が高齢で介護等が必要な場合、財産を渡す代わりに面倒をみること等を相続の条件として付加することができます。

  • 負担付き贈与とは

  →贈与するものの対価にあたらない程度において、受贈者に一定の義務を負担させることを条件に

   贈与すること。

  (受贈者が負担を履行しない場合は、契約解除が可能です。)

  • 負担付き遺贈とは

  →遺贈の目的の価値を超えない限度において、受遺者に一定の義務を義務を負担させることを条件に

   遺贈すること。

  (受遺者が負担を履行しない場合は、相続人による履行の催促ののち、それでも履行されない場合は

   家庭裁判所に遺言の取り消しを請求することができます。

③被相続人の死亡によって効力を発揮する

※生前贈与は該当しない

※死因贈与と遺贈は、被相続人が死亡した時点で効果を生じるという共通点があります。

相違点

①一方的か双方合意の契約か

  • 贈与・・・双方の同意のもとで行われます。遺贈と違って口頭でも契約は可能ですが、死因贈与のよう
         に契約の存在を明らかにする必要があるため、通常は契約書が作成されます。
  • 遺贈・・・遺贈は被相続人が遺言によって一方的に行うことができます。従って、受遺者に受け取る
         意志が無い場合は被相続人の死後、相続手続きが開始されてから「相続放棄」の手続きを
         することになります。

②形式が法律に則った正式なものか、そうでないか

  • 贈与・・・先でも触れたように、贈与は口頭でも成立することができます。
  • 遺贈・・一方、遺贈は遺言に基づいて行われます。遺言は民法に則った正式な文書でないと無効と
         なるため、正式な文書であることが求められます。

③撤回が可能かどうか

  • 贈与・・・贈与はあくまで双方が同意した「契約」のもと行われる行為ですので、原則撤回することは
         できません。ただし、死因贈与の場合は遺贈の法律が準用されるため、被相続人の意志を
         尊重する目的から撤回は可能であると考えられます。
  • 遺贈・・・一方、遺贈は被相続人による一方的な単独行為であるため、生前自由に撤回・変更が可能
         です。また、遺言も何枚でも作成することが可能であり、複数の遺言の内容が矛盾する場合
         は日付が新しいものが採用されます。

        ただし、負担付き遺贈の場合、条件となる義務を被相続人の生前に行われる場合があるので、
        そのようなケースでは撤回は難しいと考えられます。

④年齢

  • 贈与・・・贈与は契約なので、どちらかが未成年の場合は親権者が代理で行うことになります。
  • 遺贈・・・遺言は15歳以上になれば残すことができるため、15歳以上であれば遺贈できます。

⑤税金

  • 贈与・・・生前贈与は贈与税が適用されます。ただし、死因贈与については被相続人の死によって
         効力が発揮されるため、相続税が適用されます。
  • 遺贈・・・遺贈は被相続人の死後、相続の一環として行われるため、相続税が課せられることに
         なります。

⑥不動産の所有権移転登記に関わる手続きの違い

  • 贈与・・・贈与は契約なので、贈与者と受贈者の双方が協力して行う必要がありますが、
         死因贈与の場合は贈与者は死亡しているため、贈与者の相続人全員の協力によって
         所有権移転登記が可能になります。
  • 遺贈・・・遺言執行者が選任されている場合は、遺言執行者と受遺者の協力によって所有権
         移転登記を行うことができます。

遺言執行者については、以下のリンクを参照ください↓

空き活lab過去記事「親の残した空き家を手放したい!不動産売却の鍵を握る相続財産管理人とは?」

<次ページ:贈与と遺贈の使い分けについて徹底解説>

sakuya
この記事を書いた人
リラクセーションサロン・大手コンビニ・福祉業界と異色の経歴を持っています。今は田舎に戸建てを借りて都内と二拠点生活するフリーライターです。 次世代が活躍できる舞台づくりをフィールドワークにしています。