贈与と聞くと「生前贈与」と同義と思われがちですが、実際には生前贈与と死因贈与という2種類があります。それぞれがどのような位置づけなのか、またどのようなケースで使われるのかを見ていきましょう。
「生前贈与」は被相続人が存命中に相続人に対して財産を贈与することで、「死因贈与」は聞きなれない方も多いと思いますが、被相続人が死亡することによって効力を発揮する贈与契約のことです。
具体例をあげると、生前贈与は複数人いる子供のうち1人が家を建てた時に資金を援助する等の場合をさし、死因贈与は「私が死んだら家を譲る」等の死亡によって効力を発揮する契約を行うことを言います。
いずれの場合も、被相続人と贈与契約を交わした人=財産を受け取る人を「受贈者(じゅぞうしゃ)」と言います。
贈与者から受贈者へ無償で財産を贈与すること。
特定の日付に財産を贈与すること。
例)子が成人する日に財産を贈与する等
贈与をする上で一定の条件を付加すること。
例)子が結婚した場合に自宅不動産を贈与する等
贈与をする上で、一定の義務を付加すること。
※詳しくは後ほど解説します。
死因贈与は、遺贈と同じで被相続人の死亡によって効力を発揮するため、「贈与」という名前がついていますが、法的には遺贈の規定が準用されています。
ただし、あとで詳しく解説しますが、贈与と遺贈には違いがあります。そのため、死因贈与の性質が変化してしまう場合は、遺贈の規定ではなく贈与として扱われる場合もあります。
いずれにしても相続には様々なケースがあり、専門的な解釈が必要な場合もあるので、疑問があるケースは弁護士等の専門機関に相談されることをおすすめします。
贈与と混同されやすい「遺贈」。その性質も具体的な内容も実は大きな違いがあります。ここでは、遺贈について細かく解説をしていきます。
相続人や相続分は前述の通り法律で定められてはいますが、被相続人の意志を尊重することも重要です。そこで、15歳以上の人に認められている「遺言制度(いごんせいど)」があります。
遺贈とは、遺言によって被相続人が渡したい人に財産を渡すことができる制度です。
遺言によって財産を受け取る人のことを「受遺者(じゅいしゃ)」といい、相続を開始した後、遺贈を履行する義務を相続人が負います。ただし、遺言執行者(いごんしっこうしゃ)が選任されている場合は、遺言執行者が遺贈の履行を行います。
遺言執行者について詳しく触れてしまうと、内容が煩雑になりすぎるため、遺言執行者について詳しく知りたい方は以下を参照ください↓
空き活Lab過去記事「親の残した空き家を手放したい!不動産売却の鍵を握る相続財産管理人とは?」
被相続人は遺言によって、相続人のうち限定した人に遺贈をすることもできますし、相続人以外に遺贈することもできます。なお、法人も受遺者になることができます。
遺贈には相続財産の全部または一定の割合を遺贈する「包括遺贈」と、相続財産のうち特定の財産を遺贈する「特定遺贈」があります。
包括受遺者は、プラスの財産(積極財産)とマイナスの負債(相続債務)の両方を引き継ぐことになり、遺産分割が必要な場合は、遺産分割協議にも参加しなければなりません。
このため包括受遺者は、法定相続人と同様に相続放棄をすることができます。ただし、相続が分かった日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てを行わなければなりません。
特定受遺者は、資産分割協議を経ずに特定の遺産だけを受け取ることができます。特定受遺者も遺贈を放棄することができますが、その際は期間の定めは無く、また遺贈義務者か遺言執行者への意思表示によって行うことができます。
包括受遺者や法定相続人とは異なり家庭裁判所への申し立ては必要ありません。
贈与と遺贈は全く異なるわけではありません。相続という点での共通点もあるので、具体的にどのような共通点と違いがあるのかをまとめてみました。
※渡したいと思う人に、財産を渡すことができます。ただし、贈与の場合は受け取る側の同意が必要になります。
※法的には「負担」という表現ですが、条件と言い換えてもいいでしょう。
例えば、配偶者が高齢で介護等が必要な場合、財産を渡す代わりに面倒をみること等を相続の条件として付加することができます。
→贈与するものの対価にあたらない程度において、受贈者に一定の義務を負担させることを条件に
贈与すること。
(受贈者が負担を履行しない場合は、契約解除が可能です。)
→遺贈の目的の価値を超えない限度において、受遺者に一定の義務を義務を負担させることを条件に
遺贈すること。
(受遺者が負担を履行しない場合は、相続人による履行の催促ののち、それでも履行されない場合は
家庭裁判所に遺言の取り消しを請求することができます。)
※生前贈与は該当しない
※死因贈与と遺贈は、被相続人が死亡した時点で効果を生じるという共通点があります。
ただし、負担付き遺贈の場合、条件となる義務を被相続人の生前に行われる場合があるので、
そのようなケースでは撤回は難しいと考えられます。
遺言執行者については、以下のリンクを参照ください↓