空き家を民泊に活用したいと考えたとき、最初に見ておきたいのは「売上がいくらになるか」ではなく、「最後にいくら残るか」です。民泊の収支は、宿泊単価だけでなく、稼働率、平均宿泊日数、清掃費、予約サイトの手数料、水道光熱費、保険料、管理委託費などで大きく変わります。
さらに、住宅宿泊事業、簡易宿所、特区民泊では、営業できる日数や前提条件が異なるため、同じ物件でも収支の見え方は変わります。この記事では、数字の置き方、見落としやすい費用、制度ごとの考え方、実際の試算例まで、民泊の収支シミュレーションをやさしく整理します。
なお、ここで紹介する金額例は考え方をつかむための試算です。実際の可否や必要な手続き、営業日数、条例による制限、税金の扱いは、物件の所在地や運営方法によって異なるため、必ず自治体や公的窓口、必要に応じて専門家へ確認してください。
民泊の収支は「売上-変動費-固定費」で見る
民泊の収支は、次の順番で考えると整理しやすくなります。
営業利益 = 売上 - 変動費 - 固定費
売上には、宿泊料金だけでなく、宿泊者から受け取る清掃料金が含まれる場合があります。
変動費は、予約が入るほど増える費用で、清掃、リネン、消耗品、水道光熱費の増分、予約サイト手数料などです。
固定費は、予約の有無にかかわらず発生しやすい費用で、通信費、保険料、管理システム利用料、会計・税務の外注費、定期点検費、最低限の修繕積立などです。
最初の段階でやりがちなのは、宿泊単価と稼働率だけで売上を大きく見積もり、清掃や手数料、細かな備品代を後から足してしまうことです。これでは、想定よりも残るお金が少なくなります。特に清掃料金は「受け取るお金」である一方、外注するなら「支払うお金」でもあるため、売上と費用の両方に入れて考える必要があります。
| 区分 | 主な中身 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 売上 | 宿泊料金、清掃料金、追加料金 | 清掃料金は売上に入るが、清掃費も別で発生しやすい |
| 変動費 | 清掃、リネン、消耗品、光熱費の増分、予約サイト手数料、決済手数料 | 平均宿泊日数が短いほど清掃回数が増え、利益が圧迫されやすい |
| 固定費 | 通信、保険、会計、管理システム、点検、修繕積立、管理委託の基本料 | 小さな費用の積み上げで、月数万円の差になりやすい |
先に押さえたい制度の違いと販売可能日数
民泊の収支を考えるときは、まず「どの制度で運営するか」を決める必要があります。制度が違うと、営業できる日数や必要な手続きが変わるからです。とくに住宅宿泊事業では、年間180日という上限があるため、365日フルで売れる前提の試算は使えません。
| 制度 | 手続き | 販売可能日数の考え方 | 収支シミュレーション上のポイント |
|---|---|---|---|
| 住宅宿泊事業 | 届出 | 年間180日が上限。自治体の条例や独自ルールでさらに制限される場合あり | まず「年間180日以内」で売れる泊数を置いてから、稼働率を掛ける |
| 簡易宿所 | 許可申請 | 原則として日数上限なし | 営業日数を伸ばしやすい一方、許可の要件や設備面の確認が重要 |
| 特区民泊 | 認定申請 | 実施できる地域が限られる。自治体によっては2泊3日以上の最低利用日数ルールあり | 回転率よりも、長めの滞在を前提にした単価設計と清掃回数の見方が大切 |
また、住宅宿泊事業では、家主不在型や居室数などの条件によって、住宅宿泊管理業者への委託が必要になる場合があります。こうした制度上の条件は、そのまま固定費や運営費に跳ね返るため、収支表の最初に反映させておくと現実に近い数字になります。
収支シミュレーションに入れる費目一覧
民泊の試算で使う項目は多いように見えますが、実際には「売上」「変動費」「固定費」に分ければ整理できます。次の表をそのまま見積もり表の下書きにしておくと便利です。
| 区分 | 項目 | 入れ方の考え方 |
|---|---|---|
| 売上 | 宿泊料金 | 1泊単価 × 実売泊数で計算。繁忙期と閑散期で差があるなら年平均で置く |
| 売上 | 清掃料金 | 1回あたり清掃料金 × 清掃回数。宿泊者から別途受け取る場合に計上 |
| 変動費 | 清掃費 | 1回あたり清掃費 × 清掃回数。外注か内製かで大きく変わる |
| 変動費 | リネン・消耗品 | 1泊あたり、または1回あたりで設定。トイレットペーパー、洗剤、アメニティなどを含む |
| 変動費 | 水道光熱費の増分 | 予約が入った分だけ増える想定の費用として見込む |
| 変動費 | 予約サイト・決済手数料 | 売上に対する率で計算。利用する予約サイトや契約方式ごとに確認する |
| 固定費 | 通信・Wi-Fi | 毎月固定でかかる費用として計上 |
| 固定費 | 保険 | 火災保険、賠償責任保険など。物件や契約内容で差が大きい |
| 固定費 | 管理委託費 | 家主不在型や現地対応の外注をする場合は重要な固定費になる |
| 固定費 | 会計・税務・システム利用料 | 月額や年額で発生するものを見落とさず入れる |
| 固定費 | 修繕積立 | 突発修理が出る前提で、毎月一定額を積み立てる考え方が安全 |
とくに見落としやすいのは、平均宿泊日数です。1泊ごとの予約が多いと、同じ稼働率でも清掃回数が増えて利益が落ちます。反対に、2泊、3泊と長めの予約が増えると、清掃回数が減るため収支は改善しやすくなります。
数字を置いて試算する手順
民泊の収支表は、いきなり細かい費目を全部埋めるより、次の順番で作ると失敗しにくくなります。
住宅宿泊事業、簡易宿所、特区民泊のどれで進めるのかを先に決めます。ここで販売可能日数の前提が変わります。
住宅宿泊事業なら年180日以内、簡易宿所なら月30日を基準にするなど、制度に合った在庫日数を設定します。
繁忙期だけの高い単価ではなく、年間や月間の平均として置くと現実的です。平均宿泊日数も同時に設定します。
実売泊数 ÷ 平均宿泊日数で、おおよその清掃回数を出します。清掃料金収入と清掃費の両方を計上します。
予約が入るほど増える費用と、予約がなくてもかかる費用を分けて入れると、改善ポイントが見つけやすくなります。
単価、稼働率、清掃費、固定費を少しずつ変えて、数字の振れ幅を確認します。最初から標準ケースだけで判断しないことが大切です。
最低でも「慎重」「標準」「強気」の3通りを作っておくと、予想より予約が伸びない時期にも慌てにくくなります。特に空き家活用の初年度は、家具家電の入替え、小修繕、写真撮影、備品補充など、想定外の出費が出やすいため、余裕を持った数字をおすすめします。
住宅宿泊事業(年180日上限)での試算例
ここでは、住宅宿泊事業として届け出るケースを想定し、年間180日を販売可能な在庫とみなしたうえで、そこに稼働率をかけて試算します。住宅宿泊事業では、そもそも年180日を超えて営業できないため、365日ベースの稼働率だけで判断しないことが重要です。
| 前提条件 | 設定した数字 |
|---|---|
| 1泊単価 | 18,000円 |
| 年間販売可能泊数 | 180泊 |
| 稼働率(年間販売可能泊数に対して) | 70% |
| 実売泊数 | 126泊 |
| 平均宿泊日数 | 2泊 |
| 清掃回数 | 63回 |
| 清掃料金収入 | 6,000円/回 |
| 清掃費 | 5,000円/回 |
| 予約サイト・決済手数料 | 売上の5% |
| 消耗品 | 800円/泊 |
| 水道光熱費の増分 | 1,000円/泊 |
| 固定費 | 年間960,000円 |
試算結果
宿泊料金売上:18,000円 × 126泊 = 2,268,000円
清掃料金収入:6,000円 × 63回 = 378,000円
年間売上合計:2,646,000円
予約サイト・決済手数料:2,646,000円 × 5% = 132,300円
清掃費:5,000円 × 63回 = 315,000円
消耗品:800円 × 126泊 = 100,800円
水道光熱費の増分:1,000円 × 126泊 = 126,000円
変動費合計:674,100円
売上総利益:2,646,000円 - 674,100円 = 1,971,900円
営業利益:1,971,900円 - 960,000円 = 1,011,900円
このケースでは、年間の営業利益は約101万円です。ただし、これは初期の大きな改修費や家具家電の導入費を含まない試算です。空き家を民泊として使い始める前に内装の手直しや設備更新が必要なら、別で初期投資回収の計算も必要になります。
また、このケースの大事な見方は、年180日という在庫制限があるため、稼働率を上げるだけでは売上の伸びに限界があることです。住宅宿泊事業で数字を作るなら、単価、平均宿泊日数、清掃回数、固定費の軽さがかなり重要になります。
簡易宿所・特区民泊を想定した試算例
次に、簡易宿所や特区民泊のように、住宅宿泊事業の年180日上限とは別の考え方になるケースを、月次ベースで試算してみます。特区民泊は実施地域や最低利用日数など自治体ごとの条件確認が必要ですが、収支の見方としては「長めの滞在で清掃回数が抑えられるか」が重要になります。
| 前提条件 | 設定した数字 |
|---|---|
| 1泊単価 | 15,000円 |
| 月間販売可能泊数 | 30泊 |
| 稼働率 | 65% |
| 実売泊数 | 19.5泊 |
| 平均宿泊日数 | 2.5泊 |
| 清掃回数 | 7.8回 |
| 清掃料金収入 | 5,000円/回 |
| 清掃費 | 4,000円/回 |
| 予約サイト・決済手数料 | 売上の10% |
| 消耗品 | 700円/泊 |
| リネン相当 | 500円/泊 |
| 水道光熱費の増分 | 900円/泊 |
| 固定費 | 月95,000円 |
試算結果
宿泊料金売上:15,000円 × 19.5泊 = 292,500円
清掃料金収入:5,000円 × 7.8回 = 39,000円
月間売上合計:331,500円
予約サイト・決済手数料:331,500円 × 10% = 33,150円
清掃費:4,000円 × 7.8回 = 31,200円
消耗品:700円 × 19.5泊 = 13,650円
リネン相当:500円 × 19.5泊 = 9,750円
水道光熱費の増分:900円 × 19.5泊 = 17,550円
変動費合計:105,300円
売上総利益:331,500円 - 105,300円 = 226,200円
営業利益:226,200円 - 95,000円 = 131,200円
このケースでは、月間の営業利益は約13万円です。年換算すると約157万円ですが、繁忙期と閑散期の差、自治体ルール、最低利用日数、現地対応の外注範囲によって実際の数字は大きく変わります。
特に特区民泊では、2泊3日以上などの最低利用日数ルールがある自治体では、1泊だけの予約は受けにくくなります。その一方で、短期の入替えが減って清掃回数が下がるため、単価と平均宿泊日数の組み合わせ次第では収支が安定しやすくなります。
赤字を防ぐ見直しポイント
民泊の収支が厳しくなりやすいのは、宿泊単価が低いからだけではありません。次の項目は、数字に与える影響が大きく、改善しやすいポイントでもあります。
| 見直しポイント | 主に動く数字 | 考え方 |
|---|---|---|
| 平均宿泊日数 | 清掃回数 | 同じ実売泊数でも、平均宿泊日数が長いほど清掃回数が減り、利益が残りやすい |
| 予約経路の比率 | 手数料率 | 予約サイトごとに手数料や条件が違うため、受け取り額ベースで比較する |
| 清掃の発注方法 | 清掃費 | 外注一本にするのか、一部を内製にするのかで1回あたり費用が変わる |
| 光熱費の見直し | 変動費・固定費 | 給湯、空調、待機電力の見直しで年間差が出やすい |
| 修繕積立の設定 | 固定費 | 積み立てを省くと一時的には利益が良く見えるが、故障時に収支が崩れやすい |
| 管理委託の範囲 | 固定費 | 現地対応をどこまで外注するかで月額が大きく変わる。制度上必要な委託かどうかも確認が必要 |
実務では、次の3パターンを作って比較すると判断しやすくなります。
- 慎重ケース:単価を少し低め、稼働率を低め、清掃費と固定費をやや高めに置く
- 標準ケース:今の見込みどおりに置く
- 強気ケース:繁忙期の単価上昇や予約の伸びを織り込む
この3つを比べたうえで、慎重ケースでも資金繰りが回るかを確認しておくと、民泊を始めた後の失敗を減らしやすくなります。
公的情報の確認先・参考ページ一覧
民泊は制度区分や自治体ルールで収支の前提が変わります。実際に始める前には、次の公的情報を確認しておくと安心です。
特区民泊を検討する場合は、対象地域の自治体サイトで最低利用日数や認定要件を、住宅宿泊事業を検討する場合は、所在地の自治体サイトで条例や独自ルールを必ず確認してください。
よくある質問
清掃料金は売上に入れてよいですか?
宿泊者から受け取る清掃料金があるなら、売上に入れて問題ありません。ただし、その分だけ清掃費も発生しやすいため、売上だけでなく費用側にも必ず計上してください。清掃料金だけを見て利益と考えてしまうと、収支を見誤りやすくなります。
住宅宿泊事業なら、稼働率80%や90%で見込んでもよいですか?
数字として置くこと自体はできますが、住宅宿泊事業では年180日上限があるため、365日を前提にした高い稼働率だけで売上を見込むのは危険です。まずは年180日以内の販売可能日数を置き、その範囲でどの程度埋まるかを考えるのが安全です。
家主が現地に住んでいない場合、管理費は見込むべきですか?
はい。家主不在で運営する場合は、制度上、管理業者への委託が必要になることがあります。現地対応、鍵の受け渡し、苦情対応、緊急時対応なども費用に関わるため、管理費は早めに試算へ入れておくほうが現実的です。
税金はこの試算にどう入れればよいですか?
まずは営業利益までを作り、その後に税金を別枠で考えると整理しやすくなります。所得税、住民税、消費税などの扱いは、個人か法人か、売上規模、取引先、契約形態などで変わるため、最終判断は税理士などの専門家へ確認してください。
この記事のまとめ・Point3つ
民泊の収支を考える際は、「制度」「コスト構造」「シミュレーション」の3つを押さえることが重要です。最後に、ポイントを3つに絞ります。
Point 1
まずは制度選びで前提を固める
住宅宿泊事業・簡易宿所・特区民泊では営業条件が異なります。制度によって収支の前提も変わるため、最初に決めることが重要です。
Point 2
清掃費と手数料が利益を左右する
宿泊単価だけでなく、清掃回数や予約サイト手数料、固定費まで含めて考えましょう。受け取り額ベースで見ることが重要です。
Point 3
収支は3パターンでシミュレーションする
慎重・標準・強気の3ケースを用意すると、変動やリスクに備えやすくなります。楽観的な数字だけで判断しないことが大切です。
民泊が向いている空き家もあれば、賃貸や売却のほうが合う空き家もあります。制度の条件や改修費、運営体制まで含めて整理したいときは、空き家の状況に合わせて早めに相談するのが安心です。
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