アスベスト事前調査の流れと費用:所有者が知るべきこと

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アスベスト事前調査は、解体工事だけでなく、改修や設備工事でも必要になることがある大事な確認です。特に、平成18年(2006年)9月より前に着工した建物は、石綿含有建材が使われている可能性を前提に考えると動きやすくなります。

所有者が押さえておきたいのは、「どの工事で必要か」「誰が調査し、誰が報告するか」「費用は何で増えるか」の3点です。工事の見積もりを急いで出してもらう前に、事前調査の流れを理解しておくと、追加費用や工期のずれを抑えやすくなります。

目次

アスベスト事前調査とは何か

アスベスト事前調査とは、解体や改修を始める前に、工事の対象部分に石綿を含む建材が使われていないかを確認する調査です。今は「壊す前に見る」のではなく、「着工前に書面と現地の両方で確認する」のが基本です。

厚生労働省の案内では、事前調査は原則として工事の規模にかかわらず必要で、設計図書などの文書確認と目視確認の両方を行う前提になっています。書面だけで終わらせず、現場で建材の種類や改修履歴を見ていくのが大きなポイントです。

「うちは戸建てだから関係ない」「小さな工事だから不要」と思い込まないことが大切です。所有者側は、工事の見積もりに調査費が含まれているかを早い段階で確認しておくと、後からの手戻りを減らせます。

どんな工事で必要になるのか

対象になるのは、建物を丸ごと壊す工事だけではありません。壁・天井・床・外壁・屋根・設備まわりなど、改修や撤去で建材に手を入れる工事も含まれます。小規模工事の例として、厚生労働省はエアコン取付、壁紙の張替え、外壁工事や塗装、原状回復工事なども案内しています。

工事の例見落としやすい点
建物全体の解体内装だけでなく、外壁・屋根・設備まわりの建材確認も必要です。
浴室・キッチン・トイレ改修下地材や配管まわり、天井裏など見えない部分まで確認が必要になることがあります。
外壁・屋根工事成形板や下葺き材など、仕上げ材以外に注意が必要です。
エアコン工事・原状回復小規模でも対象部分の材料調査は省略できません。

また、行政への事前調査結果の報告が必要になる規模もあります。建築物の解体工事は解体部分の床面積合計80㎡以上、建築物の改修工事は請負金額100万円以上が一つの目安です。ただし、報告義務がない規模でも、事前調査そのものは必要です。

所有者・元請業者・調査者の役割分担

所有者が誤解しやすいのが、「調査は誰の仕事か」と「費用は誰が見るか」です。実務では元請業者が調査や報告を進める形が多い一方で、所有者には図面や過去の改修情報を渡したり、法令を守れる工期と費用を確保したりする配慮が求められます。

立場主な役割所有者が確認したいこと
所有者・発注者図面や過去の工事情報を共有し、適法に工事できる条件を整える見積もりに調査費が入っているか、調査結果報告書を受け取れるか
元請業者事前調査の実施、必要な行政報告、工事全体の管理どの範囲を調べるか、報告対象工事か、結果報告の時期
有資格の調査者書面調査、目視調査、必要に応じた分析判断住宅なら一戸建て等石綿含有建材調査者など、必要資格を満たしているか

厚生労働省の案内では、令和5年10月1日以降に着工する建築物の工事について、事前調査は有資格者が行う必要があります。戸建て住宅でも、誰でも調査できるわけではない点は先に押さえておきましょう。

事前調査の流れ

所有者目線では、調査は「現地を見に来て終わり」ではありません。図面確認、現地確認、必要なら採取・分析、報告書の作成、工事条件の見直しまでが一連の流れです。

STEP
図面・工事範囲・改修履歴をそろえる

平面図、立面図、確認申請図書、過去のリフォーム資料、設備交換の履歴などを元請業者へ共有します。図面がない場合でも調査は必要なので、「資料なし」で進める前提を早めに伝えます。

STEP
書面調査を行う

設計図書や建材情報を確認し、石綿含有の可能性がある部位を洗い出します。ここで工事対象外の部分と対象部分を整理しておくと、現地調査の見落としが減ります。

STEP
現地で目視調査を行う

図面どおりの建材か、後から張り替えられていないか、見えない部分に古い建材が残っていないかを確認します。書面と現場で違いがあれば、現地調査の結果を優先して考えます。

STEP
必要に応じて採取・分析を行う

目視だけで石綿含有の有無が確認できない場合は、サンプル採取を行って分析機関へ回します。なお、分析せずに「石綿あり」とみなして法令に沿って除去する進め方が選ばれることもあります。

STEP
調査結果報告書を受け取り、見積もりを見直す

所有者は、どの部位をどう判断したかが分かる報告書を受け取りましょう。ここで初めて、通常解体で進められるのか、除去費や養生費が追加になるのかが見えてきます。

STEP
必要な報告・届出をして着工する

報告対象工事なら、元請業者が石綿事前調査結果報告システムで行政へ報告します。さらに、調査結果が吹付け材や保温材等であれば、工事開始前の届出や工程調整が必要になるため、工期は余裕を持って組むのが安全です。

費用の内訳と高くなりやすいポイント

アスベスト事前調査の費用は、一律ではありません。所有者が見るべきなのは「総額」だけでなく、何に対する費用なのかです。厚生労働省の発注者向け案内でも、書面調査、現地調査、裏面確認調査、分析調査、総合調査報告書、諸経費などの項目例が示されています。

費用の項目内容高くなりやすい条件
書面調査図面や建材情報の確認図面不足、改修履歴が不明、建材数が多い
現地調査有資格者による目視確認部屋数が多い、天井裏や床下の確認が多い、遠方出張
裏面確認・部分解体見えない部分の確認二重張り、重ね貼り、仕上げの下に古い建材が残る
採取・分析サンプル採取と分析機関での確認疑わしい建材の種類・箇所が多い、至急対応
報告書作成・報告対応調査結果の整理、必要な行政報告報告対象工事、図面添付や整理資料が多い

戸建てでも、過去の増改築が多い家、図面がそろわない家、浴室・天井裏・外壁下地まで触る工事では、想定より費用が上がりやすくなります。逆に、工事範囲が限定的で図面もそろっていれば、調査の進み方は比較的スムーズです。

大切なのは、見積もりを「調査込み」と「調査後の本見積もり」に分けて考えることです。初回見積もりが安く見えても、事前調査後に除去対応が乗って大きく変わることは珍しくありません。

見積もりで確認すべき項目

所有者は、ただ「アスベスト調査一式」と書かれているだけの見積もりより、項目が分かれている見積もりを選ぶほうが判断しやすくなります。特に次の点は、契約前に聞いておくと後悔しにくい部分です。

  • 調査費が仮見積もりの段階で計上されているか
  • 調査を行う人が有資格者か
  • 調査範囲が「工事対象部分すべて」になっているか
  • 採取・分析が必要になった場合の追加条件が明記されているか
  • 調査結果報告書を所有者へ提出してもらえるか
  • 報告対象工事に該当した場合、行政報告まで対応してもらえるか
  • 石綿ありとなった場合の再見積もりの出し方が決まっているか

また、調査費がまったく入っていない見積もりには注意が必要です。後から追加されるだけでなく、そもそも法令に沿った工程が組まれていない可能性もあるため、「調査費を外して安く見せていないか」は必ず確認しましょう。

調査結果が出た後に変わること

事前調査の結果、石綿含有建材が見つかると、工事の進め方は大きく変わります。単に「撤去費が増える」だけではなく、工期、養生、届出、廃棄物処理、近隣対応まで見直しが必要になるためです。

結果のイメージ所有者への影響
石綿なし通常の工事工程で進めやすくなります。調査結果報告書は保管しておくと後で説明しやすくなります。
石綿ありと判断除去方法や養生方法が変わり、追加費用や工程延長が発生することがあります。
吹付け材・保温材など飛散しやすい建材がある着工前の届出や工程管理が重くなりやすく、早めの段取りが必要です。
判定困難で分析待ち工事開始日が後ろにずれることがあるため、引渡しや売却予定がある場合は余裕を見ます。

所有者としては、調査結果が出た時点で「どこに、どの建材が、どんな根拠で判断されたか」を確認し、写真付き記録や報告書の写しを受け取っておくのがおすすめです。将来の売却や追加工事のときにも役立ちます。

補助制度と公的情報の確認先

調査費や除去費については、自治体によって補助制度がある場合があります。ただし、全国一律に使えるわけではなく、対象が主に吹付けアスベスト等に限られることもあるため、工事契約の前に自治体窓口で確認するのが安全です。

国の案内では、民間建築物の吹付けアスベスト等の調査に対して、自治体経由で活用する補助制度の枠組みが示されています。使えるかどうか、申請時期、上限額、対象建材は自治体ごとに差があるため、「ある前提」で進めず、先に確認してから見積もり比較へ進みましょう。

公的情報の確認先

事前調査の義務、有資格者の要件、行政報告、補助制度の考え方は、公的情報で確認しておくと判断しやすくなります。最新情報は次のページで確認できます。

よくある質問

戸建ての小さな改修でも事前調査は必要ですか?

必要になることがあります。事前調査は建物全体の大きさだけでなく、工事で触る材料があるかどうかで考えます。壁紙張替え、設備工事、原状回復などでも、対象部分の材料確認が必要です。

見積もりに調査費が入っていないのですが、そのまま契約して大丈夫ですか?

そのまま進める前に確認したほうが安全です。厚生労働省も、発注者は仮見積もりの段階でアスベスト調査費用が計上されているかを確認するよう案内しています。後から追加になるだけでなく、工程自体に無理がある可能性もあります。

分析をしないで工事を進めることはできますか?

目視だけで判定できない場合は分析が必要になるのが基本ですが、分析せずに「石綿あり」とみなして、法令に沿った除去方法で進める選択もあります。どちらがよいかは、工事範囲、工期、費用の考え方で変わります。

補助金は必ず使えますか?

必ずではありません。自治体に制度がない場合もあり、対象建材や上限額、申請時期も異なります。特に吹付け材系が対象中心になることがあるため、工事契約の前に自治体窓口へ確認するのがおすすめです。

この記事のまとめ・Point3つ

Point 1

アスベスト事前調査は、解体だけでなく改修や設備工事でも必要になることがあります。

戸建てでも「小さな工事だから不要」とは限りません。壁・天井・外壁・設備まわりなど、工事で触る部分があれば、着工前に建材確認が必要になる前提で進めると安全です。

Point 2

費用は一律ではなく、どこまで調べるかで変わります。

書面調査、現地調査、裏面確認、採取・分析、報告書作成のどこまで必要かで見積もりは変わります。「調査一式」だけでなく、何の費用が入っているかまで確認することが大切です。

Point 3

所有者は、資料共有と見積もり確認まで含めて段取りすると進めやすくなります。

図面や改修履歴を出せる範囲でそろえ、調査費が見積もりに入っているか、結果報告書を受け取れるかを確認しましょう。補助制度は自治体差があるため、契約前に窓口確認をしておくと安心です。

工事前の不安を減らしたい方へ

アスベスト事前調査は、見積もり前の確認がそのまま追加費用の防止につながります。解体・改修・売却を急いでいるときほど、工事条件を整理してから相談すると進み方が安定します。

「どこまで調査が必要か分からない」「解体と売却のどちらを先に考えるべきか迷う」という場合は、状況をまとめて相談しておくと動きやすくなります。

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