【イベントレポ】空き家と地域に安心を──能登・七尾で考える「スムヤドスム」の可能性

2025年7月5日、石川県七尾市で「空き家と七尾の可能性、そして街に安心をつくるスムヤドスムとは」と題したイベントが開催されました。100名の来場者を迎え盛況となった本イベントでは、能登半島地震を契機に高まる空き家の利活用ニーズに応えるべく、ジャーナリストの堀潤氏をファシリテーターに迎え、七尾市長の茶谷義隆氏、「スムヤドスムプロジェクト」フェローの上山康博氏、タレントの松本明子氏が登壇。地域の現状や可能性、そして新たな未来像について語り合いました。

また、空き家何でも相談、金融機関(のと共栄信用金庫)による資金相談、市役所の制度相談など計7つのブースが設置されました。会場内に設けられた各ブースに多くの来場者が訪れ、空き家の課題や地域再生に関する深刻な相談が数多く寄せられました。当日は合計42組から具体的な相談が寄せられ、午前10時のオープンから終了まで終始賑わいを見せ、地域の切実な課題と高いニーズ・関心を実感する場となりました。


第1部:能登だからこそできる空き家活用と、関係人口の創出

第1部では、堀潤氏の進行のもと、七尾市長の茶谷義隆氏と「スムヤドスムプロジェクト」フェローの上山康博氏がトークセッションを展開しました。

震災後に加速する空き家の流動化

七尾市では震災以前から約2,000軒の空き家が確認されており、そのうち400軒以上が「危険空き家」とされています。先祖代々の住まいを手放すことに抵抗が強かった能登地域においても、地震を契機に「不動産の流動化」が進み、新たな活用に向けた意識変化が生まれていると茶谷市長は述べました。

特に、中心市街地に点在する空き家は、地域活性化の資源として大きなポテンシャルを持つとし、「空き家バンク」などの制度を活用しながら、新たな関係人口の受け皿として期待が寄せられています。

「アルベルゴ・ディフーゾ」に学ぶ可能性

上山氏は、イタリアで成功している分散型ホテル「アルベルゴ・ディフーゾ」の仕組みに注目。町全体を一つのホテルに見立て、既存の空き家を「離れ」として活用することで、宿泊施設の不足を補うとともに、地域経済に好循環をもたらすと解説しました。

七尾市においても、観光資源と組み合わせた活用により、空き家の可能性は大きく広がると語りました。

「スムヤドスムプロジェクト」とは

「スムヤドスムプロジェクト」は、平時は2地域居住や宿泊施設として空き家を活用し、災害時には避難所・応急仮設住宅として機能させる仕組みです。所有者は収益を得られ、地域には防災拠点が整備されるという、双方にメリットのあるモデルです。

堀氏からは「2地域居住」というライフスタイルにも注目が集まり、交通インフラの充実がカギであると指摘。市長も「のと里山空港」からの羽田便の増便や、関空・福岡などとの直行便開設を国に働きかけていると述べました。


第2部:松本明子さんが語る「実家じまい」のリアル

第2部では、タレントの松本明子さんが登壇。空き家活用株式会社の和田貴充氏とのトークで、自身の実家じまいにまつわる体験談を赤裸々に語りました。

「25年間で1,800万円」かかった維持費

松本さんの実家は香川県にあり、ご両親が東京に移住した後、約25年間空き家のまま放置されていました。年間40万円近い固定資産税や保険、除草費用、さらに2回のリフォーム費用をあわせると、総額で約1,800万円がかかったといいます。

売却を決意するも「価値ゼロ」の現実

ご両親の逝去後、売却を決意するも、築25年以上の木造住宅は評価額ゼロ。土地価格もピーク時の10分の1である200万円程度に下落。更地にするにも300万円以上の解体費が必要となり、売却しても赤字という厳しい現実を突きつけられました。

奇跡の買い手と片付け地獄

空き家バンクに登録したところ、地元の70代夫婦と奇跡的にマッチングし、ようやく売却が実現。しかし「1ヶ月以内に家財をすべて撤去する」という条件付きで、約20トンの粗大ごみを自力で片付け、費用だけでも100万円以上かかったといいます。

「実家じまい」で得た3つの教訓

松本さんは以下の教訓を語りました:

  1. 「いつか」は来ない:先延ばしはトラブルのもと。動くなら“今”。
  2. 維持費は雪だるま式に膨らむ:小さな出費も25年で1,000万円超に。
  3. プロに頼るべき:自分一人で抱えず、早期に専門家へ相談を。

能登から始まる、空き家活用の希望

今回のイベントを通じて、空き家問題はもはや他人事ではなく、私たち一人ひとりに関わる“身近な課題”であることが再認識されました。

「住む宿すめプロジェクト」や「アルベルゴ・ディフーゾ」的な発想は、空き家を単なる“負動産”から、地域の未来を照らす“希望の光”へと変えていく可能性を秘めています。

空き家があるからこそできる街づくり。能登・七尾からその第一歩が、すでに始まっています。

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