賃貸か居住か?!落札した後のイメージをしっかりと
これまでの競売物件は、落札後にリノベーションを施して販売する不動産会社の占有市場でした。
ここ数年で、一般人の入札が増えたことで自身で住むための家を格安で入手するというケースも急増しています。
競売物件は綺麗な物件ばかりではありません。自分で修復ができる力がある方や不動産業者なら問題ありませんが、個人の方が居住を目的とする場合はいくつか注意すべき点があります。
ここでは、その点を見ていきましょう。
居住や賃貸の場合は基礎部分と耐震の確認をしっかり!
前項で触れた入札前に確認できる「物件の3点セット」と呼ばれる書類があります。
具体的には、「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」のことで、それぞれ以下の内容が記載されています。
3点セットの中身
【物件明細書】
競売の対象となる物件を特定するための情報や、売却条件などの情報が書かれています。
物件の所在地、大きさ、入札の基準となる売却基準価額などが分かります。
【現況調査報告書】
対象物件が現在どのような状況にあり、住んでいる人がいるとすればどんな人なのかをまとめられたものです。
【評価書】
物件周辺の環境や法的な規制について説明すると同時に、売却価額が算出された根拠を示す資料。
建物の築年数や状態などはこの資料から判断できます。
ご自身で住む場合もリノベーションを施して賃貸とする場合も、重要なのが「耐震性」です。
建物の基礎が汚破損している場合の修繕費はとても高くつき、素人が独力でできる範疇ではありません。
また、耐震基準を満たしていない場合は地震保険の加入を断れる場合も。事前内見できないからこそ、3点セット、特に評価書をしっかりと確認することが大切です。
販売する場合は、地域の需要や相場の確認がカギ
いざリノベーションが終了して、さぁ賃貸を開始と意気込んでも、借り手どころか内見も訪れないというケースも少なくありません。
主に考えられる原因は3点!
①地域の不動産業者に知られていない
地域の不動産業者へ挨拶をして認知してもらうことである程度解消することは可能です。
②賃料が相場より高い
入札をする前の段階で地域に賃貸の需要があるか、また賃料相場がどれくらいかを確認した上で、落札・リノベーションを経ても収益が見込めるかどうかを十分に検討する必要があります。
③状態が悪い
現在では賃貸といっても色々な方法があります。単純に住まいとしての賃貸が難しくても、SNSなどの投稿に使用する撮影スタジオや日替わりでレンタルするサロン、倉庫として使用してもらうレンタル収納スペースなど活用法は多いです。
住まいとしての賃貸に見合うリノベーションができなくても、どのようなスペースとして活用するかで基準は変わってくるので、諦めずに様々な方向性を検討されるとよいでしょう。
最大のデメリット!占有者とのトラブルとその対策
最後は競売物件最大のデメリットである「占有者」とのトラブル。この項目では具体的な対策を解説していきます。
強制執行は大変?!
競売物件は差し押さえ物件。債務者がお金を払えないため「落札=権利の購入」をしても、いざ物件を訪れてみたら占有者から「誰だお前!ここは俺の家だ!」等と立ち退きを拒否されることも。
個人で対応できない時に使用したいのが「強制執行」。
執行官が強制的に建物の明け渡しを行ってくれる頼みの綱ではありますが・・・。
強制執行には煩雑な手続きが必要になります。
引渡命令の申し立て
↓
発令
↓
「不動産の引渡又は明け渡しの強制執行」の申し立て
↓
強制執行
↓
保管
↓
不動産の公売・処分
なお、強制執行で必要となった手続き費用や、人件費、荷物運搬用のトラック費用はすべて落札者負担になります。
知っておきたい社会資源
繰り返しにはなりますが、競売物件の占有者はお金を払うことができなくて差し押さえられています。
質の悪い占有者には強制執行しかないというケースもありますが、後味が悪いもの。
日本の社会保障制度はある程度充実していますので、占有者の話を聞いたうえで地域の社会資源に頼るのも解決法の1つです。
この方法であれば、占有者自身のその後もケアすることができるので、落札者も安心して物件を手にすることができます。
①地域包括支援センター
介護保険法の下で設置が義務づけられている施設です。高齢者や障がい者はもちろんのこと、生活保護やひとり親など様々なケースの初期対応も行ってくれます。
また、地域包括支援センターが対応するケースではない場合は、地域の別の社会資源に繋げてくれるので、最初にコンタクトを取る社会資源として覚えておきたいところです。
②社会福祉協議会
社会福祉法の下で設置されている社会福祉法人です。民間の団体ではありますが、実情は半官半民のようなもので必要に応じて他の社会資源と連携を取って対応してくれたり、市区町村の橋渡しにもなります。
社会福祉協議会は地域によって活発に活動している団体と、そうでもない団体がありますが、いずれにしろ地域の社会問題解決の陣頭指揮を執る立場にあるので、福祉的問題については市区町村役場に頼るよりも力になってくれます。