あなたの所有するその家 空き家です
空き家の多くは、所有者が意識せずに空き家化しています。その中から具体的なものを紹介いたします。
◎自宅が空き家になってしまう場合
【最期は自宅で迎えたいという思い】
これは、一番多い昨今の空き家理由なのですが、家の所有者が老人ホームに入居したり、長期入院となったりしたときに、「最後は自宅で迎えたい」「外出時に自宅で過ごしたい」などと考え家を放置したままにするのです。
しかし、実際老人ホームに入居すると自宅へ戻ることは減り、結局ただ家を放置した状態になってしまいます。
家は1年以上住んでいない場合空き家として認定されますので、自分としては空き家の認識はなくとも空き家となってしまうのです。
【思い出が詰まっている家を売ることができない】
老人ホームなどに入居がきまり、死後のことを考えれば自宅を売却などして整理しておいたほうがいいと思う反面、どうしても家具などの処分や仏壇の処分に踏み切れない。
いつか子どもや孫が相続して住んでくれるかもしれないし、なによりも家には想い出がつまっていることなどから、売却に踏み切れず空き家となってしまうこともあります。
【認知症になっているなどして判断ができない】
所有者の認知症が発症し介護施設に入居したものの、家の所有者は認知症になった本人のままになっているため売却もできず、家族や親せきが途方にくれてしまうことも。
なぜなら、いくら親族とはいえ勝手に認知症の親に代わって、子どもや親せきが所有者の代理となって売却することは違法とされているからです。
認知症の際には、裁判所できちんとした手続きをすれば代理人でも売却が可能となりますので、詳しくは「親が認知症になってしまった場合」をご覧ください。
◎実家が空き家になってしまう場合
【どこに相談すれば良いか分からない】
実家が空き家になったものの、実家があるのは相続人が住んでいる場所よりも遠方のため、どこに相談すればいいのか分からない場合も。
空き家を売却するのであれば、地域の不動産屋や自治体の空き家バンクに相談をすればいいのですが、まだ売却するのかそれとも維持するのかの考えが決定していない状況ですと、相談先に悩んでしまう場合も。
【兄弟間で空き家の処分についてもめている】
兄弟で家を相続したものの、家の処分方法についてもめる場合があります。
一方は、売却して得たお金を二等分しようとし、一方はせっかく家があるのだからどちらかが住めばいいと思い、いつまでも話し合いが平行線のまま進まないのです。
片方が家に住むのならば、住まない兄弟に家を売却した時の半分にあたる相当額を現金で払えば済む話なのですが、相続した財産の中に家の売却金額半額相当のものがなければ、支払うことはむずかしいでしょう。
【実家を活用することに強い罪悪感がある】
相続した実家を持て余しているものの、売ってしまうと親との想い出まで切り捨てて売却してしまったように思い、その罪悪感から売却できない人もいます。
また、実家に仏壇などがある場合は、仏壇を撤去や位牌などを処分することに罪悪感を覚え手が付けられないことも。
位牌や仏壇などは、お墓のあるお寺で「魂抜き」と呼ばれる「閉眼供養」と先祖供養をすれば処分が可能ですが、そうは言っても気分のいいものではありません。
筆者も親が亡くなり実家を処分する際に、祖父母の位牌と仏壇がありましたので、親が亡くなった際に一緒に魂抜きをしてもらい仏壇と位牌を処分しましたが、少し心が痛みました。
【利活用が思いつかない、考えるのが面倒】
せっかく実家を相続しても、家具などの残置物があり面倒で手を付けられず考えるのを後回しにした結果、空き家となってしまうケースもあります。
さらには、財産として家を引き継いだものの、活用方法を思いつかない…ということも。
親が亡くなった後というのは、病院などへの支払い、葬式の手配、銀行の口座閉鎖などの手続きや財産分与など……やることが多くあります。とてもじゃありませんが、相続した実家の利用法まで手が回らず後回しにした結果、実家が空き家化してしまうのです。
空き家問題を解決する方法
◎老人ホームに親が入居したら家をどうするか
≪いつかは帰りたい…と思うなら管理が必要≫
老人ホームに入居をした場合、一時帰宅場所として家を利用するのであれば、空き家の管理をしましょう。
郵便箱チェック、家の通風、通水、庭の手入れなどをすることで空き家の管理は可能です。
自分で管理が難しい場合は、空き家管理会社に依頼すると良いでしょう。管理方法は金額によってさまざまで、100円からプランがあります。多くの方が利用しているのは、1万円前後のプランのようです。
≪マンション空き家も注意が必要≫
親の持ち家がマンションの場合、マンションの室内管理だけでなく管理費や修繕積立金の支払いがどのようになっているかのチェックも忘れずに。
急な入院の場合は、管理費の引き落とし口座に十分な金額が入っておらず引き落としなかったことが原因で、管理費などを滞納してしまう場合もあります。今一度、管理費や修繕積立金がどこから引き落としなのか、確認をしましょう。
◎家を売りたくない場合
≪管理サービスを利用して維持する≫
空き家を維持するのであれば、管理サービスの利用がおすすめです。
ご自分で空き家管理ができる場合は必要ありませんが、空き家が遠方にある場合などは管理サービスを利用すると良いでしょう。
管理サービスでは、以下の項目を管理してもらえると安心です。
- 庭木の確認
- 外観チェック
- 室内の空気の入れ替え、通水、簡易清掃
- 雨漏り、カビチェック
- 郵便受け確認
管理サービスの料金としては、上記5項目で1万円前後の管理サービス会社が多数あります。
他にも写真付きレポートを上げてくれる管理会社などもありますので、ご自分の希望に合ったプランを探してみてください。
≪貸し出すことも一つの選択≫
所有している空き家に住む予定が無いのであれば、貸し出すこともひとつの手です。
今は住まないけれど、5年後には住むかもしれない…などの場合には、「定期借家契約」で貸出期間を決めて貸し出すとよいでしょう。
賃貸に出す場合には、空き家のある土地の不動産屋に仲介を頼むことをおすすめします。
◎親が認知症になってしまった場合
≪成年後見制度を利用する≫
成年後見制度には、二つの制度があります。任意後見制度と法定後見制度です。
任意後見制度は、本人の意識がまだ確かなうちに任意後見人を選び公正証書で任意後見契約を結んでおきます。ただし、認知症の場合は法定後見制度となります。
この場合は、家族などからの申し立てにより、家庭裁判所によって選任された後見人等が本人に代わって財産や権利を守り、本人を法的に支援します。
親が認知症になった場合には、法定後見人を立てることで実家の売却などをすすめることが可能です。
◎兄弟で空き家の処分にもめた場合
≪代償相続を利用する≫
実家を兄弟のうち一人が相続することになった場合、他の相続人には代償金をはらうことによって、遺産分割を清算します。
ただし、代償相続しても代償金が支払えない場合はこの方法は利用できませんし、何よりも相続に関わる当事者全員が合意していないと利用ができません。
≪ハウスリースバックを利用する≫
代償相続で代償金を用意するのが難しい場合、家を現金化する方法としてハウスリースバックがあります。
実家を不動産業者に売却しお金を受け取り、その後、不動産業者から実家をリースして住み続けることができるというものです。
家に住み続けながら現金化できますので、代償金の支払いができます。
ただ、そうはいってもリースするお金を支払うことになること、買い戻しのためにも金額がかかることなどから、通常の代償相続とは異なります。
あくまでも、家に住むことを目的とした空き家の処分方法です。