二拠点生活で湧いた意思が古民家を再生。『ハチドリの一滴』な場づくりとは

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むしろ「準備はいらない」、“森流”の一歩踏み出し方

 仕事のことを考えながらエリアを絞り、予算を考えながら物件を探し…。田舎暮らしを前に考えることは多い。しかし「そういうことから考え出すと、大変さだけが先に立ち、あきらめてしまったり、最終的にはうまくいかないことが多い」という。

 それよりも、まずは「行ってみて場所を見つける。そして、週末とか夏休みとか、行けるときに何度も行ってみる。そうすると、現地にも少しずつ人とのつながりが生まれ、それらは次第に広がっていきます」

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空き家だった古民家カフェを“夢語る場”に

古民家サロン「はちどりの森」

古民家に不動産カフェ、『はちどりの森』を開業

 「二拠点暮らしを実現する滋賀の古民家がサロン『はちどりの森』として動き始めました。まずは母屋をサロンとしてオープン。そして納屋を古民家カフェにしていきたいと思います。カフェにすることでいろいろな人が集う場にできます。

 そこでは集う人たちと、二拠点暮らしも含め古民家や空き家の再生、利用についても相談し合えたらいいと思います。“不動産カフェ”のような感じでしょうかね。それはいわば“夢を語る場”です。そしてその結果、空き家問題などの社会課題が解決し、社会や世界がかわっていけばいいな」

 17世紀末に人と情報の集まる英ロンドンのカフェで行われていた保険の取引が、その後大きく育ち、やがては保険市場そのものへと発展したように、カフェは大きな可能性を秘めている。これまでの経験からも、自身は“空き家の再生”との相性がいいという森さん。千葉の田舎で古民家食堂を始めたころは「社会課題の解決などに興味を持ち、世界を変えたいと思っていました」。その気持ちは今も変わらない。が、取り組み方は大きく変わった。

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社会課題の解決に興味を持ち、世界を変えたい

 36歳の時に離婚して、生き方に迷っていた時「ハチドリのひとしずく」という本に出会った森さん。当時を振り返ると、みんなに認められる特別なことをしたいと思っていたのに、何もできない自分に無力さを感じていたとのこと。「『はちどりのひとしずく』を読んで、大きな衝撃を受けました。それからですね。いまのような考え方、取り組み方になったのは」。 そして、いろいろ勉強しようと思いパーマカルチャーを学んだことで決心がついた。

 「自分ができることをやっていこう。それが必ず世界を変える方法になると思えるようになりました」

 人と自然が共存する社会をどうつくるのか。そのための手法とされるパーマカルチャーは、パーマネント(永続性)、農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)を組み合わせた造語で、“それぞれ”が持続可能な社会システムをデザインしていく必要性を説いている。 この“それぞれ”が大事だ。

<次ページ:森さんの生き方、施設名称にもなっている民話とは>

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この記事を書いた人

フジサンケイビジネスアイ編集委員。1990年に日本工業新聞社(フジサンケイビジネスアイ)入社。以来、日本工業新聞や産経新聞、フジサンケイビジネスアイなどで経済、産業報道に携わってきた。

コーポレート・ガバナンス(企業統治)など企業経営関連、エネルギーや食料問題などの危機管理などが得意分野。

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