二拠点生活で湧いた意思が古民家を再生。『ハチドリの一滴』な場づくりとは

【インタビュー】古民家サロン「はちどりの森」経営:森直美さん

 好きなこと、得意なことを仕事にして楽しく生活できたら…。誰もがそういった理想を抱きつつ、夢の中の話にとどめがちだ。しかし、考え方を変えることで、意外にもそうした夢は叶う。 滋賀県で古民家サロン「はちどりの森」を経営する森直美さんは、都会と田舎に居を構える“二拠点生活”に憧れ、それを社会課題にもなっている“空き家の再生”に取り組むことで実現した。 “蘇った空き家”は人を引き寄せ、新たな社会課題の解決を通じて“世界を変える”取り組みへの模索が続く。

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目次

いいとこ取りの二拠点生活、ルーツと未来への意志

九十九里の古民家にて

 のどかな田園風景が広がる愛知の郊外で子供時代を過ごしたという森さん。その後は東京に出て都会での生活も謳歌した。都会の良さもよく知っている。高校卒業後は都会に住みながらも、冬場はスキー場でアルバイトをしながら雪国で生活した。そういう意味では、20代から二拠点暮らしだったともいえる。それが自分には合っていた。次第にそのことがわかってきた。ある時、田舎暮らしをしようと千葉の九十九里で古民家を借り、食堂を開いた。その時にも改めて田舎の良さを感じた。

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人が集まる場所をつくりたいという意思

 「人がたくさん集まるのが好きなんですよ。そういう場所がつくりたい。だから食堂でした。人が集まるためには場所が要ります。田舎のほうが場所も広く使えるし、自分のやりたいことができると実感しました」

 加えて、散歩や野山の散策が好きなこともあり、「近所にそういうスポットがたくさんある田舎は自分には向いている」という。かといって都会の生活が嫌いなわけでもない。現在は普段、兵庫県尼崎市でご主人と生活している。

 「都会ならではのイベントに参加できるなど、都会にもいいところがたくさんあります。わたしがいま始めている“二拠点生活”は、いわばこの都会と田舎のいいとこ取りをする暮らし方ですね」

2018年ごろ、大阪心斎橋の百貨店で行われたサプールイベントにて

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まずは自分が楽しむことで、二拠点生活ははじまる

 これまでも古民家を利用した田舎での拠点づくりに取り組んできた。不動産会社で働いたこともある。その経験の中で、古民家の置かれている状況が少し理解できた。

 「古民家を探していて思うのですが、賃貸の物件はほとんど見つかりませんね。売り物件が少しあるぐらいです。でも、使用していない古民家はたくさんあります。それらの古民家、空き家を再生したい…」。そんな森さんの意志に共感した友人から情報が入る。「こんな物件があるのだが…」

はちどりカフェ準備中

 海の近くの理想的な古民家。築55年でも手入れの行き届いたとてもきれいな物件。こうして始まる空き家の再生。掃除をして、設備を整えて食堂を開れば、訪れた客に興味を持たれる。大体聞かれることは決まっていた。

 「どうやって物件を探したの?」「どうやってお客さんを集めてるの?」。その答えは非常にシンプル。「自分が好きなことをする。自分が楽しむ。自分が楽しめば、ほかの人も興味を持って集まってきます」

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この記事を書いた人

フジサンケイビジネスアイ編集委員。1990年に日本工業新聞社(フジサンケイビジネスアイ)入社。以来、日本工業新聞や産経新聞、フジサンケイビジネスアイなどで経済、産業報道に携わってきた。

コーポレート・ガバナンス(企業統治)など企業経営関連、エネルギーや食料問題などの危機管理などが得意分野。

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