空き家を相続したものの、活用する予定がないのであれば、空き家を処分するべきです。
空き家は所有していても、管理や固定資産税などに費用がかかり積み重なることで負担となってきます。
もちろん、いずれ住む予定があったり、賃貸やNPO団体などに貸し出したり、なにか事業を始めるのであれば、処分を思いとどまった方がいいでしょう。
しかし、その予定が無いのであれば処分しましょう。
この記事では、売れる空き家の処分方法と売れない空き家の処分方法をご紹介します。
なぜ空き家は処分するべきなのか
空き家を管理するには費用がかかる
空き家を相続した際に、なんとなく心の整理ができず残してしまう人や、「物置として使っているから」と、空き家をそのまま維持する人がいます。
もちろん自分で週1日~2日ほど空き家に通い、管理できる場合は管理費用がかかりません。
しかし、多くの人は空き家から離れた場所に住んでいるため、1ヶ月1万円ほどの管理費用をかけたり、それ以外にも管理するために必要な水道料金と電気料金を支払い、さらには万が一の火災や風災にそなえ火災保険も支払う必要があります。
建物の専有面積にもよりますが火災保険を1ヶ月4000円前後と考えますと、空き家を管理して維持するためには、約2万円もの経費がかかるのです。
それ以外にも、毎年固定資産税((土地評価額×1.4)÷6+家屋評価額×1.4を試算したもの)がかかります。
空き家を放置しても費用がかかる
誰も住んでいない家に管理費をかけるのは惜しい気がして、数年くらいは大丈夫だろうとそのまま放置してしまったり、なんとなく面倒で空き家の処理を後回してしまったりした結果、数年間空き家の管理を何もせずに放置してしまう場合があります。
管理費もかけず、水道も電気も止めてしまったので水道光熱費もかかりません。
一見しますと、固定資産税以外には費用もかけずに空き家を維持することができ、お得なように思いますが、管理していない空き家は廃墟化するのです。
空気の対流が止まった家のなかでは湿気がたまりカビが繁殖し、木材が傷み壁紙は剥がれます。
さらに放置した庭は雑草で埋め尽くされ害獣や害虫の繁殖地となり、廃墟となった家には不法侵入やごみの不法投棄などされる場合も。
このような空き家は、2015年5月に全面施行された「空家等対策特別措置法」によって、自治体から特定空家と認定され、固定資産税の軽減措置がなくなり、最悪の場合行政から強制撤去されることがあります。
その場合、撤去費用は所有者へと請求されるのです。
また台風や隣家の火災などで家が倒壊した際、これもまた撤去が必要となるため、火災保険などに入っていない場合には、撤去費用は自費となります。
空き家は所有しているかぎり、必ず家を維持するための経費がかかるのです。
経費をかけてまで維持する必要があるのかということを、今一度考えてみると良いでしょう。
空き家を処分するということ
空き家は粗大ゴミのように、いらないからといって捨てることはできません。
必ず売るなど、他人に法律的な引き渡しをしなければならないのです。
そのため、空き家を処分するためにはまず引き取り手を探さなければならず、非常に時間がかかります。
空き家を処分するのであれば、経費をかけないためにも一刻も早い決断が必要なのです。
空き家を処分する際にかかる費用
空き家の売却には、そのまま古屋を残したまま売却する方法と、建物を取り壊して更地にしてから売却する方法があります。
それぞれの場合に、必要な費用についてお話しします。
空き家をそのまま売却処分する場合
≪家財の処分費用≫
建物付きで売却する場合、家の中にある家具などは所有者が処分しなければなりません。
費用は3LDKの家で17万円~50万円ほど。
ネット上で探した業者の場合、悪徳業者なども多く、現地に来てから追加料金が発生することもあるため、業者選びは慎重さが必要です。
自治体などに問い合わせ、適切な業者を選ぶようにしましょう。
ゴミを不法投棄している業者などもあるため、ネットでの安易な業者選定はおすすめできません。
≪ハウスクリーニング費用≫
空き家の価値を上げるためには、ハウスクリーニングが必要です。
家自体が古くても、家の中がきれいであれば買い手が付く場合もあります。
ハウスクリーニングの費用は、家具などを撤去した後であれば、4LDK位の広さで5万円程です。
壁紙などを貼り替える必要がある場合や修繕箇所がある場合は、別途内装業者や大工などに依頼する必要があります。
≪不動産業者への査定料と仲介手数料≫
空き家の売却を考える場合は、まず近場の不動産屋に査定をお願いしましょう。
不動産業者の場合、査定では料金請求ができません。ですので査定は無料でしてもらうことが可能です。
ただし、不動産売買の仲介手数料は以下の金額がかかります。
(速算式)
200万円以下 | 取引物件価格(税抜き)×5%以内 |
200万円超400万円以下 | 取引物件価格(税抜き)×4%+2万円以内 |
400万円超 | 取引物件価格(税抜き)×3%+6万円以内 |
上記の金額にプラス消費税となります。
不動産業者によっては、仲介手数料を半額や無料にする業者などもありますが、仲介手数料は安ければ良いというものではありません。
きちんと売却相手を見つけてもらうためにも、金額で選ぶのではなく広告や販売活動を確実にしてくれる不動産業者を選びましょう。
空き家を更地にして売却処分する場合
≪取り壊し解体費用≫
空き家の解体費用は、1坪あたり木造であれば4~5万円程、鉄骨造りの場合は1坪6~7万円程、鉄筋コンクリート造りの場合は1坪7~8万円程かかります。(アスベストや、ブロック塀、浄化槽などがある場合は、別途付帯工事費用)
もちろん家を取り壊す前には、家財の処分をする必要がありますので、「空き家をそのまま売却処分する場合」で述べた処分費用も必要です。
家財などは一般廃棄物となるため、取り壊し業者では搬出できず、最悪家財がある状態では取り壊し工事に取り掛かることができず、中止となってしまうことも。
また、解体工事が終わった際には、1か月以内に滅失登記を行って下さい。こちらの費用は4~5万円ほどかかります。
滅失登記をせずに1か月以上放置しておきますと、行政法規上の義務違反となり10万円以下の過料が課せられます。
≪解体業者の注意点≫
安い解体金額を提示してくる業者の場合、廃棄物処理費が別途として見積もられていることがあります。
解体業者に見積もりをもらったら、基本的な工事のための費用以外に廃棄物処理費用や家屋以外の解体費用、撤去費用(倉庫などがある場合)が入っているか確認しましょう。
また解体業者も玉石混交なため、自分で無理に探したりせず、売却の仲介をお願いしている不動産業者などに紹介してもらうのが良い業者に依頼できる近道です。
≪注意したい固定資産税≫
更地にした際に、注意したいのが固定資産税です。
固定資産税は建物を取り壊した場合、土地にかかる固定資産税は建物があった時の6倍となります。
また、固定資産税は1月1日の状態で税額が決定されます。取り壊しする際の時期などにも気をつけましょう。
1月1日の時点で建物があれば、その年の固定資産税は建物がある場合と同じく軽減措置が適応されます。
空き家の場合、建物の価値が低い場合が多く、建物を撤去して建物にかかる固定資産税が無くなったとしても、土地にかかる固定資産税は6倍となるため、固定資産税の総額が上がってしまうのです。
その場合は、1月1日以降に取り壊すようにしますと、1年間だけでも固定資産税の総額が上がらないですみます。
≪不動産業者への仲介手数料≫
更地にして売却する場合にも、不動産業者への仲介手数料がかかります。
費用については、「空き家をそのまま売却処分する場合」で紹介しました速算式をご覧ください。
その他空き家売却に必要なもの
≪インスペクション費用≫
更地にして売り出す場合は関係ありませんが、家が土地に建っている状態で売却する場合、インスペクション費用が必要になる場合もあります。
2020年4月からは民法が改正され、売り主に契約不適合責任が課せられることとなりました。
ですので、建物の状況を正確に把握しておく必要があるのです。
そのために、「インスペクション(建物状況調査)」をしておくことで、買い主とのトラブルを避けることができます。
インスペクション費用はほとんどの場合が10万円以下で、建物の大きさによって金額が変わります。インスペクターも不動産業者に紹介してもうのが良いでしょう。
≪境界の確定測量費≫
空き家を売却する際に、確認したいのが境界杭です。
この境界杭が無い場合、売却する際の正確な土地の所有範囲がわかりません。
お隣との境界線が分からない場合は、境界の確定測量をする必要があります。
民民立ち合いの場合(お隣が民間の場合)は30万円~50万円程。官民立ち合いの場合(お隣が役所などの所有である場合)は60万円~80万円程が相場であると言われていますが、測量業者によって費用はさまざまなので、見積もりをとるための目安としてご覧ください。
また解体作業の際に、誤って境界杭を抜かれてしまう場合があるため、解体工事前に一度境界杭を確認し、写真などに納めておくことをおすすめします。
≪売買契約書につける印紙代≫
空き家売却の際に、その他かかる費用として、売買契約書につける印紙代などもあります。
契約金額によって、印紙代は変わりますが令和4年3月31日までは10万円を超える不動産の契約の場合軽減措置があるため、本来の税率額二分の一の金額となります。
≪瑕疵担保保険付保費用≫
瑕疵担保保険は、必ずかかる費用ではありませんが、瑕疵担保保険を付けることによって売却の可能性があがります。
ただし、瑕疵担保保険を付けるには家が「耐震基準を満たしていること」と「インスペクションに合格していること」の2つの要件を満たすことが必要です。
「耐震基準を満たしていること」とは、昭和56年(1981年)6月1日以降の建物であること、もしくは耐震工事を施していることなどがあげられます。
瑕疵担保保険の保険料は、延べ床面積100㎡の戸建てで、保証期間1年間・保証金額1000万円で4.1万円~4.4万円程度が相場となっています。
詳しくは国土交通省の「既存住宅売買瑕疵保険(個人間売買タイプ、仲介事業者保証型)」ページをご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/jigyousya/about_business_guarantee_type.html
ローンが残っている空き家の場合
≪抵当権抹消費用≫
まれに空き家となる家に、まだローンが残っている場合があります。その際にローンを完済後に、抵当権抹消費用も必要となります。
いくらローンを完済しても、抵当権抹消登録をしないと売却することはできません。
抵当権抹消費用の内訳は以下です。
1.登録免許税(不動産の筆数×1000円)
不動産の筆数×1000円で計算します(記載した不動産の筆数とは、登記の際の土地の数え方です。「固定資産税の課税明細書」には土地一筆ごとに地番がわりふられており、この地番を数えると所有している土地が何筆なのかがわかります)
2.司法書士報酬
自分で抵当権抹消登録をすればかかりません。依頼費用は5000円~10000円ほどが相場となります。
3.事前調査費用
登記内容を調べるための費用です。
- 登記情報サービスにかかる費用が不動産1軒につき335円
- 全部事項証明書の郵送請求で600円(オンライン請求の場合は500円)
- 登記事項要約書が450円
4.事後謄本の取得費用
抵当権が抹消されているか確認をするために、登記簿謄本の取得しましょう。登記簿謄本は1筆600円(オンライン請求の場合は500円)となります。