先月、これからの不動産の住居とは様々な形態がつくられていくというお話をしました。
今回は、その中で民泊に焦点を当ててみようと思います。
皆さんは民泊はご存知でしょうか?
筆者がアドレスホッパーをしていくうえで、よく民泊を利用しています。
民泊とは、住宅(戸建住宅やマンションなどの共同住宅等)の全部又は一部を活用して、旅行者等に宿泊サービスを提供すること「民泊」と呼ぶことが一般的です。
これまでのホテルや旅館とは、旅行者の宿泊用として建てられた施設ではなく一般の住宅に泊まるというところが一番の違いです。
一般の住宅のため、その土地ならではの文化や生活を味わえるというのが特徴です。
元々は、自宅や別荘などの空き部屋・空き家を観光客に貸すというところから始まっています。
ホテルや旅館と異なり宿泊のために作り込まれていないという点が、短期間でも「現地の人のように生活できる」という特性を作ってきました。
今でこそ個性的なホテルや旅館が増えましたが、民泊が日本に浸透し始めた当時はグレードによる違いはあるものの個性的なホテルや旅館は多くはありませんでした。
民泊は、「現地での体験」をコンテンツにすることで利用者の人気を獲得してきたのです。
民泊を加熱させたのは、Airbnbのサービス開始になります。
Airbnbという集客のプラットフォームができたことにより、投資を目的とした貸主が急増しました。
初期投資額が少なく参入が容易で、競合も少なかったためエリアさえ間違わなければ従来の不動産投資よりも高い利回りで回せたことが要因でしょう。
空き家・廃屋を利用した民泊事業も各地で行われてきました。
2018年に住宅宿泊事業法が施行され、一時的に物件数は減少しましたがそこから増加の一途を辿ってきました。
【取扱物件数の推移】
令和元 年9月末時点:96,648 件 平成 31 年3月末時点 :71,289 件
平成 30 年9月末時点:41,604 件 平成 30 年6月 15 日時点:24,938 件
出典:観光庁
新型コロナウイルスによる打撃
ここ数年の民泊物件の増加はインバウンド需要が狙いでした。
インバウンド需要とは、外国人観光客の訪日旅行需要のことです。
東京オリンピックに向けて、政府は観光立国を目指しインバウンド促進政策を行ってきました。
現在の日本では、少子高齢化や景気の低迷など国内消費の拡大が難しい状況です。
国内消費が難しいのであれば、外に目を向けるしかありません。観光に注力し、インバウンド客を呼び込んで消費を促そうと考えられました。
この効果もあり、2006年は年間733万だった外国人観光客が2019年には3188万人まで増加しています。
また、インバウンド消費は2016年の3兆7,476億円から2019年には4兆8,135億円と、順調に数字を伸ばしてきました。
当然、外国人観光客が増えるということは宿泊客も増加します。
近年では、外国人観光客をターゲットしていることが明確なホテルや旅館、そして民泊が次々と作られていきました。
そんな折発生した新型コロナウイルスの流行で、観光客の渡航制限が設けられ、インバウンド需要をターゲットにしていた宿泊業界は大きな影響を受けています。
民泊も例外ではなく、国内の宿泊客に目を向けなければならなくなりました。
新型コロナウイルスより生まれた需要とは?
新型コロナウイルスから新たに生み出された需要といえば、リモートワークです。
会社に出勤せず、自宅で仕事を行う方が増えたのではないでしょうか。
しかし、家族がいるなかでは仕事が捗らないという方もいます。
そのような方がリモートワーク用の部屋を借りるようになりました。
また、新型コロナウイルスを家族に感染させたくないという理由から一時的に一人暮らしをするという需要も生まれています。
こうした需要は、キッチンや洗濯機など生活家電が充実している民泊の方がホテルや旅館よりも適しています。
新型コロナウイルスによる影響がいつまで続くのか見通しがつかない現在の状況では、短期でも中長期でも対応が可能な民泊が選ばれやすいのだと感じます。
このときに必要なのは、このような需要に対して、短期での滞在である宿泊というソリューションと、中長期での滞在となる賃貸借というソリューションをゲストに応じして臨機応変に使い分けれることだと思います。
状況が変化すれば、需要も変化します。
どのような需要が発生していて、その需要に応じれる体制を作れることが求められています。
次回は、民泊が拡大した理由を考察してみます。