【安心して相談してもらうために、民間事業者と提携したワンストップの窓口を開設】神戸市都市局空家空地活用課の事例

【安心して相談してもらうために、民間事業者と提携したワンストップの窓口を開設】神戸市都市局空家活用課の事例_空き家問題を官民連携で解決へ

増え続ける空き家に頭を抱えている自治体は多いだろう。

その対策の参考になりそうなのが神戸市の取り組みだ。

市が運営するすまいの総合窓口「すまいるネット」の中に「空き家等活用相談窓口」を開設。

多くの市民が空き家に関する相談を寄せている。

担当している都市局空家空地活用課の川上勇樹さんと長野延子さんに話を聞いた。

※編集部注:2021年4月1日より、「都市局 空家空地活用課」は、

 「建築住宅局政策課」に統合されました。

目次

相談から活用提案、成約までワンストップで!

──具体的にはどのような取り組みをおこなっているのでしょうか。

川上さん:はい。使われていない良質な空き家を含めた中古住宅ストックを市場に流通させるため、不動産事業者が「空き家の専門相談員」として市民の相談に乗っています。

さらに相談のあった物件に対して、複数の「支援事業者」から無償で活用方法等の提案をしています。

──相談員と支援事業者の数はどれくらいですか?

長野さん:相談員は(一社)兵庫県宅地建物取引業協会から8名、(公社)全日本不動産協会兵庫県本部から4名の計12名です。

この方々は第三者的な立場で、「すまいるネット」の職員として業務にあたっています。支援事業者は1相談あたり平均3社です。

それぞれ空き家を内見し、査定などの提案をしていただき、最終的な決断は相談者が行うことで公平性を担保しています。ただし相談者によっては「1社でいい」という場合もあります。

たくさんの事業者に来てほしくないという考えのようです。

市民が安心して相談できる窓口を

──そもそもどのようなきっかけでこの取り組みを?

川上さん:2014年に不動産関係団体等との市民・職員協働による「空き家ストックを活用した中古住宅市場活性化プロジェクトチーム」で課題を整理した結果、今後の空き家活用に向けた支援の方向性が示されました。

その時に出た方向性は具体的に次の4つです。

  1. 安心できる窓口をもうけてワンストップで。
  2. インスペクション等を普及させて空き家への不安を解消。
  3. 情報発信やイベントで空き家活用の機運を活性化。
  4. 空き家を掘り起こして市場に誘導するとともに適正な管理を促進。

このうちの〈1〉の部分を具現化したのが今回の取り組みですね。

そして、2015年11月30日に、すまいの総合窓口「すまいるネット」の中に「空き家等活用相談窓口」が開設されました。

固定資産税納税通知書にチラシを同封して利用を促進

──利用者を増やすために行ったことはありますか?

長野さん:空き家所有者にピンポイントでDMを送るのは費用と手間がかかり過ぎるので、年に1回土地建物所有者に送られる固定資産税納税通知書約59万通にチラシを同封し、利用を促しています。

かなり効果があると感じており、他の都市も同様の取り組みをおこなっています。

さらにSNSなどインターネットを活用した広報にも取り組んでおり、効果をあげています。

≪インターネットを活用した広報≫

──年間でどれくらいの問い合わせや相談がありますか?

長野さん:令和元年度で、電話相談含め約1,000件ですね。

媒体が判明している600件のうち100件が固定資産税納税通知書に同封したチラシです。

その他、市役所での案内が100件、市の広報紙が100件、ネットが100件と、様々な形で市民の方が知って下さっています。

川上さん:そのうち約160件が専門相談員が相談対応しています。

実際に売買等が成約したのは昨年度で69件ですが、1年で解決するとは限らず、2〜3年かけてようやく成約したというケースも含まれています。

累計では約230件となっています。

──安心して相談してもらうために、何かおこなっていることはありますか?

長野さん:そうですね。引け目があるせいか、あまり他人に知られたくないという人が多いように思いますね。内容も窓口ではあまり話されなかったり……。

川上さん:事業者から後々営業などされるんじゃないかと不安に思っている人もいらっしゃるようなので、事業者からは直接相談者へ連絡しないようにしています。

オンライン相談を充実させていきたい

──今後はどのような取り組みをおこなっていきたいですか?

川上さん:遠方にお住いの空き家所有者向けに、オンライン相談を充実させていきたいですね。

これまでに、例えば関東在住の相談者もいたりするので、空き家と現在の住居が離れているという方はけっこういるんです。

そうした方の負担を少しでも減らしたいです。

長野さん:専門相談員との対面面談のため、最低でも1度は神戸市に来ていただかないといけないのですが、それが済んでいる方については、2回目以降の相談を試験的にオンラインですでにおこなっています。

──オンラインならより気軽に相談できますよね。

まずは気軽に相談してください!

──最後に、読者の方へメッセージをどうぞ

長野さん:相続などでご自身がしばらく住む予定のない空き家を所有することになったり、持ち主の方が老人ホームに入られることで空き家になってしまうと親族の方も対処に困ってしまうと思います。

そんなときは、ぜひ「すまいるネット」に相談してください。

電話での相談もできますので、まずはお気軽にご利用ください!

──今後の取り組みを期待しています。本日はどうもありがとうございました。

編集後記

空き家は個人情報の塊。

空き家にさせてしまっている引け目を感じている所有者も多いはず。

そうした不安を〈安心〉に変えることが、空き家対策の第一歩なのだと感じた。

また現在の住居が遠く離れているというケースも多く、オンラインでの相談・提案が期待される。

物件の「内見」という課題はあるが、空き家活用のスピードは上がるだろう。

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この記事を書いた人

日刊ゲンダイやおとなの週末などで執筆するフリーライター・開運研究家のいからしひろき。
テレビやウェブの仕事もしています。得意なテーマは旅、歴史、酒、グルメ、健康など。

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