「空き家」を所有している間ずっと続く「管理維持費用」をシミュレーションしてみよう!
●「空き家」の維持に必要な費用
「空き家」となった「実家」をそのままに維持するために必要な費用は以下の6つが挙げられます。
①固定資産税(数万円~数十万円/年) ②都市計画税 (数万円~数十万円/年)③水道光熱費 (数千円~数万円/年)④火災・地震保険 (数万円~数十万円/年)⑤修繕費 (業者へ依頼する毎に数万円~数百万円)⑥庭庭木剪定(剪定1回につき数万円) 一部引用:NPO法人 空き家・空き地管理センター「空き家の維持費用」より |
所有する「空き家」の面積や土地や建物の固定資産税評価額によっても違いますが、例えば面積が100平米、土地の固定資産税評価額が1,000万円、建物の固定資産税評価額が300万円の「空き家」でシミュレーションしてみましょう。
①土地の固定資産税=1,000万円×1/6×1.4%=約2.3万円
建物の固定資産税=300万円×1.4%=4.2万円
②土地の都市計画税=1,000万円×1/3×0.3%=約1万円
建物の都市計画税=300万円×0.3%=9千円
③水道光熱費=水道費年間1.8万円+電気料金年間約1万円
(基本料金のみで試算、水道費は一般用メータ口径25mm東京水道局基準、電気料金は東京電力30Aを基準として算出)
④火災・地震保険(放火や頻発する地震に備えて必要であるが、「空き家」を補償してくれる保険は多くはないので注意が必要)=年間10万円前後
※補償内容、築年数によって大幅に増減する可能性有り
⑤修繕費=大きな破損がみられた場合等、イレギュラーに発生
⑥剪定費=約5万円(年に2回お願いする場合)※庭の形状や広さによって増減
イレギュラーに発生する修繕費を除いた年間の「空き家」維持に必要な費用の合計は、26.2万円となります。
●「空き家」の管理に必要な費用
「空き家」を綺麗で清潔な状態に保つには、定期的な点検や掃除、換気等が必須です。自分の家から「空き家」までの交通費や滞在費を考慮に入れておく必要があります。
遠方に住んでいたり病気で定期的に「空き家」へ通うことができない人は、「空き家」管理の代行サービスを行っている業者へ依頼する必要があります。もちろん、無料ではなく業者への報酬費用が発生します。
●「実家」を相続した場合の管理維持費用を事前に確認しておこう
月額では微々たる金額だと思ってしまいがちですが、「空き家」を所有し続ける間、ずっと発生する「管理維持費用」を事前に知っておくことは、とても大切なこと。両親が健在のうちに、現状を把握し対策を講じておくことで、余分な出費を防げます。
「空き家」所有者には金銭的負担だけではなく、精神的負担や労力もかかる!
●「空き家」管理の労力
「空き家」を所有することで、日常のタスクに「空き家」の掃除や点検の業務が加算されることになります。今の忙しい毎日に更に、それらの項目が追加されると想像しましょう。
「空き家」から離れた場所に住む人であれば、お盆やお正月などの長期休暇を利用することが多いはず。せっかくの休みを「空き家」の掃除や草むしりに充てることになります。また、移動の時間も回数を重ねる毎に負担に思えてしまいます。
●「空き家」管理の精神的負担
「空き家」を「そのまま」にすることで、最も気を遣うのは近隣住民の方に対して。「空き家」があることで、何か不都合な点はないかなど、「空き家」を訪れた際は、コミュニケーションを取ることが大事です。
台風や地震など自然災害が起こった際は、「空き家」の倒壊や破損がないか気になります。それだけではなく災害対策を万全にし、近隣住民の方に迷惑をかけないよう常に配慮をする必要もあります。
「空き家」を相続放棄しても逃れられない管理責任!
●「空き家」の相続放棄とは
「実家」を相続し、「空き家」となる「実家」を所有する金銭的負担や精神的負担から逃れるために相続放棄を考える人がいます。しかし、相続放棄は「空き家」問題をさっぱりとは解決してくれません。
「空き家」となる「実家」を相続放棄することは、不動産の相続放棄です。民法239条第2項には、”所有者のない不動産は、国庫に帰属する。”との文言があります。これにより「空き家」を相続する権利のある兄弟姉妹や親族が全て相続を放棄した場合は国の物になると解釈できます。
しかしながら、相続人がいない「空き家」を国庫にするのは大変煩雑な手続きがあり、かなり難易度が高く、現実的ではありません。
●「空き家」を相続放棄しても尚、「管理責任」は絶対残る
「空き家」を相続放棄した場合は、固定資産税や都市計画税など税金の支払い義務はなくなります。
しかしながら、相続放棄をした後、次の相続人が見つかるまでは「空き家」を管理する必要があります。これは、民法第940条”相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。”という文言によって示されています。
とどのつまり、「空き家」を綺麗で清潔な状態に保つ責任は残るのです。