ワケアリ空き家に寄り添い切る。所有者の「無二の伴走者」だから知る最前線

【インタビュー】NPO法人 空き家コンシェルジュ:有江正太さん

 いざ、自分の家が空き家になったら、あるいは空き家を相続することになったら、何をすればいいか分からない人は多いのではないか。しかも権利者が複数いたり、現在の法律にそぐわなかったりという〈訳アリ〉な空き家は数多い。そんな迷える空き家所有者の駆け込み寺として、奈良県内だけで約30の自治体から空き家対策に関する業務委託契約を受託しているNPO法人「空き家コンシェルジュ」は最前線を走っている。

ホームページに〈空き家の管理、賃貸、売買、活用など奈良の空き家ならなんでもご相談ください!〉とあるのが何とも心強いが、一体どのような経緯で設立されたのか、そして日本の空き家問題に対してどんなビジョンを持っているのか、代表の有江正太さんに話を伺った。

目次

起業のきっかけ祖母が認知症のよる空き家問題

──設立したのはどのようなきっかけですか?

法人化は2013年、空家等対策特別措置法が国会を通過した半年前の5月です。
きっかけは祖母が認知症になり、住まいが空き家になってしまったことです。当時不動産関係の会社でサラリーマンをしており、多少の知識があったので、自分ひとりで何とかしようと思ったのですが、これがやってみると時間もお金もかかる大変な作業。同じように苦労している人は多いのではないかと思い、10年ほど前に脱サラして事業を立ち上げました。

ただし当時はまだ、各自治体に空き家対策の担当課など無かったので、話を持ちかけてもたらい回しにされましたね。しかたなくヒアリングと称して、各自治体の人たちに話を聞いて回ることから始めました。

それがいまは時代の流れもあり、奈良県内だけで約30の自治体(全39自治体中)の空き家対策に関する業務を受託しています。県内に5ヶ所、県外に1ヶ所の事務所を置き、15名のスタッフで切り盛りしています。
お正月以外は年中無休で相談を受け付けていますので、年間2300件ぐらいの相談を受けています。

──どのような相談が多いのでしょう?

私達のところに来るのは、ちょっと“こじらせて”いる、つまり流通阻害要因を複合的に抱えている案件が多いですね。
例えばうちの祖母のように所有者が認知症というのは多いです。はっきり判断能力が無いとわかっていればまだよいのですが、「認知症なの?どうなの?」といった、グレーゾーンが1番やっかいです。
あとは相続で関係者が多くなってしまったとか、地域によっては農地法の絡みがあったりもします。立地の問題で再建築ができないなんて案件もありますよ。
そういう訳アリ案件は星の数ほどありますが、報道などで表に出てくることはあまりないですね。華々しい利活用の話はよく取り上げられますが、それはあくまでも空き家活用の「出口の枝葉」の一つです。だから、最終的に解体除去することも当然ありますよ。

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この記事を書いた人

日刊ゲンダイやおとなの週末などで執筆するフリーライター・開運研究家のいからしひろき。
テレビやウェブの仕事もしています。得意なテーマは旅、歴史、酒、グルメ、健康など。

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