老後のライフプランに最適な住まいは何か?
前項であげた項目に沿って、老後のライフプランをある程度考えることが大切なことは前述のとおりですが、衣食住を考えた時、一番重要になるのが「住まい」です。ここでは、住まいに焦点を絞って、40・50代が老後に向けてどのようなことに気をつけて住居を選択すればよいかを解説します。
持ち家か賃貸か
今賃貸にお住まいの方は、老後に向けて自分の家を持ちたいと考えるかもしれません。また、不動産のことを調べたり、モデルルームに見学に行くと魅力的な物件が溢れていて心が動くこともあるでしょう。
しかし、40・50代からローンを組んで人生の3大支出の1つ「住宅購入資金」を捻出することは、それ以降のライフプランに大きな影響を及ぼします。
持ち家か賃貸かを迷ったら、まずは住宅の種類ではなく資金計画を考えてみると、どのような住まいを購入できそうか絞ることができます。
新築か中古か
国土交通省により発表された「平成30(2018)年度 住宅市場動向調査」の結果では、新築の注文住宅・分譲戸建住宅・分譲マンションの購入者が30歳代で約半数を占めているのに対し、中古の戸建・分譲マンションは購入者が40代以降が6割を占めています。
国土交通省 マンション購入者は「立地環境」の選好が強まっています
~平成30年度住宅市場動向調査の結果をとりまとめ~
このような結果になったことは様々な要因が考えられますが、一番大きなものは「金額」です。新築を購入した人が支払った住宅購入資金は注文住宅を筆頭に平均4,000万円前後であるのに対し、中古住宅を購入した人の平均は2,000万円台です。
30歳から35年ローンを組んでも65歳で完済できますが、50歳から30年ローンを組んだとしても完済が80歳となります。そうすると、ローンの審査がおりない、または組めたとしても3大支出の「老後資金」を踏まえると、家計を逼迫するのは明らかです。
地方であれば2,000万円の新築を探すことはできるかもしれませんが、特に現在都市に住んでいる方にとって、健康状態が現在より衰える老後に地方で暮らすのは高いハードルになります。
戸建か集合住宅か
中古を選んだ場合、次に気になるのが戸建か分譲マンションかという点です。戸建と分譲マンションでは、住宅にかかるランニングコストの種類とタイミングが異なります。
具体的な内容は、次の項目で詳しく取り上げます。
「老後も住み続けられるのか」を考える
前項で解説してきたように、これから住まいを購入するという方は色々な制限があります。購入を検討する前に、今の住まいに老後も住み続けられるのかを考えてみましょう。
住まいのランニングコストの種類とタイミング
住まいだけではなく、何かを購入する際必要になる経費として初期費用と維持費用があります。購入費を含めた初期費用を「イニシャルコスト」、維持をするための費用を「ランニングコスト」と言います。
戸建とマンションではイニシャルコストとランニングコストの内容が異なります。
<イニシャルコスト>
戸建
- 物件購入費用
- 火災保険料
- ローン保証料
- 各種税金(印紙税、登録免許税、消費税など)
- 水道加入負担金
マンション
- 物件購入費用
- 火災保険料
- ローン保証料
- 各種税金(印紙税、登録免許税、消費税など)
- 修繕積立基金
<ランニングコスト>
戸建
- 固定資産税
- 塗装(外壁など)
- 床下メンテナンス
- 害虫対策・駆除(シロアリなど)
- クロスの張替
- ガス・給湯器などの屋内設備
- 駐車場代(敷地内に無い場合のみ)
マンション
- 固定資産税
- 管理費
- 修繕積立基金
- 駐車場代(利用する人のみ)
戸建はイニシャルコストが高いのでマンションの方がいいと考える人がいますが、長い目で考えることが必要です。社会経済がインフレに傾くと物価が上昇し、デフレに傾くと物価が下がります。
インフレが続けば今の100万円は10年後に100万円以下の価値になり、デフレが続くと今の100万円は10年後に100万円以上の価値になります。
一般的にインフレが予想される時は、イニシャルコストをかけたほうがトータルとして安く済ませることができ、デフレが予想されるときはランニングコストにかけるほうが賢い選択と言えます。
現在の日本政府はインフレを目指しているので、イニシャルコストをかける方がいいでしょう。ただし、世界的に経済が不安定なため30年後はどうなっているかは分かりません。