連載#5(最終回):市場へのハードルを下げるお出迎え策の数々。再生のカギとなる「発信」の仕方とは

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連載:神戸市灘中央市場『いちばたけ』インタビュー

8つの商店街と4つの市場がある神戸市の水道筋界隈、大きなショッピングモールには無い〈生活に密着した気さくな雰囲気〉が魅力。なかでも大正14年にできた灘中央市場は、一歩足を踏み入れると昭和にタイムスリップしたような雰囲気。このエリアに2年ほど前の2019年春、空き店舗の跡地を活用してつくられたのが、なんと「畑」。その名も、市場の畑だから『いちばたけ』全国的にもユニークなこの空き地活用の取組み。まずはその現状について、弊社代表・和田貴充が伺いました。

神戸市水道筋界隈の「灘中央市場」で行われている空き家を活用した町おこし。今回、母体となっている「チームカルタス」の佐藤直雅さん、丸山公也さん、坂本友里恵さんと一緒に市場を巡り、市場の人たちの話を聞いてきました。そこから見えてきた空き家活用の現状と課題解決策とは?

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連載第1回「シャッター商店街に、畑が出現!」を読む

連載第2回「30年来の仲間とつくった秘密基地」を読む

連載第3回 「防災空地という商店街の余白」を読む

連載第4回 「週末『だけ』空き家DIYで1.5拠点生活」を読む

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新しい住民に対して市場のハードルを下げたい

坂本 今回はこんな感じでよかったんでしょうか。ちゃんと伝え切れているでしょうか。

和田 全然大丈夫ですよ。今回はチームカルタスを通した商店街の姿を見たいと思っていたので。

坂本 本当はもっと伝えたいことがあって。例えば途中でお話しした市場の周りに住む元気なママたち。中でも65歳でリタイアしたある女性は、市場の空きスペースを使って月に何度か駄菓子屋をやって、子供の居場所を作ろうと頑張っているんです。 

和田 市場の周りには子供が多いんですか?

イベントの様子。子供がいると市場も活気づく(写真提供:いちばたけ)

佐藤 めちゃくちゃ多いですよ。以前、ハロウィーンイベントをやったんですけど、大通りの向こうの踏切のところまで子どもたちの列が出来ていましたから。 

坂本 周りにマンションがどんどん建って、そこに若いファミリー層が移り住んで来ているんです。でも市場ってハードルが高いじゃないですか。買い方がグラムでわからないとか、魚を丸々一匹買わなきゃいけないんじゃないかとか。

和田 確かにそうですね。

坂本 でもそうした人たちとの架け橋になってくれそうなのが新しくできたトイレ休憩所。実はこの水道筋全体でも商店街の中に公衆トイレが無かったんです。でも新しく出来たことで、市場が意外にフレンドリーな場所だということが、元気なママさんたちを通じて広がって行けば、心理的なハードルも少しは下がるんじゃないかと思うんです。

いちばたけ開放デー。野菜の収穫などができる(写真提供:いちばたけ)

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客のニーズに合わせて、市場のグランドデザインを考えていく。最初は賃貸でお試しでも

和田 そういえば、シェアオフィスをやりたいって言っていましたけど、場所はもう決まってるんですか?

坂本 借りたい空き店舗はあるんですけど、 どうやら貸すのではなく売りたいらしいんですよね。

和田 そういう時は、とりあえず借りて、利益が出るようになったら買いますって交渉するといいですよ。いきなり買うのはリスクが高いですからね。かといって借りっぱなしなのも、売りたい人にとっては面倒な話ですから。

坂本 なるほど。

和田 そうした仲介についてですが、この市場については不動産屋などは入れない方がいいと思いますよ。

佐藤 どうしてですか?

和田 大事なのはここにどんな人が来て欲しいかということを市場側がちゃんと意志表明して、それに合う人をマッチングすることです。ですが一般的な不動産屋は高く貸せる人を斡旋するのが仕事。つまり価値観が違うんです。

佐藤 たしかに。

和田 もし大変だと思うのなら、書類だけ作ってもらえばいいんです。専門家が必要なのは、賃貸契約を結ぶとか重要事項の説明をするといったことだけなので。それ以外はやる気さえあれば素人でも構わないと思います。

坂本 わたし達もできればそのようにやって行きたいと思っています。

和田 ビジネス的にも一番いいのは、市場に来るお客さんに、どんな店があれば嬉しいかというニーズを聞いて、それに合う店子を探して来ることです。お客さんあっての市場ですからね。

丸山 そういえば先日ワークショップに来た親子連れが、貸し農園で畑をやりたいと言っていたので、そういう自然体験的なニーズはあると思います。

和田 それはいいですね。まずは、なぜこういう場所を作りたいのか?〈Why〉の部分を明確にし、じゃあどうやって?〈How〉の部分を皆で詰めて行く。それを分かりやすいテーマやキーワードに落とし込めるといいんですけどね。要は会社のコーポレートアイデンティティ、CIみたいなものです。それが明確になると発信の仕方も楽になってくると思います。

次のページ:デジタルもアナログもフル活用、効果的な発信を!

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この記事を書いた人

日刊ゲンダイやおとなの週末などで執筆するフリーライター・開運研究家のいからしひろき。
テレビやウェブの仕事もしています。得意なテーマは旅、歴史、酒、グルメ、健康など。

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