2022年3月14日から始まった宮崎県延岡市の空き家再生プロジェクト「HYPHENATION in NOBEOKA」。
今回は、このプロジェクトの幕開けに際し行われた対談の様子をお届けいたします。
対談の第2部は「空き家の活用でつなぐ延岡の物語 〜公募プロジェクト発表〜」と題しまして、延岡市長と、延岡市出身の元競泳選手・松田丈志氏、空き家活用株式会社代表:和田貴充に、空き家再生プロジェクト「HYPHENATION in NOBEOKA」の詳細、そして移住先やデュアルライフの拠点としての延岡の魅力から延岡の空き家活用の未来を語っていただきました。
▼ 第1部はこちら ▼
▼ HYPHENATION in NOBEOKA の詳細はこちら▼
https://seminar.aki-katsu.co.jp/hyphenation_in_nobeoka
■登壇者プロフィール
延岡市長 読谷山洋司
宮崎県延岡市出身。平成 30 年2月、第27 代延岡市長に就任。令和4 年2 月からは、第28 代延岡市長として2期目を迎える。
オリンピックメダリスト 元競泳選手 松田丈志
宮崎県延岡市出身。アテネ大会より4大会連続五輪出場。競技活動から引退後はスポーツの普及、改革に関わりながらスポーツジャーナリストとして執筆、講演、コメンテーターなど幅広いジャンルで活動している。
空き家活用株式会社
代表 和田貴充
2014年に空き家活用株式会社を設立。以降空き家問題解決のためのさまざまな事業を展開し、2021年末には実際に利用できる空き家を紹介するYoutubeチャンネルを開始。
■延岡の空き家問題の現状
ー 2部では、空き家の活用という社会問題についてお話していきます。延岡だけでなく全国的に少子高齢化が進み、実際に家がどんどん空き家になって廃墟になっていくという問題がございますね。
市長)そうですね。特に空き家になり果ててしまうと活用のしようがなくなるので、やっぱりその前の段階、例えばお父様お母様が亡くなられて相続人の方がまだ決まってないときでも誰かに使ってもらうように動かしていただきたいな、と切に思います。
ー 第一部では松田さんのご実家の2軒隣も空き家になってしまったということでしたが、いかがでしょうか?
松田)今朝家の周りを散歩してたんですけど、家がなくなっていたり、使われてなさそうだな、という家が増えてきていますよね。当然、利活用する場所としての価値が高いところはどんどんされるんでしょうけれども、なかなかその価値がそのままではつかないような場所だったら、やはり何か工夫して人の手を加えていく必要があるんじゃないかなと思いますね。
延岡の空き家プロジェクト
HYPHENATION in NOBEOKAとは
■延岡の空き家プロジェクト実現までの道のり
ー 延岡の空き家問題ということで、本日は空き家問題のプロフェッショナルである空き家活用株式会社の和田貴光社長においでいただきました。
和田)初めまして皆さん。空き家活用株式会社代表の和田と申します。
弊社は昨年の2月末ごろに延岡市と連携協定を組ませていただきました。これを機に、延岡の空き家対策のお手伝いをさせていただくという協定ですね。僕らは不動産業者ではありませんので、町の空き家対策の戦略などをサポートさせていただければと考えています。
市長)延岡市も空き家問題は深刻なので、何か動かしていく方法はないだろうかというところで空き家活用株式会社との出会いをいただきました。今回の空き家のプロジェクトだけではなく、和田社長には「延岡商業高校」という高校で3年生の授業をやっていただいたりしています。空き家のビジネスのことはもちろんですが、和田社長はご自分で起業をしたという方でもあるので、そういった起業の経験などもお話いただいています。生の起業した方の話を聞く機会というのはなかなかないと思うので、高校生にとってもいい機会になっていると感じています。
そういったことを通して、延岡の今まで培ってきたもの、あるいは受け継がれてきたものを丸ごと大切にしながら地方創生をやっていくにはどうしたらいいかということをいろいろとお聞きし行動をしていただく中で協定を結ぶに至り、今回の空き家再生プロジェクトが実現しました。
【延岡市と空き家活用株式会社の連携協定について】https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000057167.html
■延岡の町と人と空き家をつなぐ HYPHENATION in NOBEOKA
ーでは和田社長、今回のプロジェクトのご説明をお願いいたします。
和田)今回の空き家プロジェクトでは、ある一つの空き家を事業に活かそうということで、事業の公募プロジェクトというのをさせていただきます。
プロジェクト名はHYPHENATION(ハイフネーション)。「HYPHENATION in NOBEOKA(ハイフネーション イン ノベオカ)」という名前をつけさせていただきました。
ハイフネーションには、繋ぐ、ハイフンという意味を込めています。人と街を繋ぐ、空き家と空き家の利活用者を繋いでいく。それを延岡から発信していこうというプロジェクトです。
【プロジェクト詳細ページ】
https://seminar.aki-katsu.co.jp/hyphenation_in_nobeoka
空き家というのは開いてるスペースですので、僕らは「箱」だと思っています。その中にいろんな事業やコンテンツが入ることによって、どんどん生まれ変わっていく可能性があります。さらに今はコロナのご時世になりましたので、地方の地域は非常に見直されています。そんな中、延岡という場所には魅力的なたくさんの資産があると思いましたので、この延岡の地でいろんな事業をしたいという方を募集していこうと。それがHYPHENATIONというプロジェクトです。
延岡の空き家を使って創業する事業者を公募していくのですが、それだけでなく、空き家を使った体験イベントや創業したい方に向けたプログラム、空き家の相談窓口といったことを実施していきます。地域の皆様や地元の不動産事業者様、建築事業者様といったたくさんの事業者さんたちと一緒に作り上げていきたいですね。まずベースを僕らが作らせていただいて、そこから皆さんと一緒に手を携えていろんな将来に繋いでいくというビジョンです。
「HYPHENATION in NOBEOKA」の舞台はこの山下新天街。先ほども松田さんから「おしゃれしないと来られない町だった」というお話がありましたが、やはり僕たちから見てもここが街の中心であるんじゃないかと。そこで、ここで何かお役立ちができないかということを延岡市と相談させていただいていました。
その中で元々化粧品屋さんだった店舗がたまたま空いているというお話を聞き、ぜひここを新たな取り組みがスタートできるような場所にしていこうということで今回のプロジェクトが実現したという形です。
これから全国に応募を募っていきますが、もちろん延岡にお住まいの方もしくは宮崎県内の方にもぜひ参加していただきたい。市長がおっしゃるように、延岡は諦めないチャレンジする町だと思いますので、ともかくチャレンジしてほしいです。地元からそういう「よしやってみよう!」みたいな人たちが出てくるのが僕は一番嬉しいなとは思っています。
ー松田さんが応募するとしたら、やりたいお店はありますか?
松田)僕自身はトレーニングジムを実際にもうやってるのですが、ジムを始めた経験から言うとやっぱり事業が始まったときには顧客がついてるっていう状態を作るのが理想だと思うんですよ。それにはやっぱりPR活動が大事なので市民の皆さんにこのプロジェクトをきっかけに事業を知ってもらって、それをきっかけに他にも延岡でにぎわいのある場所をいくつも作っていってもらえたらと思います。
■事業者公募だけじゃない!DIYなどさまざまなイベントも予定
ー体験イベントも行われるんですね!
和田)はい!DIYイベントを6月初旬ごろに実施する予定です。地域の皆様と延岡の未来のことを一緒に考えながら、DIYイベントをやっていきたいなと思っています。
ーそして事業者の公募も始まるのですね。このお化粧品の看板が出ているところ。ここを借りる、活用する方を募集するということですが。
和田)ここでできる事業はいろいろあると思います。例えばパン屋さんがやりたいという方がいらっしゃるかもしれませんし、ここで作られた地元の食品をeコマースで海外に売っていくという場所になれば、ここは缶詰工場になるかもしれません。いろんな可能性を事業者さんに見い出していただいて、みんなで考えていくという形です。
ーDIYというのは、do it yourselfですよね。つまりみんなで作り上げるということでしょうか?
和田)そうですね。せっかく空き家になっているので、空き家を身近に感じていただきたいなと。今あるものが変わっていくという過程を感じていただきたいなと思っています。
自分が空き家を持っている、または持つことになる可能性のある方もたくさんいらっしゃるので、そういった方に空き家はこうやって生まれ変わる可能性があるんだっていうのを感じて頂きたいです。そして子供たち、高校生や中学生の子供たちが楽しみながら社会課題を考えていく、という機会を作っていければいいなと思っています。
ーDIYには一般の方も参加できるのですか?
和田)参加できます!参加された市民の方に場を作っていきたいですね。ご参加お待ちしています。
■プロジェクトと延岡市のチャレンジする人を応援する取り組み
ーそして、応募してもらうだけではなく実現を応援していく取り組みであると伺いました。
和田)はい。ただ事業者を募集し「はいスタートしてください」という形のプロジェクトではありません。
市長からもお話あったように僕も起業した経験がありますし、起業家の仲間もいますので、そういった方、特に九州や宮崎県内の起業家の方にメンタリングしていただいたり、といったことを考えています。また、日本政策金融公庫さんに資金の計画といったところもお手伝いしていただけるような仕組みも予定しています。
公募で選ばれた方に対してそういったサポートを継続させていくことができるようにと考えていますので、ぜひ応募して欲しいですね。
ーそして延岡市でも応援のメニューを用意されているとのことですが。
市長)はい、応援のメニューがありますよ。
例えば創業支援ということで最大100万円の補助金が出る制度。それから街中の空き店舗を使った場合、家賃の一部を3年間補助し、またリフォームについてもいくらか補助金が出るという制度もそれぞれ行っております。両方合わせると最大で142万円、家賃プラスリフォーム費用ですね。
また、クラウドファンディングをサポートする制度もございます。
先ほど松田さんもおっしゃってましたけど、お客さんを掴んだ状態でビジネスを開業するって大事だと思っていて、そういった意味ではクラウドファンディングというのはファン・味方作りに有効になると思います。今回のプロジェクトではそういった味方作りも含めてしっかりサポートするものですので、ぜひ多くの方に延岡市の山下商店街の空き店舗を使って「新しいことやろう、自分の本当にやりたいことをここからスタートしよう」と手を挙げていただきたいと思います。
【 延岡市の創業支援策等について、詳しくはこちらのページをご覧ください 】https://www.city.nobeoka.miyazaki.jp/soshiki/51/14805.html
ー和田社長は起業を経験されているとうことですが、その経験からなにかアドバイスはございますか?
和田)言い方が悪いかもしれないですが、やっぱり使えるものはどんどん使って、どんどん人を巻き込んでいくっていうことが事業を成功させるうえで重要だなと僕は思っています。外から来て起業するとよそ者なんですが、それを地域の人に応援してもらえれば事業は成功すると思っているので。地域の方に共感していただきながら、応援していただけるような事業が生まれたらいいなと思っています。
ただ単に儲けるというビジネスではないというところも大事だと思います。もちろん利益は重要なんですが、やはり延岡に対して社会に対して役に立つような、喜んでいただけるような事業っていうのを織りなせるように協力したいなと思っています。
■これからの山下新天街
ー事業公募にDIYと、これからが楽しみになるプロジェクトですね。
市長)そうですね。私達は、山下新天街は見慣れてしまった寂しい商店街じゃなくて、やっぱり賑やかな場所であるはずなんだといった気持ちでいます。ですので全くご縁のない県外の方も大歓迎ですし、あるいは延岡出身の方で、松田さんのように「やっぱり延岡はもっと元気があったよね。だから自分が延岡の元気を出すための役割を果たしたい」ということで活躍の場として頂けたらいいなと思っています。
今はもうご存じの通り、首都圏にいるけど延岡でも仕事をやる、といった働き方も可能になっています。例えばある会社の課長さんなんだけど、週末は延岡の会社の役員さん、といった一人何役もできる時代になっているんですよね。
もちろん地元の方がチャレンジすることを盛り上げていただきたいとも思っていますし、いろんなプロジェクトがあって、どなたにしようか悩むぐらいになることを切に願っています。
松田)そうですね。やっぱり、ここから世界と繋がるプロジェクトが生まれると嬉しいです。延岡と世界を繋ぐ、そういう場所になってほしいなと思っていますね。