親の残した空き家を手放したい!不動産売却の鍵を握る相続財産管理人とは?

目次

相続財産管理人と遺言執行者の大きな違い

相続財産管理人については前項で詳しくご紹介しましたが、同様に被相続人の財産を管理する資格として「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」というものがあります。

※世間一般では「遺言=ゆいごん」と読みますが、民法上では「いごん」と定められています。

一見、似ている二つの職務ですが、仕事内容や権利の範囲は大きく異なります。被相続人がどちらを選択するかで、相続人や特別縁故者同士の揉め事を減らすことができます。

両者の役割を正しく知って、自身の遺言通りに相続が行われるにはどうすればよいかを考えるきっかけにして頂けると幸いです。

選任方法

  1. 1.相続財産管理人→家庭裁判所への申し立て
  2. 2.遺言執行者→家庭裁判所への申し立てもしくは遺言で指定

申立人の対象となるもの

  1. 1.相続財産管理人→特別縁故者などの利害関係者
  2. 2.遺言執行者→誰でもなることはできますが、遺言執行者が必要なケースがある。財産や遺言の内容によっては、専門家(弁護士・司法書士・信託銀行)に頼むことも可能です。

仕事内容・権利・義務

  1. 1.相続財産管理人→財産の保存行為・管理行為+家裁の許可による処分行為
  2. 2.遺言執行者→遺言者に代わり遺言執行に関わる一切を担う。

 ※相続財産管理人より執行権限と権利の範囲が大きくなります。必ず選任され
  なければならないわけではありませんが、以下に挙げるケースの場合選任は
  必要になります。

  1. 1.遺言で子の認知が行われた場合
  2. 2.遺言で推定相続人の廃除がされた場合
  3. 3.遺言で推定相続人の廃除が取り消された場合
  4. 4.不動産の遺贈を受けたが、相続人がいない、もしくは相続人が所有権移転
    登記に非協力の場合

報酬相場

  1. 1.相続財産管理人→申立時に申立人が支払わなければなりません。50万円~100万円程 度が平均相場ですが、場合によっては100万円を超える場合もあります。
  2. 2.遺言執行者→ケースにより様々ですが、専門家である司法書士・弁護士・信託銀行に依頼した場合、おおよその平均相場は以下の通りです。

 1)財産が500万円未満

  • ・司法書士・・・基本手数料として20万円
  • ・弁護士・・・・基本手数料として30万円
  • ・信託銀行・・・基本手数料として108万円

 2)財産が5,000万円の場合

  • ・司法書士・・・基本手数料+報酬として75万円
  • ・弁護士・・・・基本手数料+報酬として104万円
  • ・信託銀行・・・基本手数料+報酬として189万円

 3)財産が3億円の場合

  • ・司法書士・・・基本手数料+報酬として250万円
  • ・弁護士・・・・基本手数料+報酬として354万円
  • ・信託銀行・・・基本手数料+報酬として302万円

※このように総資産によっても誰に依頼するかで報酬は変動します。また、例え
 ば法定相続人同士の法的な争いが予見される場合は弁護士でなければ遺言を執
 行できませんし、金融関係のトラブルがある場合は信託銀行であれば様々なサ
 ービスがあります。

 ご自身の財産、そして法定相続人に均等に分配する予定がない等の条件に応じ
 て、遺言で遺言執行者を指定しておくとスムーズに手続きが進みます。

倒壊しそうな空き家の措置どっちがいい?

財産と相続人がいる場合、その管理をしてくれる相続財産管理人と遺言執行者を解説してきました。ここからは不動産にフォーカスをして、より具体的に相続財産管理人がどのように関わって来るのかを空き家対策特措法による代執行と比較して検討していきます。

事例

隣家の住人が亡くなり空き家として放置されている。倒壊の危険があり、また犯罪の温床になるリスクをはらんでいるため、近隣の住民は対応をしてもらいたいと考えている。

対応方法の選択肢

  1. 1.自治体に申し立てを行い、空き家対策特措法による代執行により撤去をしてもらう。
  2. 2.家庭裁判所に申し立てを行い、相続財産管理人を選任してもらう。

対応の結末予測

①特措法による行政代執行をしてもらうには、事例の空き家が「特定空家」に認
 定される必要があります。特定空家と認定される条件は自治体によっても変わ
 ってくるため、明確ではありません。詳しくお知りになりたい方は以下をご覧
 ください。

<参考記事>空き家の定義とは?アパートなどの定義の違い/発生課題とその対策

 また、認定されても代執行には手順があり、数か月~1年以上はかかります。

②相続財産管理人を選任する方が早いのでおすすめ!とうたっている記事も散見
 されますが、そうとも言い切れない部分があります。

 まず、相続財産管理人ができる行為は保存行為と管理行為です。不動産売却や
 処分などの「処分行為」は原則として認められていません。家裁から許可をも
 らうことで初めて行うことができます。処分行為の許可が下りてから、不動産
 の任意売却まで半年以上はかかります。

その他の問題点

①相続財産管理人の申し立ては利害関係人しかできません。行政代執行であれば
 特定空家に認定されれば動くことができますが、隣家の住人というだけでは利
 害関係者とはいえません。

②相続財産管理人の申立てを行う場合、申立に際して相続財産管理人の報酬とな
 る予納金を数十万円~100万円程度を相場に納めなければなりません。隣家
 の住人に支払い能力があるか、また支払ってでも相続財産管理人の選任を申立
 てる気持ちがあるかどうかが問題になります。

 これに対する奥の手として、被相続人が固定資産税等を滞納している場合、債
 権者となる市区町村が利害関係人になるので、申立てを自治体に依頼する方法
 もあります。

<次ページ:相続人が不在の場合の財産はどうなる?>

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この記事を書いた人

リラクセーションサロン・大手コンビニ・福祉業界と異色の経歴を持っています。今は田舎に戸建てを借りて都内と二拠点生活するフリーライターです。

次世代が活躍できる舞台づくりをフィールドワークにしています。

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