自分が死んだら残した不動産はどうなるのか?
不動産をお持ちの方は誰でも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
苦労して建てた家、想い出のある家だからこそ、子供達に継いで欲しい。
そう思うのは自然なことです。
ところが、その先。
具体的な準備を今からしている人は、意外と少ないというのもまた事実。
亡くなった後でも相続は可能ですが、その手続きは煩雑になります。
この記事では、不動産を含む財産があるものの相続人がいない、もしくは相続人全員が相続放棄をした場合、残された不動産がどうなるのか。
その鍵となる「相続財産管理人制度」を中心に、詳しく解説していきます。
亡くなってからでは遅い?!相続の流れを解説
突然ですが質問です。
「生きている間に相続の話をすることは、不謹慎だと思いますか?」
昔は不謹慎だとされていましたが、亡くなった後の相続の大変さや相続した家を放置することによる空き家問題が取り沙汰されることで、最近ではこの考え方は少しずつ変わってきていると感じています。
資産、特に不動産をお持ちの方は生きている間に相続の手続きや、誰に何を相続してもらうのかを決めておかないと、残されたご家族に煩雑な手続きが待っているのは事実です。
ここでは、相続の種類と流れ、相続の対象となるのはどんな人かを解説します。
相続の種類と流れ
<存命中>
①生前贈与
<亡くなった後>
②相続人が相続するか相続放棄かを選択する
<相続人の相続放棄後/相続人が不明・不在時/遺言による指定>
③相続財産管理人制度
④遺言執行者
相続人としての資格
①法定相続人・・・被相続人(亡くなった人)の配偶者、子供、両親、兄弟姉
妹。
②特別縁故者・・・法定相続人が一人もいない、全員が相続を放棄した場合、
一定の手続きを経て財産分与を受けられるもの。
具体的には、次の3つに該当するもの
- 1.被相続人と生計を一にしていたもの。婚姻届けは提出していないもの の事実上の夫婦関係がある、もしくは養子関係にある場合を指す。
例:内縁の妻等 - 2.被相続人の療養看護に努めたもの。ただし、業務として行い報酬を得ていた人は除く。
対象外:看護師・介護士・家政婦等 - 3.被相続人と特別の縁故があったもの。「私が死んだら〇〇を譲り受けて欲しい」と約束を交わしていた、あるいは師弟関係のような親密な関係があったもの。
※個人だけではなく、法人も特別縁故者になることができます。
相続財産管理人とは?選任方法とできること
相続財産管理人という言葉を初めて見た方も多いのではないでしょうか。ここでは、相続財産管理人制度における相続財産管理人の定義とその選任方法、仕事内容を解説します。
相続財産管理人とは?
人が亡くなった場合、通常は相続手続きが完了するまで法定相続人が管理を行います。
ところが、相続財産がありながら相続人がいない、あるいは法定相続人のすべてが相続を放棄した場合、その財産を管理する人が必要になります。そこで選任されるのが「相続財産管理人」です。
選任方法
選任方法は家庭裁判所に申し立てを行うことです。ただし、相続人がいない場合であって、利害関係があることが条件になります。
特別縁故者など財産分与にあたる対象がいない場合、その財産は国庫に帰属するからです。また、選任に際して特別縁故者や利害関係者がいない場合は、ほとんどのケースにおいて弁護士が選任されます。
相続財産管理人の仕事
①基本の仕事内容
- ・相続人の有無や相続財産の調査
- ・被相続人の債務清算
- ・特別縁故者がいる場合は、財産分与の手続き
- ・財産を相続する人がいない場合は、国庫に帰属させるための手続き
②権利でできること
民法第103条において、相続財産管理人には原則「保存行為(相続財産の現状を維持する行為)」と「管理行為(物や権利の性質を変えない範囲で改良・利用する行為)」のみが家庭裁判所の許可を得ることなく行うことを認められる。
- 1.保存行為
- 2.管理行為
に含まれる具体的な内容は以下の通りです。
- ・不動産の相続登記
- ・預金の払い戻し
- ・預金口座の解約
- ・既存の債務の履行 短期賃貸借契約、使用貸借契約の締結
- ・賃貸借契約の解除
③権利外ではあるが、家庭裁判所の許可を経てできること
3)処分行為 この記事のメインである「不動産売却」もここに含まれます。
処分行為に含まれるその他の内容は以下の通りです。
- ・家具、家電の処分
- ・亡くなった人の位牌の永代供養
- ・蔵書の寄贈
- ・定期預金の満期前解約
- ・期限未到来の債務の弁済
- ・訴訟の提起