相続した実家。想い出が詰まっていたり、遠方で管理が難しいけれどいつか使うかもしれない、築古で売却は難しいだろう等と考え、賃貸という活用方法はできないかと悩んでいる方も多いはず。この記事ではそんなお悩みに対して、実際に賃貸ってどうするの?という基本から、賃貸に出した際の収支シミュレーション。賃貸の契約方法や管理業務は具体的にどのようなものがあるのかについて具体的な相場観を交えて*解説。売却を勧められてしまうことが多い空き家ですが、賃貸を始め少ないリスクで活用していく方法は沢山あります。この記事を読んで頂ければ売却一択ではなく、賃貸や他の活用の道が開けるケースが多いので、是非参考にして頂ければ幸いです。
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実家が空き家になったら売却より賃貸?
賃貸にしろ、売却にしろ、相続した実家が不動産としてどのくらいの資産価値があるのかを知るためには、不動産会社などに査定依頼をするのが一般的です。
しかしながら、査定依頼をすると必ずと言っていいほど「売却」を勧められてしまいます。
さらに、築年数が経過していたり、長らく人が住んでいない物件は二束三文の査定結果をもらうことになり、がっかりされる方も少なくないでしょう。
でも諦めるのはちょっと待った!
空き家問題が顕在化して久しい日本では、空き家を活用しようという動きが大きくなっています。
この流れにのって、様々なサービスを提供する企業も出ています。
今回は特に「賃貸」に絞って、賃貸に出す場合のメリット・デメリットから紐解いていきましょう。
賃貸のメリット
①売却してしまえば取り壊されても、更地にされても元に戻ることはありません。賃貸なら「想い出の残る実家」をそのまま残しながら活用していくことができます。
②人が住まないと老朽化が加速する住宅ですが、賃貸に出すことによって人が暮らしメンテナンスをすることで、長く状態をキープすることができます。
③放置しているだけでは固定資産税に始まり費用がかかる空き家ですが、賃貸に出すことによって収支をゼロないし収益化を目指すことができます。
④どんな建物もメンテナンスや修繕費用がかかりますが、後でご紹介するサービスを利用することによってリノベーション費用を借主にもってもらうことも可能です。
賃貸のデメリット
①アパート経営などに比べると収益化した際の利率は低くなります。ただし、アパート経営と賃貸では初期投資に大きな隔たりがあるので、リスクを最小限にとどめることができるという一面もあります。
②立地や築年数、現状の状態によっては、リノベーション費用がかさんでしまう場合があります。こちらについては、費用を抑える方法を後の項目で詳しく解説します。
③売却とは違って賃貸となると、固定資産税など所有者が負担しなければならない費用はあります。この点は売却以外の活用法ではつきものですが、それら費用を清算してあまりある収益化を目指すことは可能です。
このように賃貸のデメリットとして紹介されいていることの多くは、解決することが可能です。
もちろん、空き家の状態や資産によっては思い通りにいかないこともあるとは思いますが、大前提として諦める必要はないことを知って頂きたいです。
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賃貸に決める前に!実際の費用をシミュレーション
賃貸のメリット・デメリットを確認してきましたが、実際に賃貸で収益を上げていけるのかどうかは重要なポイントになると思います。
ここでは、個々のケースではなく、あくまで一般的な戸建てを賃貸した場合にかかる費用と収入をシミュレーションして解説をしていきます。
実際は、ここにご自身の所有する物件の所在地や築年数、間取り、平米数などの諸条件を加味すればざっくりとイメージができると思いますので、参考にしていただければ幸いです。
<賃貸に関わる収入>
【家賃】
家賃が賃貸に関わる収入のほぼすべてといっても過言ではありません。
ただし、高くても借り手がつかず、相場より安くても勿体ないので事前に戸建て賃貸の取引実績がある不動産会社に査定を依頼するのも1つの方法です。
【管理費/共益費】
管理費と共益費は法的には厳密な区分けはありません。
借主が住んでいる間のメンテナンスや、清掃など管理に関わる費用として徴収することができます。
【敷金】
敷金は実は収入ではないので注意が必要です。
賃料を滞納された場合や住宅の補修にかかる費用として借主から一時的に預かっているお金になります。なので、実費のみ徴収し余剰分は借主に返却をするのが原則です。なお、立地にもよりますが敷金・礼金なしという物件が増えてきているので周辺の事前調査を行い相場を把握しておきましょう。一般的に敷金を徴収する場合は、賃料の1か月分というところが多いです。
【礼金】
借主が貸主に対して新規契約時にお礼として支払うお金になります。こちらは敷金とは違い返金の必要はなく1か月分というのが一般的ですが、敷金と同様「礼金なし」という物件が増えているので設定する場合は周辺相場を把握しておく必要があります。
【更新料】
契約期間を更新するタイミングで、新賃料の1か月分を申し受けるのが一般的です。こちらも更新料なし物件が増えてきてはいますが、マンションやアパートに比べて借主が支払うべき費用として認識は強いものになります。
<賃貸にかかる支出諸経費>
【管理委託費】
こちらは管理を不動産会社に委託した場合にかかる費用で、一般的には賃料の5%というのが相場です。入居者の管理は契約だけではありません。清掃や故障の際の対応、住民トラブルなど意外とやることがあります。貸し出す物件とお住まいが遠い場合は不動産会社に委託するのがよろしいでしょう。
【管理費】
物件の修繕や管理などにかかる費用
【修繕積立金】
建物は人が住まないと老朽化が加速しますが、住んでいても一定の期間でメンテナンスが必要になります。一般的に水回りは10年ごと、害虫駆除や対策は5年ごと、外壁は10~15年など大きな金額がかかるもの。一度に費用がかかると経済的な負担が大きくなるので、毎月修繕のための積立をするのが基本です。
【固定資産税/都市計画税】
売却した場合は買主が支払うことになりますが、賃貸の場合はあくまで物件の所有者にかかる費用になりますので固定資産税は貸主に支払う義務があります。
【メンテナンス維持・修繕費】
入居前のメンテナンス・クリーニング・修繕にかかる費用のことです。長期間借主がいなかった物件や、両親から相続してそのままにしていた物件を新たに貸し出す場合は、メンテナンスや修繕、クリーニングが必要な場合がほとんどです。
【仲介手数料】
入居者の募集を不動産会社に委託した場合は、成約手数料として賃料の0.5~1か月分が相場になります。
【施設賠償責任保険】
所有している家を原因として人にけがを負わせたり、人のものを破損した場合に生じる損害賠償をカバーしてくれる保険です。損害賠償は大きなリスクになりますので、必ず加入をしてください。
いかがでしょうか。こうして改めて書き出してみると収入よりも支出がかなり大きいのが分かります。
もちろん、立地やそのほかのアドバンテージがある場合、経費が掛かっても余りある収入が見込まれる物件もありますが、これだけのものは最低限かかるということを知っておくことで賃貸を始める際の目安にもなると思います。