築130年の家に愛着のある家族。空き家にしたくない一心だからこそとった、家族自身での店舗経営

代々家族が引き継いできた家を、店舗として活用している川口陽子さん。出身は富山でしたが、自身が理想とする働き方を考えたことをきっかけに空き家を活用するために祖父母の家がある愛知県へやってきました。祖父母が住まなくなってしまった家をどのような経緯から活用をしているのか、詳しくお話をお聞き致します。

目次

住宅街の中にある築130年の空き家

aida 外観

ー 「aida」のある愛知県春日井市とはどのようなところでしょうか。

川口陽子(以下 川口) 名古屋から電車で30分ほどの、いわゆるベッドタウンです。

人通りの多い国道が近くにあり、周りには住宅地が広がっています。場所的には駅からも春日井インターからも車で10分以内の便利な場所です。

ー 「aida」のInstagramを拝見していますと、もっと周りもこうした古くて立派なおうちが立ち並んでいるのかと思いました。

川口 ここの敷地内だけが、少し雰囲気が違う場所となっているんです。入り口から一歩中に入ると、庭や建物の持つ雰囲気から街中にいるのを忘れてしまいます。

先祖代々の家の活用へ ~空き家の大改修~

玄関の階段箪笥

ー 川口さんは、もともとこちらに住んでいらしたのですか?

川口 いいえ、私はもともと富山県の出身です。

都内の古民家を改装したゲストハウスで働いていましたが、そこを辞めてから「aida」の運営を始めてここに住み始めました。1年くらいとなります。

そもそもこの家は、祖父母が早くに亡くなってからは誰も住むことがなくしばらく空き家となっており、私が子供の頃はお正月の集まりや法事で年に数回親族が集まる場所となっていました。

ー 先祖代々でお使いのお家ですとなかなか人に貸すといった選択肢を選びにくいかと思いますが、その辺りはどのようなお話し合いがあったのでしょうか。

川口 家は住まないと振動などがなくなったことで木などが腐りやすくなり、朽ちていきます。先祖代々の家で愛着があるからこそ朽ちていくのを見ているのがしのびなく、誰かに住んでもらう必要があるというのは親族の共通認識としてありました。そこで、最初は人に貸したりしていたのですが、なかなかそれも難しく。

ただ、やはり昔から受け継がれてきた建物なので、壊してしまうのはもったいないという思いがありました。

そこで、この家を相続した父が思い切って改修工事を工務店に頼み店舗として利用できるようにしました。家族が取締役にはいる法人をたちあげ、貸し出したのが、2014年です。

そこからは、借りてくださった方が飲食店として4年間営業していました。しかし、その後2018年に店を閉めたので、ここはもう一度空き家となったのです。

その後2019年に、私はゲストハウスの仕事を辞めたのですが、その際に次に働くのであれば会社勤めよりも、自分でなにかをしたいと考えるようになりました。かねてから興味があった量り売りのお店をやることに決め、ちょうどこの場所が空いていたので、量(はか)り売りの店舗やレンタルスペースとして活用することにしました。 

ー 改装などはどうされたのでしょうか? 

川口 改装は以前ここを飲食店として貸し出す際に大改修をしているので、今回は特に手を入れていません。そのおかげで古屋特有の寒さや暑さなどもありませんし、飲食店として営業が出来る仕様になっていますので、水回りなどもしっかりとしています。

庭も飲食店として改装をする際に、もともとの庭をベースに植え直したり砂利を敷いたりして改造しましたが、昔からある柿の木や楠木はそのままです。また屋根裏を改装してあるので、今はそこを居住スペースにしました。屋根裏にあがるための階段も、以前の改修の際に新しくつけています。

ー 家にあった家具などはどうされましたか?

川口 ここの家にあった家具も、「aida」では利用しています。「階段箪笥」などは、もともとこの家の屋根裏に上るためにあったものです。棚の扉などを補修して箪笥を塗り直し、今は玄関に置いています。

それ以外にも、姿見を横にしてトイレ洗面所の鏡として利用しているなど…。この2点が以前の祖父母の家にあったものです。あと家具とは少しちがいますが、欄間(らんま)もそのまま使っています。

<次ページ:空き家を活用 きっかけはゴミの出ない買い物>

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この記事を書いた人

雑誌編集を経て、現在はフリーの編集ライターに。空き家や外壁塗装など家周りのライティングが得意。「家の間取」を眺めていれば、ごはん三杯までいけます。

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