目に見える小さな“変化”としての防災空地
和田 そうした中、商店街に手を加えていかなければいけない、自分が率先してやっていかなければいけないと思ったきっかけは何だったんですか?
森本 最初の頃は同じ世代もいないので、どうしていくべきなのかと1人ですごく悩んでいましたね。自分の考えだけで市場に何かを落とし込めるような力もなかったし。
そうした中、神戸市の若手の方々が入ってきたんです。それをきっかけに自分の意見を言えるようになって、どんどん行動にも移していけたって感じですね。
和田 防災空地を作ったきっかけは?
森本 神戸市さんからの働きかけです。
佐藤 この灘中央市場の東側に畑原市場という界隈で一番古い市場があったのですが、平成18年に火災があって、一気に立替えようという話になったんです(※実際は2020年2月に閉鎖)。
そこで同じ密集市街地の区域にあるこの市場も立て替えしないかという話になったわけなんですが……。
和田 建て替えの話を聞いてどう思いました?
森本 市場がきれいになって良くなるのなら理想的ですよね。当然建物も古くて危ないというのは分かっていましたし、波にはうまく乗ったほうがいいだろうという気持ちでした。
和田 でも話はうまく進まなかった?
佐藤 この市場では、権利者全員の同意を得ないと建て替えられない方法で建て替えを検討されていましたが、権利者が80人もいると中々話がまとまらないんですよね。総論は賛成だけど各論は反対みたいな。これは相当時間がかかると思いました。
和田 なるほど。それで防災のことも考えて防災空地(※いちばたけ)を作ろうと?
佐藤 はい。全員の同意を取れた段階で建て替えを目指すのではなく、今目の前で出来ることからやっていこうと。その時すでに神戸市が入って5年くらい経っていたのですが、長期間検討だけが続き、前向きな考え方が出てこない状態でした。ですから、少しでも変化を目の当たりにすれば、皆さん自分事として前向きに考えてもらえるのではないかと思ったんです。
和田 市場の人間として、そこからみるみる変わっていったという実感はありますか?
森本 それはもちろんありますよ。いちばたけやC-SPACEなど、新しい人たちが入って活動している姿を間近に見ているわけですから。
和田 “よそもんが来た”という気持ちはないんですか?
森本 昔ならあったと思います。でも今はないですね。
和田 もっとフラットに考えていこう、というふうに商店街の人たちも変わって来ているわけですね。
外部から来る人の“中身”が大事
和田 僕は全国の空き家対策の現場に行っていますが、商店街って話がまとまりにくくて難しいんですよ。こちらではどのようなことがキーポイントとなって、一致団結して話が進んで来たのですか?
森本 やはり人の出会いじゃないですかね。単に役所が入ればいいっていう問題ではなくて 、人の中身と言うか……。
和田 一緒にやってくれそうだと思った?
森本 そうですね。あと、「まちづくり学校」でまちの人達と一緒に学べたことも良かったですよね。未だにその時の人たちと交流があって、何かイベントがあると手伝いに来てくれます。
和田 その学校はどれくらいの期間行われたのですか?
佐藤 半年です。空地の使い方を考えるところがゴールで、市のプログラムとしてはそれで終わったのですが、ワークショップは引き続き有志の会ということで継続しました。
和田 変化の土壌というか、すでに種は蒔かれていたわけですね。これからどのような商店街になってほしいですか?
森本 今の延長線上にはなりますが、まだまだ色々な“出会い”が可能な場所だと思うので、それをもっとも促していければと思いますね。
和田 外から入って来る人をしっかり受け止めて、市場も変わっていく。そして、その融合で生まれた“新しいこと”を発信していくということですか?
森本 そうですね。昔ながらの良い部分を“今風に変えていける”ということが大事だと思います。
和田 ありがとうございました。お昼時で忙しい中申し訳ありません。(店先の看板を見て)お、土日限定でハンバーガーを焼いているんですね?
森本 はい。美味しいですよ!
和田 じゃあハンバーガー1個、いや、チーズバーガー2つください!
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