空き家を活用したデュアルライフのメリット
では次に、デュアルライフを求めるユーザーにとっての、複数拠点で生活する代表的なメリットを整理しておきます。
空き家を活用し事業展開する際に「ウリ」をつくれるポイントですので、是非ご参考ください。
仕事と生活のメリハリをつけられる。
コロナ禍によるリモートワークにより、仕事と生活の切替が以前より難しくなってきています。
慣れない在宅勤務では、だらだらと深夜まで仕事を続けてしまったり、仕事が終わっても業務について考え続けてしまう人も少なくありません。
また、今まで仕事中心の生活をしていた場合は、自身の時間をゆったり過ごすなかで「生活を大切にした暮らし」へシフトするケースも珍しくなくなってきています。
このように仕事を続けながらも、今よりゆとりある暮らしを求めて、空き家物件を別宅として選択するケースが増えているようです。
ユーザーは自身の生活に合わせて、住居を自由に行き来することができますので、仕事からの切替も非常にしやすいメリットがあります。
物理的に用途に合わせた住居利用も可能ですので、幅広いライフスタイルに対応し、仕事とプライベートをきちんとわけた暮らしが実現できると言えるでしょう。
コミュニティーもデュアルで災害時の避難先にも。
空き家住宅を拠点としたデュアルライフでは、生活拠点も複数になることもメリットのひとつです。
環境の異なる拠点を行き来することで、必然的に周辺コミュニティーとの関係を構築できますので、徐々に生活に安心や安定を感じることができます。
昨今では、大型地震や台風なども増加していますので、災害時などにおける万が一の避難先にとしても安心です。
特に古くからの空き家が残っているエリアは、地盤など地理上も災害に強いケースが多く、困った際は助けあう風土が根付いている地域の場合が多いもの。
人との繋がりに価値を置くユーザーであれば、複数拠点にコミュニティーがあることは、大きなメリットと感じられるでしょう。
子育てや農業などに適した環境に住める。
都心部や市街地に自宅があるユーザーなら、自然の豊かな郊外エリアを求める方も多い傾向にあります。
特に子育てを視野に入れたユーザーにとっては、安全でのどかな自然の広がる郊外は非常に魅力的です。
配偶者と子供は郊外に住み、御自身が仕事をする場合のみ都心部の自宅を利用するなど、セルフ単身赴任のような利用ができる点もメリットと感じられるでしょう。
また、都心部には確保しずらい、豊かな農地が確保できる点も非常にメリットです。
複雑な社会情勢から将来の食料需給も懸念される中、自給自足できる環境を整備しておくことは、この先の安心の確保にも繋がります。
単純に趣味を兼ねた農業をする場合においても、農地や自然のある地域の物件は、魅力的を感じられるはずです。
空き家活用で費用も抑えられ、社会貢献にも繋がる。
空き家を物件として利用することで、一般的な戸建て住宅や分譲マンションに比べ、費用が抑えられる点もメリットです。
アクセスや利便性が悪い場合もありますが、郊外の地域などでは無料に近い空き家物件も多く、修繕の手間や費用を事前に確認すれば、想像以上に費用が抑えられる場合もあります。
個人のメリットもありますが、放置空き家の対策にもなる空き家の住宅活用は、町の活性化にも繋がる社会的意義も非常に高い取り組みです。
社会貢献の観点をユーザーとも共有し、町、ユーザー、事業者が一体となった関係構築を行うことで、ユーザーも町づくりに参加するなど、地域活性化のスピードを向上させる取組みを行うこともできるでしょう。
空き家を活用したデュアルライフの注意点
空き家を活用したデュアルライフのメリットを確認したところで、同様に注意点も整理していきます。
ユーザーにとっての注意点を解消することで、他物件との差別化を図ることも可能です。
代表的な内容をご紹介しますので、是非ご参考ください。
自宅と空き家別宅の移動費等、諸経費に注意
デュアルライフの最大の注意点は、複数住宅の維持経費や、移動費用が掛かることです。
家賃はもちろん、税金や電気代、水道代や通信費など、基本的に必要経費は2倍以上必要となります。
そのため、ユーザーとしてはデュアルライフの必要経費を事前算出し、家賃を含めた費用を考慮の上、生活を始めることが必要です。
また、勤務先から利用する空き家までの移動費用も忘れてはいけません。一般的な企業では、自宅からオフィスまでの交通費は支給されますが、自宅から離れた別宅への交通費は、支給されないケースがほとんどです。
週にどのくらい往来することになるのかを事前に見積もり、自宅と別宅を行き来する場合の交通費についても注意が必要だと言えます。
防犯や空き家の管理に注意
デュアルライフを行う場合は、当然留守の時間帯も増えますので、防犯や管理面にも注意が必要です。
セキュリティーの整っている、マンションなどの場合は心配も少ないですが、空き家を活用した住宅や一戸建てにおいては、防犯・管理を事前に整えておく必要があります。
個人で対策する場合は、ホームセキュリティーや隣人へ管理依頼を行うなど、念には念を入れた防犯が必須です。
また、空き家の管理や防犯知識の高い、空き家の専門機関への相談も良策だといえます。防犯対策をアドバイスに沿って行い、事前に物件管理を依頼しておけば、建物や財産を守れるだけでなく、自身の負担や手間を減らすことも可能です。
事業者は、防犯・管理面を含めた運用を機関に依頼することで、結果的にユーザーからの信頼も厚く、手間の掛からない物件管理が行えるでしょう。
修繕前の空き家活用では、利用までの費用にも注意
修繕の必要な空き家物件を自身で購入し、別宅として活用する場合は、リノベーションに掛かる費用や税金などの、必要経費にも注意が必要です。
空き家の状態によっては、修繕費用が予想以上に必要になったり、予想外に税金が予算を圧迫するケースも少なくありません。
物件を購入する前には、複数企業への修繕見積もりを依頼し、できれば空き家専門機関のアドバイスを受けて準備を進めると安心です。
万が一活用をあきらめた場合は、物件を放置し続けることで、多額の固定資産税の支払いが必要となる場合もあります。
物件は必ず放置せずに早めの対策を行い、地域環境も考慮して活用することが、事業のリスクを最小限に抑えることにも繋がるでしょう。
デュアルライフに適したサービスや自治体制度
この章では、デュアルライフを既に楽しんでいるユーザーが利用するサービスや、デュアルライフを始める際にも活用できる、自治体の施策をご紹介します。
国内外でデュアルライフを行える定額サービス
パソナなどの企業とも提携し、法人向けワーケーション実証実験を行う「HafH(ハフ)」。
月額3千円程度から8万円程度まで4段階にわけられたプランがあり、提携のゲストハウスやホテルなどで自由に過ごす事ができるサービスです。
コアワーキングスペースもほとんどの施設に併設されている為、登録者の約7割は30代でビジネスマンの利用者も多いようです。
実際にテレワークを行いながら各施設で過ごせる点が、準備にも手が掛からないことから人気を集めています。
また、国内だけでなく海外施設にも対応している点もポイントです。現在も、約150都市以上に250拠点以上の提携先がある為、アフターコロナにおいては、さらにニーズが上がるサービスとなることが予測できます。
幅広い働き方にも対応した、先進的なサービスのひとつです。
社会問題の課題解決を目指す、定額サービス
全国約60箇所以上にある空き家物件を、月額4万円程度からの定額で利用できるサービスが「ADDress(アドレス)」です。
空き家物件は綺麗なシェアハウスのような雰囲気で、追加1名までは同額で利用できるようになっています。
そして各施設には「家守」と呼ばれるコンシェルジュが駐在し、地域の名所・イベントの紹介や交流を提供するなど、地域住民との橋渡しとしての役割を担ってくれるのが特徴です。
地域との円滑な関係を保てることで、ユーザーが快適に過ごす事ができると好評で、会員数を大幅に伸ばしているサービスとなっています。
今後は売り上げの減少している旅館やホテルとも提携を進める方針で、放置空き家対策や地域活性などを目標に、幅広い社会問題の解決にも、大きな役割を果たしそうなサービスだと言えそうです。
デュアルライフのきっかけとなる、お試し移住制度
多くの自治体では、空き家対策と人口減少の対策として「お試し移住制度」を整備しています。
自治体によって詳細は異なりますが、整備された空き家住宅にて安価で生活し、実際の環境を簡単に体験できる制度です。
【事例】埼玉県秩父市 (秩父市HP:お試し居住 | 秩父市移住サイト「暮らす秩父」 (chichibu-iju.com)
都心(池袋)から特急電車で80分程度の場所にある物件を提供しており、家具や備品も整った住宅にて移住体験をすることができます。
利用の際は面談や書類記入など、必要な手続きの上で利用可否が判断され、消耗品や食費、交通費など少しの自己負担で利用することが可能です。
滞在期間は7日間以内となっていますが、周囲の環境や風土を感じるうえで充分満足できる制度となっています。
自社物件への移住や契約を迷うユーザーには、このような制度を紹介するのも良いでしょう。