働き方や価値観の多様化により、移住を希望する方が増えてきています。自治体によっては幅広い移住支援制度の整備が進められ、以前よりも移住は身近なものになりました。それでも「金銭的な負担が心配」「環境は大丈夫か」「困った時の問合せ先は?」など、いざとなれば心配も多いものです。今回はそんな不安を持ちながら移住を考えている方はもちろん、空き家の事業活用を計画している方も参考にできる、自治体が行う代表的な支援制度をご紹介していきます。本記事は、実際に移住するまでの流れに沿って、移住希望者の方の疑問や不安を解消しながらご覧頂ける内容となっています。おおまかですが、移住実現までのシュミレーションを行えますので、移住前の参考として、是非ご覧ください。
自治体は、移住者を望んでいるのか?
実際に移住を実現しても、移住先の自治体で肩身の狭い思いをすることは避けたいものです。
移住したい気持ちはありますが、果たして受け入れ先の自治体は、本当に移住者を望んでいるのでしょうか。
社会背景をもとにして、まずは自治体の移住者に対する想いを確認していきましょう。
多くの自治体では移住者を歓迎している
多くの自治体では少子高齢化や、都心・市街地への一極集中により人口減少が問題となっています。
そのため、多くの自治体では移住者の受け入れを積極的に行っており、地域を支える人材となる移住者を歓迎しています。
2014年頃から政府の施策も整備され始め、移住者が快適に不安なく暮らす事ができるよう、自治体ごとの支援も年々手厚くなってきているのです。
移住に対する支援制度は「住まい」「仕事」「結婚・子育て」「交通」など多岐に渡ります。
支援内容は自治体によって様々で、地域の特性にあわせた移住者のサポートによって、定住者を増やす活動を行っている現状です。
現在では、YouTubeやホームページなどで自治体のPR動画を配信している地域もあり、移住者へのアピールも以前に比べ積極的に行われ始めています。
街の商店の維持、経済活動が求められている
移住者を望む自治体のうち、都心から離れた地方郊外では特に、移住者による経済活動が期待されています。
労働人口の減少によって、商店街ではシャッターが閉まる店舗が増加するなど、街の活気が失われ始めている自治体も少なくありません。
そのため、空き店舗の活用やベンチャー企業誘致なども積極的に行われ、起業や店舗活用のサポートも整えられてきているのです。
また、テレワークやリモートワークの普及により、都心に拠点のある企業に勤めながら、地方郊外で暮らすことも比較的容易となってきました。
それにより、都心と郊外など複数の住居を所有する、「デュアルライフ」というライフスタイルも注目されており、移住後は地方郊外での消費活動を通し、地域経済の活性化に貢献することも可能となってきています。
自治体が行う「住む」に関する移住支援。
多くの自治体は地域活性化の観点においても、移住者を望んでいることがわかりました。
では、次に私たちが考えたいことは、住むための住居に関する内容です。
空き家となった実家などをお持ちの方は心配ありませんが、住む場所のない方は、物件の確保から自身で行う必要があります。
今回は、社会的意義も高くお財布にも優しい”空き家”に住むことを前提に、自治体の支援や仕組みを確認していきましょう。
自治体運営の「空き家バンク」
空き家を探す支援として、自治体がWEB上で運営する「空き家バンク」を利用することができます。
住むことが可能な地域の空き家情報を、写真付きで紹介するWEBサイトとなっており、希望の物件がみつかれば、直接空き家を購入することも可能です。
掲載数はさほど多くはないですが、自治体の運営ということもあり、比較的信頼性の高いサイトとなっています。
「空き家バンク」のデメリット
自治体の提供しているサイトですので、地域によっては登録の空き家物件数が少なかったり、物件の状態確認が自己判断となる場合がある点に注意が必要です。
また、自身で物件を現地確認し、値段交渉等を直接所有者と行う必要があります。
そのため、建物や空き家の専門知識に乏しい場合や、時間が確保しづらい場合などは、相談や交渉を任せられる、民間の空き家専門機関のサービスの利用を検討するのも、良策と言えるでしょう。
「空き家バンク」に関する自治体の補助金
自治体によっては、空き家バンクの契約物件に限り、補助金の支給を受けられるケースもあります。
【千葉県南房総市】のケース
空き家バンクにて契約した物件を改修をする際に限り、上限200万円で、総額の3分の2以内の補助金支給を受けることが可能です。
申請の際は、改修後に空き家バンクに登録が必要になるなど、条件がいくつかありますので、各自治体ごとに必ず確認を行いましょう。
参照:https://www.city.minamiboso.chiba.jp/0000013123.html
【秋田県秋田市】のケース
空き家バンクを介した契約物件に限り、上限50万から100万円、総額2分の1までの支給となっており、賃貸契約であっても上限20~30万円、総額2分の1までの受給が可能です。
参照:https://www.city.akita.lg.jp/kurashi/sumai/1007425/index.html
自治体によっては、他の移住者向け補助金との併用も可能ですので、上手く活用することで負担を大きく減らすことができるでしょう。
このほかにも「家賃補助」や、長く住むことで給付を受けられる「定住奨励金」など、自治体独自の補助金が地域ごとに整備されています。
事前にきちんと調べておくことで、お財布にも優しい移住の実現の助けとなるでしょう。
自治体が行う「修繕」に関する移住支援
空き家を所有している方も、新たに所有する方も、修繕やリノベーションに掛かる費用についても考えなくてはいけません。
耐震性などを満たした、安全性が確保された建物であれば問題ありませんが、そうでなければ必要な修繕を施すことが必須です。
こだわりの空間へのリノベーションに対してのサポートを含め、ここでは自治体の「修繕」に関する支援を確認していきましょう。
三重県名張市の自治体支援
三重県名張市では、移住促進のための支援事業として、リノベーション費用の補助を行っています。
具体的な金額の上限は100万円となっており、改修費用の3分の1までの受給が可能です。
転入後6カ月以内の交付申請など、いくつかの条件を満たす必要がありますので、他の移住支援と同様、事前の確認をしっかりと行うことがお薦めです。
参照:https://www.city.nabari.lg.jp/s043/030/080/20150417172111.html
山形県鯉川村の移住者向けリノベーション物件
珍しい支援として山形県鯉川村では、リノベーションの必要がない、リノベーション済の空き家物件を提供する取組みの実績もあります。
既に募集が終了していますが、対象物件があればホームページにて紹介・募集が行われ、選考を通過すれば、対象の物件に修繕の必要なく済むことが可能です。
応募条件は、鯉川村の発展に寄与する取組みを行うなどいくつかの条件がありますが、居住可能な期間も長く設定されているなど、移住者にとって非常に魅力的な移住支援となっています。
参照:http://www.vill.sakegawa.yamagata.jp/
修繕は空き家物件によれば、数百万掛かる場合もあり時間も必要です。空き家を活用して、できるだけお手軽に移住を行いたい場合は、修繕の必要のない物件を探すのも良策であると言えるでしょう。