相続する前に実家の価値を調べておく
まずは認知症になる前に家の処分方法について話し合う
親がまだ住んでいる家の処分方法の話は、非常にしにくいものです。
いくら相続した際に自分が住む可能性がないからといって、まだ親が元気にも関わらず「死んだらこの家どうしようか?」などと気軽に話すことはできません。
でも認知症を発症してしまうと、親の意思だけでは家の処分などができなくなり、成年後見制度で家庭裁判所の選んだ成年後見人をたてる必要があります。
家の処分だけでも大変なのに、さらにそれに加えて裁判所の手続きなどに時間がかかってしまう……。
親がこの家をどのようにしたいのか、意思を明確にするためにも、まだ元気なうちに話し合う必要があるのです。
話しやすいタイミングとしては、親族の葬儀や法事など。雰囲気としても相続の話などが出やすいため、話を切り出しやすいでしょう。
老人ホーム入居時には家の処分について話し合う
老人ホームに入居する前には、住んでいる家をどうするかについて話し合いましょう。
「たまには一時外出して自宅に戻りたいし…」などと考えていても、一度入居するとあっという間に1年がたち、空き家化する事例が多くあります。家は、人が1年住んでいないと空き家として認定されます。
後で詳しく説明しますが、持ち家がマンションの場合も、管理費などでトラブルになりやすいため、必ず老人ホーム入居前に家をどうするのか話し合いましょう。
実家の価値を調べる
いざ処分方法が決まっても、実家の価値がわからないのではどうしようもありません。
ここでは家の価値を調べるためにどのような点に気をつければいいのか見てみましょう。
≪市街化区域、市街化調整区域を確認する≫
あなたの実家は、市街区域にありますか?それとも市街調整区域にありますか?と聞かれて即答できる人は少ないと思います。
簡単にいうと市街化区域とは用途地域と呼ばれるその土地に建てる建築物の指定はあるものの、優先的に市街化をはかる区域です。
ですので、空き家を取り壊して新しく家を建てることができます。
では、市街化調整区域とはどのような区域なのでしょう?
市街化調整区域は市街化が進まないようにする区域です。そのため、新しく家などを建築することができず、土地として売り出してもなにも建築することができないので、空き家をそのまま売却するしか方法がありません。
このように空き家の売却は、区域によって最悪売ることができない場合もあるため、きちんと家の状況を把握しておく必要があるのです。
≪用途地域によって変わる売却相手≫
市街化区域の説明のところで前述しましたが、用途地域によっては売却相手が変わります。
住宅としてしか売却できない地域もありますが、店舗や宿泊施設などとして売却できる地域もありますので、用途地域はぜひ調べてから売却方法を検討しましょう。
用途地域の詳しい内容は下記の国土交通省のホームぺージでも確認できます。
国土交通省 みんなで進めるまちづくりの話
https://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/03_mati/04/index.htm
≪2018年から加わった田園住居地域とは≫
2018年から第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域をベースに創設された地域があります。それが田園住居地域です。
低層住居専用地域に建築可能なものに加え、一定の農業用施設(農業の利便増進に必要な店舗・飲食店、また農産物の生産・集荷・処理・貯蔵に供するもの、農産物の生産資材の貯蔵に供するもの)が認められるので、低層住居専用地域よりも特色をつけて売却することが可能に。
あくまでも市街化を図るための区域で、農地を守るための用途地域ではないので誤解しないようにしましょう。
≪意外な落とし穴 家の価値=売れる金額ではない!?≫
固定資産税や相続税などを決める不動産の評価額は、売却金額とイコールではありません。
土地の売却相場は、【土地の売却相場=固定資産税評価額÷0.7】で求めるのですが、必ずしもその価格で売れるわけではないのです。
実際、私の祖母の家も売却相場としては1千万円といわれましたが、買い手がついた金額は400万円でした。
売却をする際には、不動産評価額などのデータだけでなく、実際の市場と見比べて空き家の価値を把握することが重要です。
マンション空き家は要注意
マンションの空き家の場合、処分する前に注意しなければならないのは管理費や修繕積立金などが滞納されていないかという点です。
老人ホームなどに入居後、手続きがきちんとできておらず数年分滞納してしまうと、まずは清算をしてからでないと売却ができません。
滞納金額によっては、売却ではなく相続放棄を選択する必要もあるため、マンション空き家の場合は必ず管理費などの支払い状況確認をしましょう。