田舎への移住で可能性が広がる 空き家を使った住宅街での店舗オープン

東京から鹿児島県出水市に移住をし、パン屋を始めた松澤秀邦さんと妻の文子さん。

今回はお二人に移住への考え方や、田舎だからこそできるお店のあり方などを詳しくお聞きしました。

DIYレベルのMAXが10であるとするならば、自分達はレベル2~3だったとおっしゃる松澤さんご夫婦。

どのようにして、空き家である古民家を改装しスタイリッシュでおしゃれなパン屋「Humme」へと変貌させたのでしょうか。

移住を先に決めたからパン屋を始めようと思った

東京からなぜこの鹿児島県出水市に移住をされたのでしょうか。

松澤秀邦さん(以下 松澤秀邦) 一番の理由は、妻がここ鹿児島県出水市の出身で、「いつかは地元に帰りたい」と言っていたことが大きいです。しかし僕としてもずっと東京で暮らしていて、そろそろ違う場所に引っ越したい、そして『暮らしたい暮らし』をしてみたいと思っていました。何度かここ出水市に来るうちに、適度に田舎で、自然が綺麗だな、風景が綺麗だな…と。

もともと僕は横須賀市追浜の出身で、地元も自然が多いのですが、やはりこことは違います。出水市は広くて空も山も海も美しいです。
そんな風景を見ながら「ここに住んでみたい」と思えたことも、理由でした。

「移住をしたい」が最初のきっかけだったのですね。ではなぜパン屋に転職されたのでしょうか。

松澤秀邦 移住を考え始めた頃は、まだ新型コロナウイルスもなくて、エンジニアがリモートで仕事を続けるというのは現実的ではありませんでした。
そのため、エンジニアではなく何か出水市に来てできることを仕事にしようと。
普段からパンを焼いたり、料理をしたりするのが好きだったので … それを職業にできないかなと思いました。

そこで、一旦はエンジニアを辞めパン屋に転職をしたのです。
技術を学んでから移住をして、パン屋をやろうと考えていました。

松澤文子さん(以下 松澤文子) 当初はせっかく東京にいるのだから、オリンピックを観戦してから移住をしようと話していたんです。
しかしこのコロナ禍でオリンピックも延期になってしまって…。それなら今移住してしまうかと。

松澤秀邦 私はその少し前にエンジニア職に戻っていたんです。今後の働き方ついて会社にも相談をしていたのですが、それならフルリモートでやったらいいじゃないかと話を頂いたので、鹿児島でリモートをしながら移住することが可能になりました。

2020年の8月に移住をして、店舗準備をしながら2021年3月までは他の会社員の人と同じように月曜日から金曜日まで朝から晩まで8時間働いていたのですが、4月にパン屋『Humme(はむ)』をオープンしてからは月のうち2週間はエンジニアとして働いて、2週間はパンを焼いているという生活になったのです。

なるほど。コロナ禍によって移住が早まり、さらにはリモートワークが可能になったことで兼業も可能になったのですね。

松澤秀邦 そうですね。
当初は1ヶ月鹿児島でパン屋をやって、1ヶ月は東京でエンジニアをやってと二拠点生活もいいかなと思っていたのですけど、コロナ禍となって今の生活が可能となりました。

ー実際移住をしてみて、何か大変なことなどはありましたか?

松澤秀邦 鹿児島の場合、多少言葉で困ることはありました(笑)。
ただ、それよりも田舎に便利さを求めると大変かもしれません。
僕は東京にいる時は、外に出歩いてカフェや買い物などいろいろなお店に行くのが好きで、あまり家にはいないタイプでした。しかしここでは、気軽にそうやって行ける場所はありません。
あっちに行ってこっちにも立ち寄ろうとかが、田舎では難しいです。
行きたいところを見つけても車で片道2時間かかるとか … そういう不便さを覚悟するのは大切だと思います。
しかし、そうした不便さを受け入れるともっと違う田舎の楽しみが出てきます。畑仕事であったり、家の改装であったり。最近ではドライブなんかもそうですね。
ここでは、暮らしを楽しむことができます。

田舎だからこそ、駅から遠いことが店のデメリットにはならないという事実

パン屋をはじめる場所として、なぜ住宅街を選ばれたのでしょうか。

松澤秀邦 最初は、店舗物件を探していました。
商店街のいわゆる店舗でしたので、東京に比べれば家賃も多少は安いのですが、それでもそれなりに家賃もかかるし狭いな … と。

松澤文子 そんな時、不動産屋さんと物件を車で巡りながら、車内でふとこんなことを言われたんです。「田舎は車移動が基本だから、駅前や市街かどうかは関係ない。山の中だろうがなんだろうが、お店が良ければ人が来るよ。」と。
私も出水市出身だからそれが分かっていたはずなのに、すっかり東京の生活になれて店の場所にこだわってしまっていました。
「ここんしは、どげでんいっど(ここの人達はどこでも行くよ)」という言葉でハッとしたんです。今はインスタとかSNSの時代で、そうした広告活動が自分でできてしまいます。
田舎では、駅が近いとかそういうのは、あまりメリットにはならないんですよね。

松澤秀邦 そんなことがあって、市街から離れていてもここならやれるかもって思い、ここに決めました。

そんな住宅街にある空き家の中で、古民家を選ばれたわけですが……選ぶ時の注意点などありましたか?

松澤秀邦 物件によっては、床が傾いていたりする家もあったので、そういう家は危なそうだなと思いました。
この古民家は知り合いの持ち家だったので2回ほど見に来たのですが、2~3年前まで人が住んでいたこともあってか、古いけれど住めるし、なんとかなりそうだな…と。

松澤文子 契約を決める前、建築会社の知人の方に家を見てもらいました。どうしても自分たちの知識だけでは、心もとなかったので。
「ここに店舗をかまえてゆくゆくは住んでもいいようにしたいのだけれど大丈夫ですか?」と聞いたところ、大丈夫だと言われました。
床下に一部シロアリがいるところはありましたが、そこまでひどくなかったです。傾きもないので、そのまま基礎を使うことができると言っていただけたので、契約に踏み切ることができました。
こうした家のチェックなどは、プロに見てもらうことが必要だと思います。

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