「空き家問題」は、地方の過疎地域だけの問題ではありません。人口流入の激しい都内でも「空き家」は増加の一途を辿っています。そんな中、東京23区にある「足立区」の取り組みが注目されており、行政と民間が上手く連携を取ることにより解決した事例が報告されています。「空き家」を所有している又は、「空き家」になるだろう「家」に住んでいるのは、ご高齢の方が多いのが現状。こういったお年寄りの方へのアプローチに行政の力が有効なのです。今回は、足立区の例を参考に「空き家問題」への対策に付いて一緒に考えていきましょう。
都内にも「空き家」が増える日本の不思議!
「家」余りでも、新しい「家」は建ち続ける奇妙な国
日本が世界に例をみない、「空き家大国」であることを知っていますか?
総務省統計局の調査によると、2018年時点での日本の「空き家」総数は、およそ849万戸。
総住宅数6240万戸における空き家の占める割合は13.6%と、1948年以来5年毎に行われてきた調査の中で過去最高の数値となっています。
日本よりも国土の広いアメリカでも、空き家率は10%前後、イギリスは3~4%、ドイツはわずか1%前後です。(不動産近代化流通センター「不動産コンサルティングに関わる海外調査」2013年データより)
諸外国と比較しても、日本の「空き家率」は高い数値であると言えます。
また、「空き家」の増加だけでなく、新規の住宅数も5年前の調査時より2.9%増加しており、1世帯当たりの住宅数は1.16%と「家余り」の状況は顕著です。
参考:https://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/201503/2015-3-1.html
参考:https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/kihon_gaiyou.pdf
なぜ、日本の「空き家」は増え続けるのか?
① 少子高齢化と核家族化、根強く残るマイホーム思考
戦後の高度経済成長期に形成された「持ち家」思考が、未だ日本社会には残っています。
少子高齢化が進み人口は減少していく中で、昔のように2世帯、3世帯家族は減り、核家族が主流となっています。
実家の「家」には、高齢の両親が住み、子世代もまた新たにマイホームを持つというスタイルが多く、実家の「家」は相続後は、「空き家」になってしまうケースが多々あります。
人口は減っていく中で、「家」は建ち続けていくので、自ずと「空き家」は増えていくのが現状です。
② 新築信仰と不動産の収益モデル
「マイホーム」が欲しい!と考えることは、不思議なことではなく、誰しもが一度は憧れるもの。
そもそも、「マイホーム」を持つことは、悪いことでも何でもありません。
問題なのは、「空き家」が放置されたまま、どんどん別の新しい土地を開拓し「家」が建てられしまうことにあります。
高度経済成長期の頃、地方から都心に働きに出る人が多く、都市部は特に住宅が必要な状況でした。
そのため、「新築物件」がどんどん建設され政府も後押しをしました。
「新築物件」を建てれば建てるほど経済は潤い、その収益モデルが今も尚、令和の時代にはそぐわないまま後を引きずっていると考えられます。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001156033.pdf
③ 「中古物件」流通市場が弱い
「新築物件」の流通市場に比べ、「中古物件」の流通市場が日本では弱いことも要因の一つ。
欧米諸国の場合は、新築と中古の流通シェアは日本とは逆で、「中古物件」の流通の方が主流です。
日本では、全住宅流通市場における「中古物件」の流通シェアは僅か、14.7%。対して、アメリカは83.1%、イギリス87.0%、フランス68.4%となっています。
日本の場合は、「新築物件」の販促の方に力を入れる業者が多く、「新築物件」の販売に対するノウハウの方が蓄積されています。
災害の多い日本では、「家」の耐久性の問題などから「中古物件」より「新築物件」市場の方が有利という意見もあります。
しかしながら、「空き家」が増えていく中で、「中古物件」市場は今後、大きく拡大していく伸び代があるでしょう。
参考:https://www.mlit.go.jp/common/001156033.pdf
参考:空き家も中古物件も。あなたが知るメリットデメリットは正しい?マイホーム探しは失敗しない!|アキカツマガジン
④ 固定資産税の減税制度
そもそも、「空き家」は何故、そのまま残されてしまうのか?
人の住まなくなってしまった「家」は老朽化が急速に進みます。
「放置空き家」は、ゴミの不法投棄、ネズミややぶ蚊、スズメバチなどの害虫の大量発生。
災害による家屋の倒壊など、周辺環境に多大な悪影響を及ぼします。
「放置空き家」にしないよう、「空き家」所有者は定期的なメンテナンスや管理の責任があり、その負担に頭を悩ませている所有者もいるのです。
メンテナンスや管理が負担であれば、「空き家」を取り壊し、更地にすれば良いと考える人もいます。
しかしながら、更地の場合は、「固定資産税の減税制度」が受けられず、税金が増額してしまうのです。
そのため、人が住まなくなっても「空き家」は、建物がそのままにしてあることが多いのです。
⑤ 「空き家」「空き地」は個人の所有物という考え
日本は、土地や建物に対する「個人所有」の意識が強い国です。
諸外国では、自己所有の土地や建物であっても「共有資産」であるという認識が根底にあり、不動産市場が流動的に動きます。
資産を放置せず、上手くみんなで活用し、必要な人や施設に流用していく考えが根付いているのです。
しかし、日本では「個人所有」の意識が強いため、手放さず、そのまま放置して持ち続けるという人も多くいます。
個人で「空き家問題」を解決するだけでなく、国や地方自治体、不動産業界が一体となって、眠れる資産である「空き家」を活用する術を模索する必要があるのです。