宮崎県美郷町の空き家対策はインスタグラム!?所有者と活用者がWINWINになる空き家の活用とは

今回お話をうかがったのは、宮崎県美郷町役場で政策推進室・定住促進を担当されている川西邦明さん。美郷町で空き家の対策と移住相談を一手に引き受け、インスタグラムを活用して空き家情報や移住者との空き家見学の様子、求人情報など発信しています。
柔軟な発想とチャレンジ精神で取り組んでいる空き家対策の現在の成果、そして成功のためのポイントとは?空き家所有者へのアプローチの方法や所有者のニーズに徹底的に寄り添った対応など、自治体のモデルケースともいえる取り組みに迫ります。


■宮崎県美郷町について
宮崎県の北部にある自然豊かな町。人口約4,600人。

白抜きの部分が宮崎県美郷町

役場を通した移住者の推移については以下

<平成三十年度>
移住者世帯数 3世帯(人数4人、内子ども人数0人)
大人平均年齢 54歳

<令和元年度>
移住者世帯数 7世帯(人数10人、内子ども人数2人)
大人平均年齢 47.6歳

<令和二年度>
移住者世帯数 12世帯(人数20人、内子ども人数5人)
大人平均年齢 41.1歳

<令和三年度>(年度途中9月末時点)
移住世帯数 12世帯(人数22人、内子ども人数3人)
大人平均年齢 40.8歳

宮崎県内高齢化率NO.1に挑む、活用者のニーズに寄り添った美郷町の空き家対策

広い空と伝統のお祭りが残る宮崎県美郷町

ー 宮崎県美郷町とはどんな町ですか? 

川西邦明さん(以下 川西) 美郷町は、旧南郷村、旧西郷村、旧北郷村の3村が対等合併してできた町で、宮崎県の中で高齢化率NO.1です。人口減少も激しく、平成18年に3村が合併した際に7000人だった人口も、現在は4600人。

風土的なものでいいますと、今でもお祭りや神楽などが残っていて「お月見泥棒」と呼ばれる、子どもが家々を練り歩いてお菓子や野菜などをもらう行事などもあります。

美郷栗や備長炭などが特産品で、庭先でバーベキューをする際にはどの家でも備長炭を使うのですが、移住されてきた方が備長炭を使うことに非常に驚かれることも…。
町の90%以上は山林ですが、平地も多いので、空が広く開けている田舎といった感じです。

居住だけにこだわらない、柔軟な空き家対策

ー 美郷町では空き家対策はどのようにおこなっていらっしゃいますか?

川西 空き家の活用については、空き家バンクがメインです。

美郷町の空き家バンクは、通常の空き家バンクと少々仕様が違います。通常の空き家バンクは住居使用がメインですが、美郷町の空き家バンクは住居使用だけではありません。住居以外でもなんでも使用OKです。

セカンドハウスにしてもいいし、仕事で使ってもいいし、店舗にしてもいい…と完全フリーとなっています。

前に「ADDress」というサービスを見て、これからは自分の想像を超える空き家の活用がされていくんじゃないかと思いました。
そこで、美郷町の空き家バンクも住居だけで縛っていたら、面白くないなと思ったのです。

通常は移住対策と空き家対策を一緒に考えますが、あえて分けて考えることで空き家バンクをフリーにできると思いました。
完全フリーにしてあれば、需要にも応えられますし、家主は管理の大変な空き家を早く活用してもらえる。つまり利用者にも所有者にも両方にメリットが出るのです。

すでにセカンドハウスの利用が1軒出ており、需要の高さを感じています。 

ー 他には何か空き家の活用例などはありますか?

川西 美郷町に、空き家を活用したゲストハウスができました。

ゲストハウスをはじめたのは、移住してきて10年以上になる家族の息子さんです。移住当時はまだ小学生だった彼が大人になり、こうして空き家を活用してゲストハウスにしてくれました。
また企業から研修先として空き家の活用がしたいと相談があり、先月それも決まっています。

空き家を活用する上で、一番重要なのは空き家を活用して美郷町民の人が幸せになることです。空き家対策は、町民の幸せに繋がらなければ意味がありません。
企業の話が来た時も、町民の方が喜んでくれるんじゃないかな?と思いました。

活用者の賃貸需要に注目。所有者も得する提案でWINWINの空き家対策

美郷町の風景

ー 美郷町の空き家バンクには売買だけではなく、賃貸もありますがこれはなぜでしょうか。 

川西 単純に言うと、賃貸の需要が多いからです。

移住希望者の方は、知らない町に来てすぐに家を購入するというのはハードルが高いので、まずは賃貸からという方が圧倒的に多くいらっしゃいます。
空き家の家主の方と話すときに、賃貸の需要が多いですよとお伝えして「じゃあ、賃貸でもやってみようか」となって賃貸物件の掲載が可能になっているのです。

もちろん、空き家の家主の方の中には、空き家自体を手放したいと思っている方がいるのも事実ですので、売買だけのケースになる方もいらっしゃいます。

また、賃貸の相談をした際に家主から「修理とかリフォームをせんといかんちゃろ?」と言われるのですけど、そこは無理してしなくていいよと。
DIY物件として出すことで利用者の方でリフォームをしてもらい、その代わり家主の方には家賃をさげることを提案しています。

所有者にとっては、放置していたら税金ばかりかかっていた空き家から家賃収入を得ることができてプラスだし、利用者としても自由にDIYができて安く借りることができる。
両方がWINWINになるように考えることが、空き家バンクにおいて大切なことだと思います。

活用者ひとりひとりのニーズに寄り添うことをモットーに

ーここまでお話を伺っていて、美郷町の住人の幸せを願い、空き家の所有者にも寄り添う……川西さんのあたたかで丁寧な対応を感じました。 そんな川西さんが、未来の住人かもしれない 移住希望者の相談を受けるときに、大事にしていることはありますか?

川西 インスタグラムに情報を載せるときに「おまかせあれ。美郷町の空家相談は全てあなただけの『オーダーメイド仕様』」と書いているのですが、このフレーズが美郷町の空き家対策への考えですね。

たとえば、うちでは移住ツアーを大人数ではなく一組ずつ行っています。
移住ツアーって、どうしても大人数でするじゃないですか。そうすると、一人一人の悩みに寄り添えないのです。

移住には、住居・仕事・子育て・コミュニティの4つの悩みがあると思っています。移住してくる人が一人暮らしなのか、お子さんがいるのか、高齢者なのかなどでこの4つの悩みは変わってくるのです。

お子さんがいるなら、学校を案内して実際に見てもらうことで実感して貰えますし、趣味をもっている人は同じ趣味の人を紹介して、マッチングさせることでより世界が広がるなどなど。そうやって、おひとりずつの悩みに答えられるように準備しています。

正直言って、要領が良いやり方かと言われれば、要領は悪いです。もっとうまいやり方もあるのかもしれません。
しかし、僕からみたら相談してこられる方は移住者の一人に過ぎないかも知れませんが、移住者の方からしたら移住担当者は僕一人なんですよね。だからこそ「ちゃんとしっかり対応をしないといけないな」と思っています。

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