空き家バンクとインスタグラム、ネット上の情報が活用者だけでなく所有者も動かす
チラシから始まる活動で、空き家バンクからの問い合わせが急増
ー 町内の空き家情報などはどのようにして集めていらっしゃいますか?
川西 現在美郷町では、空き家件数が平成25年の段階で、350戸でした。今では、大分増えているのでは無いかと思います。
しかしなかなか空き家の情報を得る機会はないので、年に1回固定資産税の課税通知書をお送りする際に、チラシを同封して家主に直接訴えかけています。
実は空き家が美郷町にあっても、家主の方は町外にいる方が多く、年に1回の課税通知書を送るときしか家主にアクセスができません。
あとは町民の方から、間接的に空き家の家主の方に伝えて貰えたらありがたいな…と思って、広報誌で空き家情報や美郷町の需要について訴えかけています。
広報誌は、もちろん町外への発信でもありますが、町内に対しても「空き家ってこんなにも需要があるんだよ」「空き家は不足しているらしい」「空き家バンクって最近よく聞くよね」という情報発信をして、町民の方の意識に訴えかけられればと思っています。
移住相談の方のうちの9割は空き家バンクを見て来てくださっている方ですね。
ー 空き家バンクが9割とはすごいですね。空き家バンクではどのようなことに力をいれていらっしゃいますか?
川西 実は空き家バンクを始めた当初は、移住相談の件数も年間で25件くらいでした。なぜなら、写真もちゃんと載っていないような状態のサイトだったので…。
ですので、ちゃんと写真も載せようと思っていろいろと掲載様式や撮影方法などを調べました。
どうしても自分の知識や、他自治体の空き家バンクの写真では満足ができなかったので、不動産経験のある役場の後輩に写真の撮り方を聞いたり、撮影方法について勉強したり。
空き家の魅力を伝えられるように、室内を撮影する角度や、光のある時間帯などそうした工夫を今でも地道にやっています。
そうした写真を空き家バンクに掲載したところ、相談件数が目に見えて分かるほど増えました。
令和二年度で96件、令和三年度は12月13日の時点で116件です。ハイペースで相談が増えてきて、移住相談はだいたい年明けから忙しくなるのが常なので、「来年はどうなっちゃうんだろう」と怖いくらいです(笑)。
10月にも、3~4軒空き家バンクを通して物件の契約が決まりました。
ただ、決まってしまうとその分空き家バンクから物件が少なくなってしまうので、それも悩みです。
空き家バンクに掲載する空き家を増やしたいと思いながらも、供給できる空き家が追いつかないため掲載がなかなか難しく……。
もちろん美郷町に空き家は、まだまだあります。
とはいえ近所の方から「空き家になっている」とご連絡を頂くものの、実は家主の方が施設に入っているだけだったりする場合も。こうした家は、貸してしまうと家主が施設から帰ってこられるところがなくなり地域との接点がなくなってしまうため、貸し出せないのです。
家主や地域の方が町と関わろうとしてくれる気持ちは、役場としてはありがたいし尊重したいと思っています。
それなので、特に空き家の中でも管理を持て余しているような空き家にフォーカスをして掘り起こせればと思っています。
インスタグラムで発信する活用希望者のリアルとその狙い
ー インスタグラムで空き家情報を発信されているのが印象的ですが、始めた経緯などをおしえてください。
川西 空き家の需要はあるのですが、空き家の供給がおいつかないので、インスタグラムをはじめました。
町民の人は,美郷町に本当に人が来るのか?需要があるのか?と懐疑的に思っています。こんな田舎に誰もこないのではないかと……。
だからこそ、しっかりその需要をリアルに見せるという狙いがあります。案内をしている様子を見せているのも、それが理由です。
インスタグラムの効果がどれくらいあるのかはまだわかりませんが、年間20軒ペースで空き家バンクが登録されています。ちょっとずつ浸透してきているのかも知れません。
ー 美郷町のインスタグラムでは、求人情報も掲載されていますよね。これもそうしたネット上での情報の完結ということなのでしょうか。
川西 テレワークは確かに増えましたが、移住するにあたって一番の心配といえば仕事があるかどうかではないかと。ですので、求人情報も一緒にインスタグラムに掲載しています。
これも僕が地道にアップしているのですが、毎週月曜日にアップすると決めて、三日坊主にならないように……。
求人情報をハローワークの情報からピックアップして、明確化することで利用者にも使いやすいですし、僕自身もインスタにアップすることで、どれくらいの求人情報が上がっているのかと言うことの把握にもなります。
求人情報を掲載することが、結局移住の仕事にも繋がるんですよね。