【対談】〜延岡の未来をつくるPRIDE〜 延岡市長 読谷山洋司×元競泳選手 松田丈志 

目次

限られた資源をいかしてきた歴史
そして資源をシェアする時代へ

■今ある資源を有効活用するしたたかさ

ー松田さんはここ延岡の東海スイミングクラブで水泳を始められたということですが、当時の練習環境などはいかがでしたか?

松田)そうですね、やはり東京や大阪といった大都市と比べると環境面では少し劣るとは思います。
しかし東海スイミングクラブで取材をしていただいた時などは、「ここが僕のホームグラウンドです。だからどうぞ見てください。ここから自分の水泳はスタートしたんです。僕は子供の頃から山を駆け巡りその中にある川で水泳を覚えました。もちろん都会で素晴らしい環境にあればまた違った人生があったかもしれないけれど、自分はこの自然の中で水泳を覚え、そして体を鍛えられて、そのことが本当にプライドです。」というようなお話をしています。
生まれる場所は選べませんが、先ほどお話したように、世界にチャレンジするスピリットのある延岡という場所が僕の誇りですね。

ーそうなんですね。その一方で、子供たちに素晴らしいスポーツのできる環境を整えてあげたい、というビジョンがあるとも伺いました。

松田)環境を整えるという話では、やっぱり今ある資産を正しく使うということは特に大事かなと思っています。水泳をやっていたのでプールの話が多くなりますが、日本は結構プールがいっぱいあるんですよ。県立のプールもあるし、市区町村で持ってるプールもある。今ある資産を最大限有効活用するという意味では、本当はなにも全ての学校にプールがある必要はないと思うんですね。子供たちが年間を通して水泳を学べる場所があればいいと思うので、そのためにシェアする仕組みを整えていったりして場所を有効活用する方法をもっともっと広げていくといいんじゃないかなと思っています。

スポーツを習う環境もそうですね。学校の授業で水泳を専門的に習っている人とまだまだ全然泳げない人が同じ時間に同じように習う、というのはやっぱり多少無理があるので、学びたい人はその人に適したタイミングで学べるという方向にしていく必要があるかなとも思っています。

松田丈志さん

■行政の役割として施設の整えも

松田)たとえば大学の施設なんかをもっと有効活用をして市民に開放して、という方法などもあると思うんです。そういった環境で子供たちから大人までがスポーツに触れられたらいいなと。

市長)そうですね。今も、例えば学校にプールがなくてもスイミングのスクールで学校の水泳の授業ができたり、あるいはこちらの学校は生徒が少なくプールもないけど、別の学校と合同授業にすることで一緒に水泳を学ぶことができたりしています。

そういった経験を通して水泳だけではなくいろんな人間関係を学ぶだという可能性もあると思いますので、いろんな施設をうまく組み合わせていくというのは少しずつ今やり始めたところです。もっともっとやっていかなきゃいけないなと思いますし、だからといって古い施設が古いままでいいということではないので、計画的に新しくしていかなければいけないとも考えています。

■「今までの環境を生かしてきた人の声を受け継ぐ」という役所の役割

ー環境を整える、というのは行政の大切な役割ですね。

市長)そうですね。環境を整える、というのはすごく大事でやっていかなければいけないことですけども、同時に、今までの環境を生かしてきた人たちの生の声というのを受け継いでいくというのもまた役所の仕事だとと思っています。

松田さんのエピソードですごくいいお話だなと思うものの一つが、「途中でもうやめようと思った。やめようと思ったけど、やっぱりやったんだ」というもの。みんな、オリンピックでメダルを取る人というのは特別な人で、自分たちと関係ない世界の人だと決めつけて「あの人たちが頑張ったって私と関係ないんだ」って思いがちですが、そうじゃない。オリンピックでメダルを取るような人にもやっぱりみっともないところや恥ずかしいところがあったり、泣き言を言ったりすることもあるけれど、諦めなかったから夢を実現できた。そこを、世界に挑戦するプライドのある延岡だからこそ皆さんに伝えるという義務が、私たち行政にもあるのかなと思いますね。

昔の延岡、今の延岡、そしてこれからの延岡

■昔の延岡は、おしゃれしないと来られない街!

延岡市 お祭りの様子

ー本日対談をしているこの駅前は、かつて多くの人で賑わう商店街であったと伺っています。松田さんは延岡駅前についてどのような印象をお持ちですか?

松田)僕の実家は山の山奥の田舎の方なんで、この辺はもう「町」なんですよ。「今日ちょっと町に行ってくるわ!」と言って出かけてくるところなんです。
おしゃれしないとこの辺は来れない感じでしたから!今一番持ってるかっこいい服を着て山下新天街に行く、そんな場所だったと思います。

自分の親世代の人が話していたり、僕もうっすらと子供の頃の記憶に残ってるのは土曜の夜市が毎週のようにやっていて、すごい人でもみくちゃにされながら歩いているような景色ですね。あとは大きな花火大会のときのにぎわいとかですね。そういう、かつてはすごく賑やかだった街という印象です。

■減った人口と賑わい。しかし駅前のアップデートなど未来へのあゆみも

ーでは、今の延岡についてはどのような印象でしょうか?

松田)かつてはあったにぎわいが今はちょっと薄れてきているっていうのが、やはり現状だと思います。それは当然人口が減ってるからというのはありますが、その中でも人とエネルギーが集まって賑わうということは可能なんじゃないかと。そういう街にまだまだなっていくことができるんじゃないかなと思ってますね。

延岡に帰ってくるたびに思っているのが、なんかどんどん見晴らしが良くなってきてるな…と。見晴らしが良くなってきてるなっていうのは、建物が減って駐車場が増えてたり、といったことです。
当然、日本全体の人口が減っている状況ですから空き家も増えているんですよね。実際、今日実家で父親と「今日の午後は空き家問題についての仕事なんだ」という話をしたら「そういえばうちの2軒先の誰々さんも亡くなって、今は空き家なんだよね」というような話がポロポロと出てくるわけです。だから延岡という町を今後盛り上げていくために僕らにどんなことができるのかなっていうのは、市長にもぜひ1回聞いてみたいなと思っていました。

ー本日対談を行っているここ延岡市コワーキングスペースは2022年の3月にオープンしたということで、こういった新しい施設ができるのは賑わいを取り戻すきっかけになりそうですね。

松田)最近は延岡駅前が新しく綺麗になっていたりして、もう一度盛り上がろう!という空気を感じています。昔の延岡の賑わいを覚えているだけに再び延岡がかっこよくなって盛り上がってくるってのは非常に嬉しいですね。

対談が行われた延岡駅西口街区ビル

■延岡の魅力は市民!素直な子供たち、協力的な人々

ー松田さんは出身校などでも公演やお話をされているということですね。

松田)さきほども僕の母校の学校で、先輩としてエールを送りに行っていました。
もうすぐ卒業式なのにコロナがあって学校行事が予定通りにはできていないという状況、ということで、僕が水泳を通して自分を高めていくためにやってきたことや大事なことというのを伝えさせてもらいました。本当に素直な子供たちで、反応も良くてかわいい後輩だなと感じましたね。水泳部もあって、久世コーチたちがやってるスイミングクラブで泳いでいるという子もいて嬉しかったです。

市長)延岡の財産の一つというのはこの素直な子供たちだと思います。街を歩いたらわかると思うんですけど、子供たちは知らない大人に挨拶するんですね。そういう子供たちがいる町で、大人たちも本当に地域のことになると一致団結して協力してくれるんです。

ー大人が一致団結、というとどのような場面でしょうか?

市長)少し話が飛びますが、デジタルが一般化した世界でいい政策を作ろうと思ったときには、市民の皆さんの協力に基づくデータを集めてそこからいろんな結論を導き出すんです。例えば交通も人の動きもちゃんと分析して的を射た交通動線を再度設計するとか。そういった際には、その地域の人に協力していただいてデジタルのまちづくりをしています。

実際、延岡は町も2021年の8月に政府からスマートシティに選ばれており、そういったプロジェクトを東京大学と慶応大学などと合同で行っています。しかしこういった取り組みは、地域の人たちが協力してくれないと意味がないんですね。
ですが延岡は本当に、「街のためなら、世の中のためなら」ということで行動してくれる街なんです。新しい課題を解決するために力を合わせてください、とご協力をお願いすればみなさんが心の底から答えてくれるという街なんです。
デジタルの時代であるからこそ、実証事業をさらに実証から実装まで持っていけるという意味で延岡の「みんなが協力し合う町」という部分が最先端の街になる可能性なんじゃないかなと思います。

■これからの延岡:挑戦する街、そして挑戦する人を応援する街へ

延岡市長

ー挑戦していく町ということで、行政でもその挑戦を応援する仕組みがあると伺いました。

市長)はい。第2部でも詳しくお話するのですが、空き家を使う場合に応援する補助金や制度を設けたり、あるいは新しい会社を立ち上げるときの応援の仕組みを用意しています。その他の補助金などの仕組みを用意していますので、皆さまに活用していっていただきたいですね。

その仕組みとともに大切なものが、やはり市民の皆様方が諦めない気持ちだと思っています。何か諦めるのが大人の対応だという風潮がありますが、そういうことじゃない。そのみっともないことや恥ずかしいこと、それが後でかっこいいことに繋がるんだ、と信じてもらう。それが大事だと思いますし、そういう人たちが現にいるんだということを伝えていくことで、諦めない気持ちを持っていただければと思っています。

ー未来に挑戦していく街、ということですが、行政として延岡の未来についてのビジョンをお聞かせください。

市長)空き家を活用しようというテーマや新しく挑戦しようというエールを延岡に送る意味でも、松田さんのような世界に挑戦して成功された方のお話を自分のこととして落としこむようなチャンス・機会をもっともっと増やしていくということも大事だと考えています。

それを話だけで終わらせずに、私も頑張る、と。そしてそういう人たちを見て、また次の人が頑張らなきゃという気持ちの連鎖みたいなものを繋げていくっていうのが一番かなと思っています。ですから市の行政の役割として、そういった諦めない気持ちを育むということを子供たちの力も含めてやっていくっていうことが必要かなと。

新しい仕組みで「延岡こども未来創造機構」という社団法人が立ち上がる予定です。学校だけじゃなかなかできないことをやっていこう、親だけじゃできないことをやっていこうという仕組みを作りました。そういう取り組みを通して子供たちと一緒に、みっともなくてもいいんだよと、あるいは他の人と違ったっていいじゃないかと、そういう気持ちを延岡市全体で育んでいきたいと考えています。

(続)

▼ 第2部はこちら ▼

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