今住んでいる家を子どもにゆくゆくは相続させようと考えている方も多いでしょう。その家が空き家になった場合、空き家を引き継いだその後、次の世代に起こり得るリスクを知っていますか?
事前に娘や息子世代に起こる問題を知っておきましょう。ここでは、空き家を所有するリスクとその対策を詳しく解説していきます。
なぜ、今のうちに知識を知っておく必要があるのか
自分がいなくなった後、住まなくなった家を放置すると、どうなるのか真剣に考えたことがありますか?
空き家となった家を放置したままにしておけば、せっかくの資産も「負の遺産」となってしまいます。固定資産税による金銭的な負担から、ご近所トラブルの原因になったりと、様々な負の要因を引き起こしてしまうのです。
子ども達や次の世代に、「放置空き家」という「負の遺産」を残さないために、何より自分自身が背追い込むことのないように、空き家相続に対する対処法を事前に考えておくことは、とても大切です。
リスク① 放置することで起こる金銭的な損失!
支払い続けなければならない固定資産税
固定資産税とは、毎年1月1日の時点で土地や家屋を所有している人が、所有する土地や家屋の所在している市町村へ支払う税金のことです。もちろん空き家も例外ではありません。土地や家屋を所有している間は、毎年毎年ずっと支払い続ける義務があります。
空き家を放置すると固定資産税が最大で6倍になる!?
増え続ける空き家対策の一つとして、2015年5月に「空き家対策特別措置法」が施行されました。空き家を放置したままでいると、「空き家対策特別措置法」により「特定空き家」に指定され、固定資産税が最大で6倍になる可能性があるのです。
そのカラクリをご説明します。
参考: 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」 https://www.mlit.go.jp/common/001080534.pdf
固定資産税は以下の計算式で決められています。
固定資産税=課税標準額×税率1.4%
課税標準額とは、各市町村が決めている土地や家屋に対する資産の評価額です。課税標準額は3年に1度、見直しが行われるため固定資産税も変動します。
課税標準額は、土地利用が人が住むための家屋目的の使用であれば、税負担を減らすための以下の特例処置が設けられています。
【住宅用地の特例措置】
小規模住宅用地 | 住宅やアパートなどの敷地利用で、200㎡以下の部分 | 価格×1/6 |
一般住宅用地 | 住宅やアパートなどの敷地利用で、200㎡を超える部分 | 価格×1/3 |
参考:東京都主税局 <固定資産税・都市計画税(土地・家屋)> https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/kotei_tosi.html
つまり、「空き家対策特別措置法」により「特定空き家」に指定された場合は、この住宅用地の特例措置の対象外となり、課税標準額が最大で6倍になってしまい、固定資産税が大幅に増加してしまうのです。
強制対処により発生した費用の請求をされることもある
空き家対策を行わず放置を続けた結果「特定空き家」に指定され、所有者が改善のための対応を怠り、現状が改善されなかった場合、強制的に空き家の取り壊しなどが行われることもあります。その際に発生した費用を請求される場合もあるのです。
「特定空き家」とは一体どのような状態のことを指すのか
何としても避けたい、「特定空き家」の指定。「特定空き家」に指定される状態は一体どのような空き家の状態なのでしょうか?国土交通省のガイドラインに以下の通り示されています。
「特定空家等」とは、 ①倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態 ②著しく衛生上有害となるおそれのある状態 ③適切な管理が行われないことによ著しく景観を損なっている状態 ④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態 にある空き家等をいう。(2条2項) |
引用:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
リスク② 近隣の住民によるクレームや損害の恐れ!
空き家を放置することにより、周辺の環境や安全に悪影響を与える恐れがあります。具体的な事象を考えていきましょう。以下の事例が想定される空き家は「特定空き家」に指定させる可能性も高まります。
放置空き家周辺の衛生状態の悪化
管理が手薄になった空き家には、ゴミの不法投棄、害虫や害獣が発生しやすくなります。それに伴い、異臭や景観の悪化など周辺環境に悪影響を及ぼします。
空き家の倒壊や破損による危害
空き家の場合、老朽化や台風などの災害による家屋の倒壊や破損も起こりうる可能性が高いです。屋根の瓦が落ちてきたり、窓ガラスが割れるなど想像に難くありません。空き家が破損したり倒壊した際に、万が一、近隣住民の方に危害を与えてしまった場合、空き家の所有者に損害賠償責任が発生するのです。
犯罪の誘発
空き家を放置したままで、管理に目が届かなくなると思わぬ犯罪に巻き込まれてしまうことも考えられます。放火や知らぬうちにホームレスや犯罪者が住みついてしまったりと、周辺環境の治安の悪化を引き起こすこともあるのです。
いずれの場合にも近隣の方の生活に悪影響を及ぼし、クレームを受けたり被害や損害を与えてしまうケースがあります。空き家を放置することは、所有者である自分や相続させる子ども達だけでなく、第3者にも迷惑をかけてしまう恐れがあることをしっかりと自覚しておきましょう。
リスク③ 経年劣化に伴う資産価値の低下
放置したままの空き家はどんどん資産価値が下がっていく
人が住まなくなった家は、老朽化のスピードが早いです。適切な管理や対策を取らず、放置したままでいると、どんどん建物の資産価値は下がっていきます。また、空き家のままで廃墟化してしまい、周辺環境の景観や治安の悪化を引き起こし、空き家のある地域の土地の価値を下げてしまうことも考えられるのです。
いざ活用を考えた時に修繕費が嵩む
「空き家をどうにかしないといけない」と頭を悩ませているうちにも、どんどん劣化は進みます。問題を後回しにしてしまい、いざ、何らかの空き家活用を決断した時には劣化が酷く修繕に時間と費用がかかってしまいます。事前に、空き家対策に対する考えと知識を深めておくことが、ゆくゆくの費用削減になるのです。
リスクから考えられる空き家対策
空き家を「負の遺産」にしないために、リスクをしっかり把握した上で対策を考えることが大切。では、一体どのような対策があるのでしょうか?
具体的な方法を述べていきます。
■活用し利益を出す ■空き家の資産を別の資産へ変換する ■自分(子ども達)で住むことも検討してみる ■売却する |
活用し利益を得る
空き家を活用し利益を出す方法には、家をそのまま貸出したり、シェアハウスやAirbnb(エアビー)などがあります。家賃や宿泊費による収入が見込めます。その他、空き家を生かした古民家カフェなどの事業を行う方法や、空き家を解体し更地にした土地を駐車場にして収益を得る方法もあります。
空き家の資産を別の資産へ変換する
空き家に住むことを子ども達が望んでいない場合や、遠方に住んでおり管理が難しい場合などは、そのまま相続させるのではなく、資産を別の形へ変換し相続させる方法もあります。資産組替えと等価交換の2つの方法です。
資産組替え
資産組替えとは、今ある資産を売り別の利便性の高い資産へと変えることです。空き家問題に当てはめて考えてみましょう。現在住んでいてゆくゆくは空き家になる家や、現在すでに所有している空き家を売却し、その資金で街中のマンションや駅に近い物件を購入する方法です。広い大きなものでなくても単身用や夫婦2人用の利便性の高い家を購入することで、その後活用や管理がし易くなります。
等価交換
空き家の建っている土地を建築会社や不動産会社等に提供する代わりにマンションやアパートを建設してもらい、その土地の金額相当分のマンションやアパートの一部の所有権を取得する方法です。空き家になるリスクも低く、管理も簡単にできます。
自分(子ども達)で住むことも検討してみる
空き家にしないための手取り早い方法は自分で住むことです。建て替えて、二世帯住宅にする方法もあります。子ども達に持ち家がなく、相続する予定の家から仕事に通えるなど、生活ができる範囲に家があるのであれば提案してみるのも良いです。
自分たちがいなくなった後も、子ども達はそこに住むことができ、自分たちがいなくなった後は、自分達が居住していた部分を貸して、賃貸併用物件としても子ども達が活用ができます。何より、放置空き家になる心配をする必要がなくなります。
もう一つ、最近よく耳にするデュアルライフ(2拠点生活)を提案してみるのも良いかもしれません。インターネットの普及によりリモートワークも可能になっている会社も多くあります。場所に囚われない働き方も以前より浸透してきています。相続した家があれば、子ども達が、田舎と都心などの2つを拠点として生活できるスタイルの実現ができます。
売却する
住むこともできず、活用も難しい場合や、管理ができなく「特定空き家」となってしまう可能性が高い場合には、せっかくの資産も「負の遺産」となってしまいます。「負の遺産」は手放し、利益を得た方が得策です。
そのままで売却する方法と更地で売却する方法があります。更地で売却する場合には、解体費用が発生します。老朽化した空き家の場合は、地方自治体による解体費用の助成金制度を利用できる場合もあります。
対策はしっかりと見極めが必要!
自分の所有する家や空き家に最適な対策方法を選択することが最も重要です。それぞれの対策の留意点をしっかりと把握した上で、慎重に対策を考え、空き家への対処をしていきましょう。
活用し利益を得る際の留意点
活用し利益を出す=事業を起こすということです。つまり、利益を得るためには自分の所有している家や土地にどのような需要があるのかしっかりと見極め判断する必要があります。賃貸に出す場合は、家の立地や状態、競合相手などをよく鑑みはじめることが大切。
また、シェアハウスや古民家カフェなどのように、事前にリノベーションや修繕が必要となる場合は、初期にかかる経費を念頭に置いておくことを忘れてはいけません。
空き家の資産を別の資産へ変換する際の留意点
資産組替え
資産組替えの場合は、売値と買値のバランスに注意が必要です。
所有している不動産の売値 < 新しく購入したい不動産の買値
になってしまい、さらにそのひらきがあまりに大きくなりそうな時など、慎重に考える必要があります。
等価交換
等価交換の肝となるのは、新しい建物の建設を依頼する依頼先との信頼関係やコミュニケーションです。資産組替えのように、売値と買値に差額が発生することはないので、金銭面でのリスクはありません。
しかし、自分で物件を選ぶのではなく、基本的に依頼先の不動産会社や建設会社に一任することになるので、事前に密に打ち合わせや話合いをしておき、どのような物件が建つのか、自分が所有できる部分はどこであるのか、知っておくことが大事です。
自分(子ども達)で住む際の留意点
二世帯住宅もデュアルライフでの生活も、実際に住んで生活してみないと分からない点が多くあります。どちらも自分達の生活スタイルを大幅に変えることになるからです。可能であれば、事前にシミュレーションをしてみるのもおすすめです。
また、二世帯住宅の場合には増築や建替えも必要となるので費用も時間もかかります。一緒に住む子ども達と、金銭的なことも含めしっかりと話し合いをしておくことが必要です。自分達がいなくなった後の居住スペースの対処方法も見据えながら、設計しておくのがベターです。
売却する際の留意点
売却してしまえば、現金は入りますが不動産という資産は売却の時点でなくなってしまいます。不動産を利用して考えられる全ての活用方法の可能性を失ってしまうことになります。
自分の所有している不動産と自分のライフスタイルを考慮した、無理のない「空き家」対策を選択することが健全な「空き家」への向き合い方です。資産があることを負担に感じないようにすること、また負担に感じさせないように相続させることが、「負の遺産」にしないための第一歩なのです。
絶対にしてはいけない「放置」という選択!
忙しい日々の中考える時間がないからと、ついつい問題と向き合うことを後回しにしてはいませんか?すぐに動き出せなくても、メンテナンスや情報収集を日々少しずつしていくことで、必ず解決の道が見えてきます。
定期的なメンテナンスは必須事項
相続する家の状態を良く保つことは絶対に必要です。自分がまだ住んでいる場合は、普段からマメに掃除をしたり、いらない物を処分することも大切な「空き家」対策です。
自分がいなくなった後、子ども達が遠方で管理ができない場合など、外注で定期的なメンテナンスをしてもらうことも考慮し、子ども達と話し合っておきましょう。活用や売却など、すぐに対策を決断できない場合でも、「放置空き家」にしない努力はすぐにできるはずです。
情報しっかり集めよう!
動けない場合でも、情報を集めておくことはできます。自分の所有している不動産の価値(売却値のシミュレーション)や、立地条件などを調べ活用する際の判断材料を揃えておきましょう。情報を集め精査していれば、いざという時も良いスタートが切れます。
子世代にその責務を負わせず、「今」向き合おう!
不動産を所有している人にとって、必ず向き合わなければいけない問題が「空き家」です。向き合わないままでいると、その問題はどんどん大きくなって表面化します。自分がいなくなった後は、子世代にその問題を引き継ぐことになってしまいます。
当事者意識を持って、ゆくゆく起こる問題にしっかりを目を向けましょう。知識や情報を得ることは、確かに大変です。ですが、問題を放置したままで、「負の遺産」を引き継ぐことになる、子ども達は、もっともっと大変な事態に巻き込まれてしまいます。
問題を把握し、現状できることから対処方法を選び、動き出しましょう!
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