「空き家の多い県」と聞いてイメージされるのはどこでしょうか。
地方?田舎?過疎化の進んだ町?
総務省が5年ごとに行っている「土地・統計調査」。その最新版である2018年のデータを見ると、日本の現状と全国の中における東京都の現状が見えてきます。
全国空き家率ランキング、全国空き家戸数ランキング、東京都の空き家率ランキングを見ていくと、それぞれ異なった背景で空き家が増加していることがよくわかります。
空き家を借りたい
購入して活用をしたいけれど、遠い地方への移動は難しい
都内の空き家を効率よく探したい
とお考えの方には特に興味深い内容になっていますので、是非最後までお読み頂きたいと思います。
全国空き家率ランキングと東京の位置づけ
東京都の空き家に関するランキングを述べるには、まず全国の中での東京の位置づけを知ることが重要です。
【全国】都道府県別空き家率ランキング
まずは、全国の都道府県別空き家”率”ランキングから。総戸数に対する空き家戸数の占める割合を見ていきましょう。
2018年時点
1位 山梨県 21.3%
2位 和歌山県 20.3%
3位 長野県 19.5%
4位 徳島県 19.4%
5位 高知県 18.9%
6位 鹿児島県 18.9%
7位 愛媛県 18.1%
8位 香川県 18.0%
9位 山口県 17.6%
10位 栃木県 17.4%
11位 大分県 16.7%
12位 群馬県 16.6%
13位 静岡県 16.4%
14位 岩手県 16.1%
15位 岐阜県 15.6%
16位 岡山県 15.5%
17位 宮崎県 15.3%
18位 鳥取県 15.3%
19位 島根県 15.2%
20位 三重県 15.2%
21位 大阪府 15.2%
22位 広島県 15.1%
23位 長崎県 15.1%
24位 青森県 14.8%
25位 茨城県 14.7%
26位 新潟県 14.7%
27位 石川県 14.5%
28位 佐賀県 14.3%
29位 福島県 14.3%
30位 奈良県 13.9%
31位 福井県 13.8%
32位 熊本県 13.6%
33位 秋田県 13.5%
34位 北海道 13.4%
35位 兵庫県 13.4%
36位 富山県 13.2%
37位 滋賀県 13.0%
38位 京都府 12.8%
39位 福岡県 12.7%
40位 千葉県 12.6%
41位 山形県 12.0%
42位 宮城県 11.9%
43位 愛知県 11.2%
44位 神奈川県 10.7%
45位 東京都 10.6%
46位 沖縄県 10.2%
47位 埼玉県 10.2%
※全国平均13.6%
参考:総務省 2018(平成30)年住宅・土地統計調査土地調査データhttps://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_gaiyou.pdf
データというのは一部を切り取って見てしまうと、本来の意味を掴みにくくなります。このデータには別荘など、「常として居住の用をなさない物件」も空き家として含まれています。
1位の山梨県、3位の長野県、10位の栃木県は別荘地として有名な土地であり、別荘として実際は使用している戸数が含まれていることを踏まえると、中四国・九州に空き家が多いことが分かります。
このランキングでは東京都は45位と空き家問題とは無縁のように感じます。
【全国】市区町村別空き家率ランキング
続いて、同じ空き家”率”ランキングですが、市区町村別に見ていきましょう。
2018年時点
1位:北海道夕張市 40.0%
2位:山口県周防大島町 33.4%
3位:北海道歌志内市 33.3%
4位:北海道三笠市 31.6%
5位:和歌山県串本町 30.2%
6位:高知県室戸市 29.7%
7位:高知県土佐清水市 28.4%
8位:三重県熊野市 27.8%
9位:岩手県山田町 27.8%
10位:大分県国東市 27.5%
都道府県別では山梨県が1位でしたが、市区町村別では山梨県の市区町村はトップ10には出てきていません。
この点を踏まえるとやはり都道府県別ランキングでは、別荘地を含んでいたことによるものと考えられます。
また、市区町村別ランキングで上位となった市区町村はそれぞれに理由があり、例えば北海道の夕張・歌志内・三笠などは旧炭鉱で成長した地域で、炭鉱の閉鎖による人口減少に伴って空き家が増加していることが分かります。
【東京都】市区町村別空き家率ランキング
前項では全国の中で東京がどの辺に位置しているのかを見てきましたが、ここでは東京都の空き家率ランキングを市区町村別にみていきます。
なお、ご存じの方には今更ではありますが、東京都の範囲を明確にしておきたいと思います。
東京都は、東京23区・多摩地域(26市、西多摩郡3町1村)・島嶼部(2町7村)から成ります。島嶼部(とうしょぶ)とは、伊豆諸島・小笠原諸島から構成される地域ですが、今回のランキングには含まれていません。
前項に続いて、東京都内の空き家”率”ランキングを市区町村別に見ていきましょう。
1位:豊島区 15.8%
2位:大田区 14.8%
3位:武蔵野市 14.1%
4位:中野区 13.7%
5位:千代田区 13.3%
6位:青梅市 13.2%
7位:港区 12.9%
8位:日野市 12.8%
9位:国立市 12.7%
10位:福生市 12.7%
11位:新宿区 12.2%
12位:渋谷区 12.1%
13位:国分寺市 12.1%
14位:府中市 12.0%
15位:調布市 11.9%
16位:東大和市 11.9%
17位:小金井市 11.8%
18位:昭島市 11.7%
19位:小平市 11.6%
20位:狛江市 11.5%
21位:武蔵村山市 11.5%
22位:羽村市 11.5%
↑
東京都 11.5%
↓
23位:板橋区 11.4%
24位:品川区 11.4%
25位:葛飾区 11.1%
26位:墨田区 11.1%
27位:三鷹市 11.1%
28位:江戸川区 10.9%
29位:立川市 10.8%
30位:中央区 10.6%
31位:杉並区 10.5%
32位:北区 10.5%
33位:あきるの市 10.5%
34位:世田谷区 10.4%
35位:八王子市 10.3%
36位:西多摩郡日の出町 10.3%
37位:文京区 10.0%
38位:荒川区 10.0%
39位:東村山市 9.9%
40位:清瀬市 9.9%
41位:目黒区 9.8%
42位:足立区 9.7%
43位:台東区 9.7%
44位:多摩市 9.6%
45位:練馬区 9.5%
46位:西東京市 9.3%
47位:東久留米市 9.2%
48位:稲城市 8.5%
49位:西多摩郡瑞穂町 8.0%
50位:江東区 7.8%
51位:町田市 7.7%
※東京都11.5%
このランキングをみると面白いことが分かります。
トップ10に豊島・太田・中野・千代田・港という、大都市とビジネスの中心地がランクイン。さらに、東京都全体の空き家率11.5%を超える市区町村を含めると、新宿・渋谷という繁華街が入ってきます。
空き家”戸数”であれば人口に比例するという分析もできるのですが、このランキングはあくまで空き家”率”。
総戸数に占める空き家戸数であることを考えると、空き家にしておくよりは賃貸・売却をしたほうが大きなメリットのある土地ばかりです。
このような結果になった背景には、大きく2つの要因があります。
①日本人の新築信仰と不動産業界の習慣により、狭い土地にタワーマンションが続々と建築され続け、需要に対して追いついていない。
②高齢化や介護を必要とする方が医療・介護施設に入所されたまま、いつか戻る時のためにそのままにされている。