「生前整理の重要性」や「円満な相続に必要なこと」をテーマとして、相続に一気通貫で関わるプロの視点から、リアルな 情報をお話いただいた小島孝治さん。今回は、これまでの記事と少し視点を変えて「財産を譲る側」「物件の所有者」へ向けたお話です。「相続対策はいつから始めたらいいのか」「空き家の処分費用はどのくらいかかるのか」など多くの物件所有者が抱える疑問が今回のメインテーマ。知っておくことで損失を減らすことができる「譲る側」の心得とは?お金だけでなく、 大切な人との人間関係を守るためにも知っておきたいノウハウを伺いました。
【第1回の記事はこちら】
【第2回の記事はこちら】
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小島孝治プロフィール:
代表を務める「昭和市場」では、実家の片付け・整理から売買、空き家の運用に至るまでにトータルに関わり、既成の枠に 囚われない新しい手法でのサポートを提供。現在口コミだけでも依頼の絶えない事業者であり、簡単に専門業者に頼ること なく、個人で対策することを推奨している。
集約した知識や経験を一般に広く伝えるため、生前整理から相続まで視野に入れたトータルサポートを、不動産や金融知識を元にサポートする「家宅整理士」資格を創設。身近に頼れる人材を全国に広めるべく展開計画中。
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生前整理が数百万円の違いを生む。相続は「知識」と「10年前から」がキーワード
Q:お得に、失敗なく円満に相続するためにできることは?
小島孝治(以下 小島):
相続はやり方を間違えれば、親族などを巻き込む人間関係のトラブルのもととなるもの。一方で”財産を譲る側”の人が相続の正しい知識を持ったうえで準備を進めることができれば、近しい方の人間関係を守るだけでなく、これまでの資産を後世への財産としてしっかりと残すことができます。
相続や空き家対策に必要な知識の身につけ方などは、以前の「【プロが教える】空き家を含めた相続は「生前に」が鉄則。 敬老の日に話し合うべき相続のポイント」の記事でお話している内容も参考になるはず。
税金の知識や相続の基礎知識を身につける方法として最もお薦めしているのが、国家資格であるFP3級資格(ファイナンシャルプランニング技能士)の取得です。合格率も約3ヶ月程度の勉強で半数程度あり、比較的安価で受けられる実用的な試験となっています。知識を身につけることで心無い専門業者などから身を守り、相続を円滑に進めることができますので、ぜひ 相続に関わる皆さんに取得して欲しいですね。
生々しいお金の話をするならば、知識があるのと無いのとでは、トータルで数百万から数千万円程度違いがあるのが相続です。それを踏まえて皆さんにおススメしているのは、「できれば10年以上の時間を掛けて生前に相続を進めること」「自宅や空家の対策も同様にできるだけ早く行うこと」。相続の話は、”譲られる側”のご子息やご親族の立場からは非常に切り出しにくい話題です。なにより放置することが最も大きな損失に繋がります。できるところから早めに対策を進めることは、言うなれば”譲る側”の責任でもあるんです。
自宅や空き家の早期対策は、損失を減らし利益を残す第一歩。
Q:空き家の対策が遅れることのデメリットとはなんでしょうか
小島:
アキカツマガジン内の他の記事でも物件放置のリスクが再三説明されているように、所有者の皆さんにとって空き家を放置することは損失でしかありません。空き家放置は、固定資産税の税率が上がり、倒壊や破損により近隣とのトラブルに繋がる場合もあり、地域環境を損なうことにも繋がります。
また相続の観点では、均等に分けることができない物件や物品が残ることによって、分配時の不公平感などから人間関係のもつれに発展することも多いものです。このような人間関係の破綻を招く相続となることを避けるために、できれば”財産を譲る相手”とともに今後の方針を決め、早めに物件の対策をすることが必要だといえます。