連載#4|大人の秘密基地メンバー提唱。週末「だけ」空き家DIYで1.5拠点生活

連載:神戸市灘中央市場『いちばたけ』インタビュー

8つの商店街と4つの市場がある神戸市の水道筋界隈、大きなショッピングモールには無い〈生活に密着した気さくな雰囲気〉が魅力。なかでも大正14年にできた灘中央市場は、一歩足を踏み入れると昭和にタイムスリップしたような雰囲気。このエリアに2年ほど前の2019年春、空き店舗の跡地を活用してつくられたのが、なんと「畑」。その名も、市場の畑だから『いちばたけ』。全国的にもユニークなこの空き地活用の取組み。まずはその現状について、弊社代表・和田貴充が伺いました。

今回、母体となっている「チームカルタス」の佐藤直雅さん、丸山公也さん、坂本友里恵さんと一緒に市場を巡り、市場の人たちの話を聞いてきました。中でも弊社代表・和田の心を掴んだのが、電子工作室「C-SPACE」。当日は代表の山本正勝さんがご不在でしたので、後日改めてお話を伺いました。この大人の秘密基地はどのようにして生まれたのでしょうか?

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連載第1回「シャッター商店街に、畑が出現!」を読む

連載第2回「30年来の仲間とつくった秘密基地」を読む

連載第3回「防災空地という商店街の余白」を読む

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C-SPACE代表 山本正勝さん

学生時代のサークル仲間と25年ぶりに再会したことから始まった”基地づくり”

和田 男からすると、いや“男の子”ですね、ものすごくワクワクする場所。それがまた商店街の中にポツンとあるのが面白いですよね。以前にも同じような“基地”を別の場所にお持ちだったとか?

山本 話すと長くなりますが、大学時代にアイドル研究会という同人サークルをやっていて、サークルなのでもちろん大学に部室は作れませんから、家賃月1万円ぐらいのアパートの6畳一間を借りて、そこを部室にしていたんです。
そうこうしているうちに、他にも面白いことが好きな人が集まってきて、そのうち手狭になってきたので、今度は一軒家の古民家を借りました。

和田 なるほど。大学のサークルの部室がずっと続いているような感じですね。

山本 サークルの枠からはどんどん離れていって、本当に色々な人が集まりましたね。例えば三宮にあった星電社という大きな家電量販店にたむろしていたパソコン好きの人たちのグループもいつの間にか仲間に加わっていました。実は僕はどちらもメンバーだったんですけどね。

和田 山本さんが橋渡し役だったんですね。それはどれくらい前の話ですか?

山本 僕が学生の頃なので、もう30年も前の話です。ただ、それは結局遊びですし、皆さん就職したりして、どんどん離れて行ったんですね。僕もわけあって大学に行かなくなったんで、その基地は自然に解消されたんです。

和田 なるほど。それが長い時を経て再始動したというわけですね?

山本 ええ。3年くらい前、当時の中心メンバーだった人が亡くなったんですよ。
その葬式に当時のメンバーが久々に集合して、「最近どうしてんの?」みたいな話になって、そうしたら「まだ電子工作やってるけど、家ではやりづらくて」とか「カラオケボックスに行って一日ずっとハンダ付けしてる」とか、場所に苦労しているようなことがでてきまして。
しかもそのうちの3人、僕と現在のC-SPACEのメンバーの残り2人が灘区に住んでいたので、「近くに制作場所があると嬉しいよね」っていう話になったんです。

和田 そういう話をお通夜でしたと?

山本 そうなんです(笑)。で、それからしばらくして、灘中央市場でDIYの手伝いを募集しているっていうのをFacebookで見て、僕は趣味でDIYをやっているものですから手伝いに行ったんです。そうしたら佐藤(※灘中央市場いちばたけプロジェクトの中心人物)さんとお会いして、今の場所を紹介してもらったというわけなんです。

和田 それって灘中央市場の防災空地を利用した農園「いちばたけ」前の多目的スペースのことですよね?

山本 そうです。面白そうだなと思って、ふらっと手伝いに行ったんです。

和田 紹介してもらった物件を見てどうでしたか?

山本 自宅から徒歩圏内でしたし、市場の中には店がたくさんあって便利だろうなと。何より安かったのが一番の決め手でしたね。

和田 そこが一番大事ですよね。

山本 前の物件から25年ぐらい空白があったんですが、当時の仲間が再集合して作った場所がC-SPACEです。きっかけがお葬式っていうのが“年だなあ”と思いますけどね(笑)

和田 でもそういう場所を借りるって、勇気がいりませんでしたか? 家庭の事情もあるでしょうし。

山本 学生時代にやっていましたし、家賃さえ払えば誰にも文句言われずできるわけですからね。僕の年代だと子育ても一段落して、むしろ動けるようになっていますし、収入も以前よりはありますから、むしろハードルは全くなかったですね。

やることはそれぞれ自由、ときどき手伝い合いっこ

和田 C-SPACEのコンセプトはありますか? 市場の役に立ちたいとか?

山本 役に立てばいいなとはもちろん思っていますけど、何かこれを一緒にやりたいという事は、まだ見えていませんね。トイレの入り口の案内板を作ったりはしましたが、そういう細かい所から、まずは探って行きたいと思います。

和田 山本さんから見て市場ってどういうイメージですか? なかば時代から取り残された存在ですよね。ちょっと入りにくいと思ったことはありませんか?

山本 入りにくいと思ったことは全くないですね。僕らの世代はまだ市場が普通にあった世代なので、「ああ、まだあったんだ」という懐かしさすら感じました。ただし、こちらの市場については、お店の7割ぐらいシャッターが閉まっている状態なので、もったいないなぁとは思いますよね。

和田 そういう状態の市場にC-SPACEのような個性的な場所があるのはすごく面白いと思うんですよね。空間って、異色なものが入っていくといびつになるか面白くなるかのどちらかだと思うのですが、C-SPACEはうまく調和しながら、面白くなりそうな予感がします。
C-SPACEを今後こんなふうにしていきたいというビジョンはあるんですか?

山本 新しい人が来てほしいなとは常々思っていますね。ですがこのコロナ禍の状態で、知らない人が来ても付き合いにくいところがあるので止めています。この事態が落ち着いたら、会員募集的なことをしようと思っています。

和田 今は仕方ないですよね。じっと耐えるしかない。仲間が増えたら何をしようといったイメージはあるんですか?

山本 皆で手を取り合って何かをやるというのは想定していなくて、各人がやりたいことをやればいいというスタンスです。それで各自がやっている姿を見て、面白いから一緒にやろうという流れになったらいいなと。現在のメンバーも、前もって決めて一緒に何かをやったことは1回もないですよ。ちょっと手伝ってみたいなことはありますけどね。

和田 そういう関係っていいですよね、ストレスが無さそうで。

山本 ええ。だからもっと大きなことをやりたい人は、市場の他の空き家を自分で借りてやったらいいんですよ。市場の中で、どんどん僕らのように好きなことをやる人が増えていったら、面白いでしょうね。

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