お笑い芸人でありながら空き家問題に目を向け、クラウドファンディング・プロジェクトを立ち上げたシャンプーハット・てつじさん。
「てつじ、京都・綾部に100万円で家買いました」のプロジェクト名のとおり、自ら私費を投じて空き家を購入し、空き家再生を目指したアクションを始めている。
吉本興業が手がけるコワーキングスペース「 Laugh Out NAKATSU(ラフアウト中津)」(大阪市北区)にて、プロジェクトに協力する稲冨さん(吉本興業株式会社)と弊社和田が同席のもと、てつじさんのプロジェクトにかける想いについてうかがった。
インタビューについて
てつじ さん
吉本興業所属の漫才コンビ・シャンプーハットのメンバー
自ら田んぼを購入した『米から日本酒をつくりたい』や綾部市の保育園を支援する『風の子共同保育園を全力で応援する』など、さまざまなクラウドファンディングをてがけてきた
“体験”を共有するクラウドファンディング
——まず、今回のクラウドファンディングによる空き家再生プロジェクトの内容について教えてください。
京都府綾部市に、僕が100万円で買った空き家があるんです。
もう空き家を用意してあるので、これからみんなで改築していきましょう、というプロジェクトですね。
たとえば、¥1,000出してくれた人は一緒に草むしりや掃除に参加してもらうとか、お金を出してくれた人だけが囲炉裏の制作メンバーに入れて、完成後に囲炉裏を自由に使える、とかいろんな“体験”をリターンとして用意しています。
——クラウドファンディングを通して集まったお金で空き家を買ってどうにしかします、ということではないんですね。
そうですね、クラファンはふつうお金を集めるためにやるものだと思いますが、僕のはそうではなくて、人を集めるプロジェクトです。
たとえば、お金を出してもらえたら完成した別荘を使えます、みたいなことだと、普通にお金を出せば別荘って買えますよね。
でも、別荘をつくる過程とか体験っていうのは売ってないじゃないですか。
そういう、過程に参加して体験を共有できる場にしたかったんです。
自然と“サード・プレイス”になっていく
——プロジェクトの説明に「ゴールを作らないクラファン」とありますが、それはどういうことでしょうか?
間取りとか外観の完成図があるわけじゃないので、完成に向けた作業を手伝ってもらう、というプロジェクトではないんですよ。
メンバーがアイディアを出し合って、間取りもどんどん変わっていくイメージです。
たとえば「ここでみんなでダンスをしたいから、1室をダンスフロアに改築したい」っていう人がいたとしたら、じゃあ一緒に作りましょう、賛同してくれる人を集めてください、という感じですね。
僕は行き先の方角だけ示して、あとは参加してくれた人が自由にやってくれる、というのを目指していて、もっと言えば僕が居なくても自発的に動いていくコミュニティになればいいな、と思っています。
——参加者に主体的に関わってもらおう、というイメージなんですね。
もともとのきっかけとしては、僕が前からやっているクラウドファンディングの『米から日本酒をつくるプロジェクト』で完成したお酒を、プロジェクト参加メンバーと一緒に飲める場が欲しかったんです。
最近よく言われる「サード・プレイス(=自宅でも職場でもない、心地のよい“第3の居場所”)」を作りたかった。
ただ、もし僕が自分でそういう場を全部作って「サード・プレイスを用意しましたよ、来てください」と言っても、「ここが自分のサード・プレイスだ」とはきっと感じてもらえない。
つくり上げていく体験を共有してもらえば、参加した人それぞれの中に「物語」が形成されて、その人にとってのサード・プレイスに自然となっていくんじゃないかな、と思ったんです。
そうなれば、「出来上がったら終わり」ではなくみんなが何度も足を運んでくれる、サスティナブルな“空き家活用”の形になるんじゃないかな、と考えています。