熊本移住・自然農・空き家シェアハウス 移住者と共につくる、住まいと農作物と暮していく町。

目次

定住者を増やすことで町は蘇る。移住者を惹きつける独自の取組みとは?

移住者との定例ミーティングの様子

「暮らす」も「働く」も提案する、シェアハウス園田

― 園田さんの名前がつけられた「シェアハウス園田」はどんな方が利用されますか?

園田 福岡や都市圏の方が多い印象です。職種も本当に幅広くて、個性的な人が集まってきています。あと、農業をやってみたいという方も多いですね。

ちなみに、シェアハウスの家賃は一月1万5千円から2万円程度で利用できるようにしていて、働きながら暮すこともできます。お任せするのは、竹林の竹切り作業や自然農園での農作業。賃金もしっかりお渡ししていますので、家賃をそこから支払う方も多いですね。

のんびりした所ですので、都会で疲れた方や農業などに興味がある人に来て貰って、まずはリフレッシュしてくれれば良いと思っています。その中から農業などに興味がある方には、個別に仕事を紹介していますので、技術を身につけることもできるんです。

― 仕事の紹介をされたり、賃金で家賃を賄うことができる仕組みは非常に面白いですね。
― 今後も同様のシェアハウスの事業展開は考えられていますか?

園田 実は、シェアハウスは事業化する予定はなく、だからこそ家賃も安く設定しています。この土地で実際に暮らして良さを知って、「定住したい」と思う人が増えるきっかけの場所。いってみれば、”お試し移住の場”としての役割がシェアハウスの位置付けです。

仕事を既にお持ちならリモートなどで暮すことももちろんできますし、漠然と気になる方でもなんとかなりますので、まずは気軽に来て欲しいなあと思っています。とりあえず来て、自分の望む移住場所にあわなければまた違う場所を探す。そのための場としてシェアハウスを利用してもらえたらと思います。

地元を知っているからできる、移住希望者の希望に寄り添った物件や仕事の紹介

― 移住先や仕事を紹介されるにあたって、工夫されていることはありますか?

園田 私の知人で空き家バンクのNPOをしている方が居て、これまで約400組200件空き家を紹介してきています。紹介しても一般的には定住に至らないケースも多いと聞きますが、知人の紹介では約99%の方が定住している状況です。移住者がどういう暮らしを求めているかしっかりと聞き、希望や理想にあった場所の空き家物件を紹介しているので、暮しやすくなるのだと思います。

また、紹介する戸建て一軒家の家賃についても、2万から2万5千円程度に抑えるようにしていて仲介手数料も取らない仕組みです。私も色々な移住希望者をみてきましたが、価格が安いから住むのではなく「こう暮したい」という希望にあわせた場所を紹介する方が、定住に繋がると感じています。これは、地元を良く知る人だからこそできることですね。

シェアハウスで開かれた果樹の剪定についての勉強会の様子

移住者の協力が事業の活力に。若年層の目標をサポートする循環型コミュニティー。

2軒目のシェアハウス

移住者の想いから始まった新たなムーブメント、自然農シェアハウス

― 2軒目のシェアハウスもオープン間近とのことですが、どのような施設となるのでしょう?

園田 菊池市にある空き家を、熊本と自然農を学べるシェアハウスにしたいと考えています。移住してきた大川君という男の子が中心となって、クラウドファウンディングで資金を集め、住みながら運営する予定です。

彼はコロナ禍以前は海外で自然農などを学び、ブログなどで情報発信をしていたと聞いています。移住後に自然農を広めたいという想いを聞く機会があり、空き家物件と農地を提供することにしたのがこのプロジェクトの始まりです。

この施設も、自然農を通して熊本の土地を知って貰い、移住のきっかけとなるような場所になって欲しいと思っています。移住者が増えれば働き手が増えますから、若い方の力は事業や町の活力になると考えているんです。

― クラウドファウンディングでの資金調達とのことですが、完成までの費用はどのくらいを見積もっていますか?

園田 今回のクラウドファウンディングでは、ありがたいことに80万円程の支援をいただきました。その中から使えるとしても50万円程度ですが、その費用で全てを賄える予定です。丁度現在、地域で70年続く製材所を預かっていることもあり、材料費もほとんど掛からないと見込んでます。

実はその製材所は跡取りの方がいらしゃらなくて困られれていて、社長もあと数年で引退されたいようなんです。経営状況を確認してからですが、事業継承も視野に入れて相談いただいています。地域に根付く企業の、助けにもなれたらという気持ちもありますね。

勉強会後の打ち上げの様子

空き家取得の工夫と苦労

― 空き家を取得されるうえでの苦労はあれば教えてください。

園田 苦労は沢山ありますが、空き家の契約・交渉の方法は地域の方の人柄をみて変えるようにしています。例えば、熊本の私たちの地域の方は、初対面では非常に優しく寛容であることが多い地域です。だから、逆に2回目にあった時に急に条件が変ることも少なくなく、当初は困ることもありましたね。

やはり暮すうえでも揉め事は嫌なので、対策として初日から契約書持参で交渉することにしたんです。それで比較的上手く行くようになり、契約もスムーズにできるようになりました。あと、自分の事を地域のお年寄りにわかってもらえるよう、地元のテレビなどにも月に数回は出演するようにしています。最近では「あんたこの前テレビにでとったねー!」と声を掛けていただくことも多くなって、ご年配の方との信頼関係も以前よりできてきたところです。

― 社会人時代の営業実績も非常に高かったと伺いましたが、流石の営業力ですね。
― では、実際に空き家を選ぶ際には、どのような基準で選定されていますか?

園田 柱が壊れているのは1本までとして、水回りも丁寧に確認します。柱も立て直せばいいですし、ボロくてもなんとかできるのですが、所有者さんが手が掛かることが申し訳ないという理由で譲ってくれないことが多いのが実情です。これも田舎の方ならではの性格かもしれませんね。

実際は空き家を解体するのにも200万円くらい掛かりますので、無料で譲るのが申し訳ない所有者さんには、逆に4,50万程頂いて引き取る提案をする場合もあります。でも、それでも解体されることが多いです。まだ使える物件もあるだけに、少しもどかしい面もありますね。

<次ページ:子供たちが幸せに暮らせる町を、移住者と共に創っていく。>

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この記事を書いた人

特区民泊アパートメントホテル運営中のフリーライター。感性に触れたコトを読み手の暮らしに触れるモノに。出雲に生まれ、もう長いこと大阪で暮らしています。

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